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イルン幻想譚  作者: RU
追われる少年
73/122

16.禁忌の真実【3】

「ところで、そのムニエルとかいう(じゅつ)は、契約をしなければ能力を盗めないのだろう? どうやってドラゴンと契約を?」


 マハトの問いに、クロスは少し困ったような顔で笑った。


「アレは、ドラゴンじゃなくて合成妖魔(キメラ)だと思うよ」

合成妖魔(キメラ)?」

「そもそも宴の食卓(フリムニル)は、契約を交わすと相手の特殊技能(スキル)と知識、それに能力値(ステータス)を10%ぐらい奪い取れる(じゅつ)なんだけど。成功率を問わなかったら契約は不要なんだ」

「それはつまり、その(じゅつ)を行使して相手を食えば良いってことか?」

「うん。契約をしない状態で(じゅつ)を使うと、特殊技能(スキル)を習得出来る確率は1%ぐらいになる」

「同じ特殊技能(スキル)を持つ相手を、百人喰う…ということか?」

『百匹喰って、身に付けば御の字…というのが正しいであろ』

「そうか、成功率が常に1%なんだものな。…えっ、じゃあ合成妖魔(キメラ)というのは…」

「部屋がいっぱいあるでしょ、ここ。その部屋の中には、かなりいろんな種類のケージが置いてあるんだ。ただ、中に生き物はいない。アルバーラが失踪する前に、全部片付けて(・・・・)いったんだと思う」

「食べた…ということか。ケージには、一体なにがはいってたんだ?」

「あの姿から思うに、妖魔(モンスター)や下級の幻獣族(ファンタズマ)じゃないかな」

「本当にそんな者を…」


 異形の能力を欲してあらゆる妖魔(モンスター)を貪り食べている、我欲に取り憑かれた(もの)の姿を思い浮かべて、マハトは本気で胸がムカムカしてきてしまった。


「…異常なことは、よく解った。だが幻獣族(ファンタズマ)妖魔(モンスター)なんて、魔障(ガルドリング)の可能性もあるし、そもそも致死毒を持っているものも多いはずだが」

「危険度は判ってるんだから、対策を立てながら計画的に食べたと思うよ」

「対策って、致死毒だぞ?」

「ヒトガタ種族には、人間(リオン)能力値(ステータス)が同じくらいの獣人族(セリアンスロウ)って種族がいてね。彼らは体に動物的な特徴を備えているんだ」

「動物的とは、犬とか猫とか?」

「他にも色々ね。彼らの中には、遺伝的に完全毒耐性みたいな特殊技能(スキル)を持ってる者もいて」

「そういう者の特殊技能(スキル)を、先刻タクトが言っていた詐欺行為で騙して奪ったんだな」

特殊技能(スキル)だけじゃなくて能力値(ステータス)も奪えるから、魔気(ガルドレート)の耐性も上がってるだろうね。元々魔導士(セイドラー)だから、自身の魔力(ガルドル)のコントロールは完璧だし」

「それじゃあ宴の食卓(フリムニル)を使い続けてたら、最終的に神耶族(イルン)よりも、もっと凄い生き物になってしまうんじゃないのか?」


 マハトの発言に、こらえきれないと言った様子でタクトが笑った。


「なぜ、笑う」

『いや、すまぬ。確かにヘタレ(ふう)の言い方をするならば "理論上は" そうなるであろうが。しかし全く、現実的では無いのう』

「根拠は?」

神耶族(イルン)と同格の能力値(ステータス)を持つ生き物となれば、人間(フォルク)の言うところの "上級" しかも、筋金入りの古代種(フォニルフラィ)幻獣族(ファンタズマ)ぞ?』

「それが十匹必要ということになるな」


 タクトの返事に、マハトは真面目な顔で答えた。


「マハさん、そんな相手は、人間(リオン)じゃ最初の一匹だって討伐出来ないと思うよ」


 クロスに言われて、マハトはハタと気付いたように「ああ…確かに」と言った。


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