11.絆【2】
タクトの気持ちに変化が起きたのは、守護者としてジェラートに付き添ったからだろうか。
互いに互いが特別と思う存在は、他の者とは存在の意味が違うことに気付いた。
そしてマハトとクロスに逢った。
マハトの容姿は、タクトの好みにピッタリだった。
だがそんなものなら他の数多の者達も持っていたもので、タクトが初めに心を動かされたのは、マハトの真剣な誠意のほうだ。
ただの行きずりだったにも関わらず、命掛けの救出に、マハトは最後まで真摯に付き合った。
マハトはクロスのように、神耶族に対して特別な思い入れを持っていたわけでも無い。
生真面目に誠実で、正義感だっただけだ。
しかもマハトは神耶族の卓越した能力にも、永遠に等しい命にも、タクトの美貌にも、微塵も意思を揺らがさなかった。
タクトはいつもマハトを鈍感と貶しているが、内心ではそれがマハトのおおらかさであり、強さでもあり、思慮深さだと評価している。
マハトの性格や態度に加えて、稀な出生や特殊技能など、知るほどに興味深く、魅力的で、マハトと道行をするうちに、この者ならば契眷属にして手元に置いてもいい。
いや、どうしてもマハトを契金翼にしたい、と思うようになった。
最初はマハトのほうから契金翼にしてくれと、頭を下げざるを得ないように画策してやろうと考えた。
でもそれではダメだと思い直した。
どんな手段であれ、マハトに頭を下げさせたら、自分にとってのマハトの魅力が欠けてしまう。
欲しいのは、今のままのマハトだ。
それで言葉巧みに、マハトを酩酊させた。
暫しの間の判断力を鈍らせれば、普段は理性でコントロールされているマハトの貪欲さが、露わになると見越したからだ。
予想に違わずマハトはタクトの与えた快感に、しっかりと応じている。
「さて、そろそろお待ちかねのお楽しみ…といきたいところだが。その前に、魄融術を完了しておかねばな」
「おまえと契約なんて……、俺は、したくない…」
「ははは、面白いことを言う。おまえは既に、儂の虜ではないか。魄融術が完了すれば、これからずうっと、これより愉快な暮らしが続くのだぞ」
マハトが嫌がるように首を横に振る。
その拒絶をマハトの髪を掴んで封じ、タクトはマハトの耳に唇を寄せると、ひとつの名を囁いた。
「な、なに…?」
訊き返すマハトを無視して身体を起こしたタクトは、マハトの全てを余さず愛でるため、その身体に両腕を回すと、きつく抱きしめた。