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イルン幻想譚  作者: RU
追われる少年
51/122

9.古代の遺跡【2】

 マハトはハッと、目を開いた。


「なんだ? 今のは…?」


 マハトが意識を取り戻したところで、タクトの姿は一瞬にして消えた。


『遅いぞ、残念サウルス! 時間が無いのじゃ、とにかく立ていっ!」


 自分の腹の上で怒鳴っている短剣を掴むと、マハトは砂の上に立ち上がる。


「ここはなんだ? 地面が動いてるのか?」

『砂が動いておるのじゃ。貴様には見えぬだろうが、地下で色々と面倒が起きておる。此処も直ぐに崩れ始めるであろう。だが問題は、その次に()る陥没じゃ。此処から這い登って逃げても、意味が無いほどの大穴になるぞ』

「それは困ったな」

『まず言っておく。貴様のような愚鈍なサウルスは、魔導士(セイドラー)を相手に立ち回るためには、儂のサポートが絶対に必要なんじゃ! 良いか、以後は何があっても決して儂を身辺から離すでないぞ! 次に、陥没が起きる直前に、儂が貴様の体を穴の外に弾き飛ばすから、衝撃に備えよ』

「そんなことが出来るのか?」

『チャンスは一度きり。ただし、そのあと儂はしばらく沈黙する、そこも了承しておけい』

「沈黙? なぜ?」

『今の儂は魔力(ガルドル)を消耗すると、疲労困憊して戻るのに時間が掛かるのじゃ。口がきければいいが、多分数日眠った状態になるじゃろう。よって貴様は此処からの脱出に成功した(のち)、とにかく手段を見つけてクロスのあとを追うのじゃ』

「じゃあ結局あの連中に、ジェラートを奪われたのか?」

『やつらではないが、攫われてしもうた。今、クロスがあとを追っているので、貴様はその加勢に()ってくれ』

「解った。だが、意外だな。タクトがクロスさんを頼るとは思わなかった」

『あのヘタレの他に選択肢が無かったのじゃ、仕方なかろう!』


 悪態を()いているが、タクトの怒鳴り声には今までほどの刺々しさを感じない。


『そろそろ()るぞよ』


 ひときわ大きく、上の(ほう)の砂が崩れ始めた時だった。

 マハトは不思議な気配を感じて、辺りを見回した。


「おいタクト、妙な感じがしてきたんだが、何なんだ。これで俺を穴の外へ弾き出すのか?」

『これは、なんじゃ? この気配は、儂とは関係ない。変に遠くて…、いや、上からか…?』


 上と言われ、マハトは空を仰いだ。

 すると不意に足元の感覚が無くなったので、下を見ると、マハトは宙に浮かび上がっていた。

 地上ではすり鉢の底が抜けたように穴が大きく広がっている。

 その様子を見下ろしているマハトの身体は、タクトの言っていた "弾き飛ばす" という表現からは掛け離れた、まるで(だれ)かの大きな手に掬い上げられて、上空へ避難しているような感じだった。


「すごいな、これが神耶族(イルン)の能力なのか」

『…儂は何もしとらん』

「ええ?」

『貴様こそ、一体どういうチカラを使っておるのだ?』

「どういうって…こっちが聞きたい。タクトのやってることじゃないとしたら、俺はどうやって浮かんでる? 着地はどうしたらいいんだ?」


 宙に浮かんだマハトの身体は、大きく広がっていく陥没から離れ、古びたストーンサークルのある丘の上まで()ると、浮かび上がった時と同じように、すんなりと地上に降ろされた。

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