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イルン幻想譚  作者: RU
追われる少年
70/122

15.喰らいつくす【5】

「アンリー! 手伝え!」

「ちっ!」


 クロスに命令されたのが気に入らない様子で、アンリーは舌打ちをしたが。

 しかし自分だけで、師匠に太刀打ち出来ないことも解っていた。

 アンリーは、そこに倒れている自身の使い魔(スレイブ)に触れ、回復(ヒール)詠唱(チャント)する。

 蒼のオーラに包みこまれると、サンドウォームは息を吹き返して身を起こし、アンリーの命令のままにドラゴンへと突進した。

 大人のルミギリスとカービンが、口にすっぽりと入るほどのサンドウォームは、アルバーラのドラゴンよりも大きい。

 床を這って進んだサンドウォームは、まるで蛇のようにドラゴンの体に巻き付き、全身を締め上げた。


「アンリー、忠誠を捧げよ!」


 幻覚のアルバーラが叫ぶ。

 ドラゴンの全身から、再び魔気(ガルドレート)が放たれ、サンドウォームは無惨にも千切れとんだ。


「くそっ!」


 アンリーが次の手を考える隙もなく、千切れたサンドウォームの体が、まるで時間が巻き戻るように元の姿に戻る。


「なんだっ?」


 使い魔(スレイブ)は、なんらかの方法で相手を屈服させた上で、絶対服従(サブミッション)(じゅつ)を掛ける。

 屈服、もしくは心酔させていれば(じゅつ)の効力はいつまでも続くため、完全に支配下においた使い魔(スレイブ)が、自身に歯向かうことを想像出来る魔導士(セイドラー)はいない。

 アンリーのような、自分の魔力(ガルドル)に自信がある(もの)は、特にそう盲信しているだろう。

 故にアンリーは、姿形が元通りになったサンドウォームが、自分に向かって襲いかかってきた時に、事態が理解できずに対処が遅れた。


「逃げろっ!」


 クロスの叫びは届かず、アンリーは、一瞬にしてサンドウォームに飲み込まれてしまう。

 しかもよく見ると、サンドウォームの下半身は、そのままドラゴンの腕に繋がっていた。

 ドラゴンは大きな咆哮を上げ、当然のように全身から魔気(ガルドレート)を放ち、体の大きさが一段と大きくなった。

 ジェラートに傷つけられたはずの鱗はすっかり元通りになり、更に硬度を増しているのか、黒みがかった銀色に変わっていく。

 ドラゴンの一部と化していたサンドウォームは、今度はクロス目掛けて伸び上がってきた。

 クロスは新たな(サークル)を描いて火炎(ファイア)を放ち、こちらに伸びてきたサンドウォームを焼き払う。


「クロスーッ!」


 ジェラートの叫びを耳にして、クロスは自分への攻撃が、注意を引き付けるための罠だったと気付いた。


「ジェラートッ!」


 助けを求めるジェラートを追って、力の限りに追い縋ったクロスの手が、伸ばされたジェラートの手に届く…、その、ほんの僅か一歩のところでジェラートの姿はドラゴンの口の中に消える。

 ショックに凍りついたクロスは、更なる獲物とばかりにドラゴンが自分に目掛けて一層大きく口を開いてきても、そこに棒立ちになっていた。

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