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イルン幻想譚  作者: RU
追われる少年
57/122

11.魔導士の事情【2】

「お久しぶりですね、クロスさん」

「うん、久しぶり」


 セオロは、クロスが口を利いたことがある、数少ないアルバーラ一門の弟子の一人だった。


 魔導士(セイドラー)…特に己の研究に熱を入れている(もの)にとって、弟子を取るのは面倒事以外のなにものでもない。

 だが、独立した魔導士(セイドラー)は、弟子を取ることを魔導組合(セイドラーズギルド)によって義務化されていた。

 当時のクロスは、他の魔導士(セイドラー)がそうしているのと同様に、指導上手な(もの)にそちらを任せて、自分はもっぱら研究にばかり没頭していた。

 クロスの研究の対象は、古文書(フォニルスキャル)とそこに記載されているヒトならざる者(ヴァリアント)だった。

 同じ研究をしていたアルバーラは、しかし資料集めのような雑用は、基本的に弟子に任せてしまうタイプで、研究に関しては全てを(おのれ)で見極める主義のクロスと顔を合わせることはなかった。

 その代わり、古代文字(フォニルフサ)に造詣の深かったセオロとは、度々会う機会があった。


「でも、ココでキミに会うとは思わなかったな」

「なぜですか?」

「そりゃ…、キミは地位や後継者争いに参加するより、自分の研究が大事(だいじ)なタイプだと思ってたから、失踪した師匠の元にわざわざ残るとは思わなかったからさ」

「僕はご覧のとおり、地味な男ですから。一門を立ち上げられるほどの資金は集められませんし、冒険者(アドベンチャー)になって世間にもまれるほどの気概もありませんから」


 ちょっと卑屈に、セオロは笑う。

 だがそれは、魔導士(セイドラー)となった(もの)が抱える、割とありがちな悩みでもあった。


 魔導組合(セイドラーズギルド)が徒弟制度を義務化したのは、魔力持ち(セイズ)魔力(ガルドル)をコントロール出来ずに起こす魔力暴走(フィムブルヴェト)によって、被害が出るのを防ぐためだ。

 魔力暴走(フィムブルヴェト)は、魔力持ち(セイズ)が大きく動揺しただけで起こる。

 よって、魔力持ち(セイズ)であることが判明した時点で、その(もの)の身柄は魔導組合(セイドラーズギルド)預かりとなる。

 適当な魔導士(セイドラー)の元で修行をし、魔力(ガルドル)を完全にコントロール出来るようになると、一人前として認められ、自身も魔導士(セイドラー)を名乗れるようになるのだが。

 魔導組合(セイドラーズギルド)から発行される身分証を受け取る際に、必ず「自分は人間(リオン)社会に貢献出来る魔力持ち(セイズ)である」と宣誓しなければならない。

 故に、魔導士(セイドラー)と成ったからには、その才能…つまり魔力(ガルドル)を使って社会に貢献することを "強制" されるのだ。


 だが、人間(リオン)の社会で魔導士(セイドラー)の肩身は狭い。

 それは魔力持ち(セイズ)魔力暴走(フィムブルヴェト)を起こす危険や、理解の出来ない魔法(ガルズ)に対する忌避感から、避けられてるためだ。

 そうなると、一端の魔導士(セイドラー)と成ったからといって、付ける職は限られる。

 最も理想とされるのは、自身の一門を持って、自他ともに認める "一人前" となることだろう。

 だがこれには、多額の資金が必要となる。

 徒弟制度の義務を負うのもこの選択肢で、弟子の指導はもちろん、彼らの衣食住も保証しなければならない。

 スポンサーを見つけるために自身を売り込みたい(もの)や、研究などにさほどの興味も無く、他人の面倒など見たくないと考える(もの)は、冒険者(アドベンチャー)となる。

 ただし冒険者(アドベンチャー)は、非常に危険度の高い仕事なども請け負わねばならないために、自身の命を危険に晒す可能性がある。

 命の危険を冒さず、更に徒弟制度を免除されるには、師匠の元に残るしかない。

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