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イルン幻想譚  作者: RU
追われる少年
45/122

6.不毛の地

 昼前になってから、縄で腕を縛ったカービンを連れて、三人が向かったのは、町の西側にある遺跡だった。

 昨晩の、カービンへの尋問はあっけないほど簡単に終わった。

 というのも、目を覚ましたカービンは、マハトの鍛え上げられた体躯を見ただけで震え上がり、こちらが何かを問う必要もなく、知っていることをペラペラと喋ったからだ。

 その情報の中には、自分とルミギリスがねぐらにしている遺跡の場所をも含んでいた。


「砂漠というのは、こんなにも不毛の土地なのか…」


 クロスの仕入れた(まえ)情報どおりに、砂漠に踏み込むとそこは見渡す限りの砂と、ポツポツと点在する遺跡しかない場所だった。


『この地は以前、緑豊かな場所であったが、人間(フォルク)が考えなしに大規模な魔力(ガルドル)を使った戦いをしおっての。窪地だったために魔素(ガンド)が滞留し、土地の奥深くにまで染み込んでしまったのじゃ』

人間(リオン)が、大規模な魔法(ガルズ)で戦争を?」

「今の魔導組合(セイドラーズギルド)は、人間(リオン)同士の戦いに魔導士(セイドラー)が参加しないことを徹底してるけど、昔は国家間の戦争に魔導士(セイドラー)部隊が投入されたりしたんだよ」

「じゃあ、遺跡は人間(リオン)の物なのか…」


 (くだん)の事前情報によると、遺跡は宿を取った町が出来る以前からあると言う。

 だが近代(・・)人間(リオン)にとっての遺跡とは、人跡未踏の地と大差が無い。

 というか、そもそも持たざる者(ノーマル)人間(リオン)にとって、壁や柵といった人家を守る囲いの無い場所は、街道と言えど常に危険が伴う。

 それは妖魔(モンスター)のような強力な外敵以外にも、魔気(ガルドレート)のような、目に見えないが人体に影響を及ぼすような危険もあるからだ。

 タクトの言う通り、魔素(ガンド)が土地に染み込んでいるこの地などは、何らかの防御策を講じてなければ、魔障(ガルドリング)してしまう。

 知能が低く体が頑強な生き物であれば妖魔(モンスター)と成るが、脆弱な人間(リオン)の体は、魔障(ガルドリング)に耐えきれずに死に至る。

 そこに遺跡があることを知っていても、調査に赴けるほどの余力は、現在の人間(リオン)には無いのだ。

 故にその遺跡が、どの年代の、どんな民族が、なんの目的で作ったのか? 何故に打ち捨てられたのか? など、調べることなどおぼつかない。


「サンドウォームも出るらしいから、気をつけないと…」


 通商路(つうしょうろ)は、それでも魔気(ガルドレート)が多少はうすい場所が選ばれているが、ルミギリスとカービンの隠れ家は、そこから外れた遺跡の中だ。

 クロスは魔気(ガルドレート)を退けるための結界(フルンド)を、マハトの体に施した。


一日(いちにち)ぐらいは、これで問題ないと思うよ」

「これは、便利だなぁ」


 マハトは無邪気に感心しているが、こちらを見るタクトはもの言いたげな顔をしている。

 その視線に気づいて、クロスは心のなかでしまったと思う。

 なぜなら、結界(フルンド)古代魔法(フォニルガルズ)で、一般的な魔導士(セイドラー)ならばここは防御(プロテクション)を使うべきだと、タクトの視線で思い出したからだ。

 だが、ここでタクトに何らかの言い(わけ)をしたら、事態は更に面倒な方向へと転がるだろう。

 そう考えたクロスは、あえてタクトを無視した。

 そしてカービンと自身の体にも、結界(フルンド)を施す。

 そうして、通商路(つうしょうろ)から外れてしばらく歩くと、遠くに砂に埋れかけた廃墟(ぐん)が見えてきた。

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