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イルン幻想譚  作者: RU
追われる少年
72/122

16.禁忌の真実【2】

『ええいっ! ウジウジするなと言うておろうにっ! 盗られただけなら、取り戻せば良いだけじゃ!』


 タクトに叱りつけられて、クロスは顔を上げた。


「だけどアイツは、宴の食卓(フリムニル)も既に読み解いているんだよっ!」

『なんじゃそれは?』

「その、ムニエルとかいうのは何だ?」


 タクトとマハトが、同時に問うた。


「えっ、マハさんはともかく、タクトも宴の食卓(フリムニル)を知らないの?」

『知らん。なんじゃ、それは?』

「契約を交わして、相手を喰うことで、特殊技能(スキル)能力値(ステータス)を奪う古代魔法(フォニルガルズ)だよ」

『そりゃ、贄の食卓(フューゼスク)じゃろ』


 タクトの答えに、クロスは首を傾げた。


「むしろ、そっちを俺は知らないんだけど?」


 その様子に、タクトは少し考え込むような顔をしてから、なぜか一人で納得したような顔で頷くと、クロスを見やる。


人間(フォルク)は伝承がむずかしい(・・・・・)種族じゃからな。少々名称が変わっておってもいたしかたなかろ。それで、その古代魔法(フォニルガルズ)を紐解いて習得した毒まんじゅうは、弟子とその "契約" を交わしておった…と?』

「あ…うん。アンリーとの会話から、どうも弟子入りの際に師匠に忠誠を尽くす…みたいな誓約書にサインをさせられていたらしいんだ。それに、以前からアルバーラのとこの弟子が消えるって噂はあったし…」


 タクトの態度に不審を覚えたものの、クロスは問いに返事をする。


「いくら高名な(もの)の元に弟子入りがしたいからと言って、喰われるための契約なぞするのか?」


 呆れたようなマハトの言葉に、タクトがあの舌打ちのような音をたて、まるで風刺でもするような笑みを浮かべる。


『全く、おぬしは愉快よの。人間(フォルク)の用意した書面なぞ、最初から微塵も信用ならんわ』

「なんだそれは?」

人間(フォルク)とは、騙し騙されるのが当たり前の種族と()うておる。宴の食卓(フリムニル)のための契約書に、師弟の忠義を約束する書面に見える(じゅつ)を掛ければ、魔力(ガルドル)の低い人間(フォルク)如きは易々と騙されようぞ』

「そんなのは、詐欺じゃないか」

『じゃから、詐欺師の毒まんじゅうと()うたであろうが。だが、その偽装を見破れずに契約してしまったら、それは成り立ってしまう。騙された方の負けと言うことじゃな』


 マハトは不満そうな顔をしたが、考えてみればそれはあくまでもアルバーラの行った非道な行為を、タクトが暴いてみせただけなので、文句を言っても仕方がない。


「弟子が消えるという噂があったのに、なんらかの調査はされなかったのか?」

「師匠と合わないからって冒険者(アドベンチャー)になったりする(もの)も一定数はいるんだ。アルバーラは、()(もの)拒まずで弟子を取っていたから、弟子の数も膨大だったし。議会員(パーラメントシート)だった上に、顔も広かったし」

「つまり、もみ消しをするツテがあった…と?」

「まぁ。平たく言えば、そうなるかな…」


 マハトは、ますます呆れた様子になった。

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