6.歴史【2】
いくつかの遺跡を回ったところで、タクトが言った。
「どうやら儂の記憶だけでは、貴様のすごろくのゴールには辿り着けぬようじゃな」
「歴史を見てきたなら、場所も知っているんじゃないのか?」
「興味がなかったと言うておるじゃろ。先日のように、わざわざ出掛けてアルレミの遺跡見物なぞしても、微塵も面白くないからの」
もっとも行った先の町が発展していて、美味い屋台でもあれば楽しいが…と、タクトは付け足した。
「では、どうする?」
「聞いて回るほか、あるまい。酒場に出かけて冒険者どもの噂を仕入れ、場合によっては他種族の里へ赴いてみるのもよかろ」
「人間の文明のことを、他の種族に聞くのか?」
「フォルクとは、数の多いものを指す古代語じゃ。むしろ、人間と完全に無縁な種族を見つけるほうが、よほど難しかろうよ」
「そんなものか?」
「それに、貴様は時々『壊れている』と言うおったが、アレは "壊されて" おったのだぞ」
「そうなのか?」
「当然であろ。魔力持ちを恐れた持たざる者たちは、その恐怖を迫害へと変え、ついには魔導士すら追いやっておるではないか。魔力を用いて牛耳っていた一族に、恨みや妬みを抱かずにおると思うてか?」
「確かに、そうだな。それが真っ当な恨みであろうが、逆恨みであろうが、どっちにしろ政治的な立場が危うくなった治世者となれば、その者たちが暮らしていた家屋敷や、使っていた施設を打ち壊す可能性もあるものな」
「うむ。と言う訳で、儂は時々情報収集に出かけることとする。酒に弱いオコサマなぬしは、大人しく留守番をしておれよ」
「一言、余計だ」
カカカと笑うタクトを、マハトは嫌な顔で見返した。