表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/11

だから、彼はそのリボンを捨てられない。


「これは一番のお気に入りなの!」

 彼女は溌剌とした笑顔でそう言った。


「これを結っておうちに帰るとね、ママがわたしの一番好きなケーキを焼いてくれているし、いつもわたしに吠えてくる角のおうちのコワーイ犬も、ぐぅぐぅ寝ているのよ!」

 自信満々にぎゅっと拳を握って力説する小さな少女。

 おひさまみたいな金の髪と、明るい茶色の瞳。陽に焼けた健康的な頬にはそばかすが散っていて、幼い自分はよくそれを揶揄っていた。


 やがて自分が故郷を旅立つ日、見送りに来てくれた彼女は大切にしていたそれを自分の腕に結んでくれた。

「……お守りだよ。大丈夫、これがあれば必ず、帰って来れるから」

 離れていく指先が僅かに震えていたことに、気づいていたのに掴んでやることが出来なかった。

 そのことを後悔するのは数年後のことで、以来ずっと悔やみ続けている。


 旅立ったばかりの故郷は、その数日後に大きな自然災害の所為で地図からぽっかりと、消えた。

 そんなことも知らずに、あまたの魔物を屠り、ついに魔王まで倒した自分の腕には、あの日彼女に結ばれたリボンがずっとそこに在る。


 大丈夫、これがあれば必ず、帰って来れるから。


 そう言った彼女の言葉を信じて、今や勇者となった自分は、いつまでの色褪せたリボンに願いを託し続けている。


 帰る場所など、もう何処にもないのに。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ