表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イルン幻想譚  作者: RU
追われる少年
55/122

10.古代の民の末裔【3】

『とにかく今はこれ以上、此処で貴様のご先祖談義をしている時間は無い』

「そうだ。クロスさんの(あと)を追おう」

『ああ、ちょっと待て』

「なんだ?」

『貴様、合切袋の中に水筒を持っておらんか?』

「なんだ? 姿が視えるようになったら喉が渇いたのか?」

『持っておるのか、おらんのかっ?!』

「なんだ、大きな声を出して…。持ってるが、それがどうした?」

『中身を捨てて、そこなストーンサークルの水に汲みかえよ。霊験あらたか、貴様の危機を救ってくれたのだから、またなんかあるやもしれん』

「今度は怪しい商人みたいなことを言い出した…」

『さっさとせい! 貴様がその水を汲んだら、クロスのあとを追う』

「おまえには、目指す方向が分かるのか?」


 マハトは言われた通りに、自分の持っている水筒の中身を砂地に捨ててから、湧き出ている水をたっぷりと汲んだ。


『クロスの使った魔力(ガルドル)の痕跡がある。幸いにして儂の魔力(ガルドル)も使えるので造作もないな』

「行くのはいいが、その前に訊きたい」

『なんじゃ?』

「俺がクロスさんに預けた剣はどこだ?」

『むっ!』


 言われてみれば、人質交換の時にマハトはタクト諸共、自分の大剣をクロスに渡してしまっている。


「なにか得物を調達しないと、丸腰じゃ、敵と遭遇しても全力で戦えない」

『ああ忌々しい、時間が惜しいこの時に! ……うーむむ、致し方ない。これは、破格の大盤振る舞いと知っておけっ!』


 不意にマハトが手にしていた短剣が、ズシリと重さを増した。


『心して粗末に扱うなよ!』


 マハトの手元の短剣が、長剣へと変化している。

 短剣だった時も華美な装飾が施されていたが、長剣になり装飾できる面積が増えたためか、更に凝って豪華な…むしろ "綺羅綺羅" とでも表現した(ほう)が良さそうな見栄えとなっていた。


「サイズが大きくなったら、ますます派手派手(はでばで)しくなったな」


 内心で、人間(フォルク)に扱われるなんて…と思いつつ、少しばかり "相手がマハトならそれもアリ(・・)か" などと考えていたタクトは、その言葉に少々カチンときた。


『なんとっ! 刃の切れ味も刀剣のバランスも(もう)し分無く、かつ芸術的な鑑賞にも耐えうる造りの最高傑作ぞ!』

「いや、グリップにこんなに装飾があっては、握りにくいだろう?」

『美的センスに欠けるサウルスめがっ! 黙ってありがたく使え! それからくどいようだが、今後絶対に儂を手放してはならんぞ!』

「そうだな。俺もそれには同意する」


 二人はストーンサークルを離れ、怪鳥が飛び去った方角に向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ