瑠愛先生の職場訪問(2)
あまりの部屋の散らかり様に私は我慢できなくなり、思わず陽菜乃さんにお願いする。片付ける側がお願いするのはおかしな事だと思われるかもしれないが、家事大好きな私からしたら、この部屋を掃除をしないと気が済まないのだ。陽菜乃さんにとってはこれが暮らしやすい環境だと申し訳ないが、それも姉さん達と暮らしていく中で備わったお母さんのお節介特性のようなものだと思ってほしい。
久しぶりの対面で早々にこんなお願いをされた陽菜乃さんは、ポカーンとした顔でこちらを見た後、
「う〜ん…………、じゃあお願いしようかな。」
と承諾してくれた。
本人からの了承を得ると、まず私は散らかっているゴミは全部捨てて大丈夫なのか、脱ぎっぱなしの服や下着は洗濯して良いのか、掃除道具を借りていいのかを尋ねる。
陽菜乃さんと掃除についての確認を終えると、
「陽菜乃さん、何かジャージみたいなの服を貸してくれませんか?」
と聞いた。陽菜乃さんも私の服装を見て、
「まぁ、その服じゃ掃除しづらいよね。ちょっと待ってて。」
と部屋のタンスからジャージを1組取り出して、私に渡す。
「少し大きいかもしれないけどこれを使って。」
「ありがとうございます。」
私はお礼を言いながらジャージを受け取る。さぁ、コレで準備は整った。
「とりあえず美月姫姉さんと陽菜乃さんは一旦この部屋から出てもらえませんか?それと、陽菜乃さんはよろしければお風呂にでも入ってきてください!何となくですけど2〜3日入っていないですよね?」
と美月姫姉さんと陽菜乃さんはに指示をする。美月姫姉さんは「花姫様、変なスイッチ入っちゃった…………」と苦笑いを浮かべながら隣の仕事部屋に戻り、陽菜乃さんは「えっ、私って今そんなに臭う?」とションボリした声をあげてバスルームに向かう。
一方星乃さんは
「瑠愛先生がシャワーを浴びられるなら私は1回席を外しますね。」
と言い、家から出ていった。
陽菜乃さんの自室には私だけが残る形になり、私はまずジャージに着替え、着ていたワンピースは部屋のクローゼットに掛けてクローゼットの扉を閉める。そしてどのように掃除をしていくか簡単に頭の中でスケジュールを立てる。
「よし!じゃあ始めますか!」
そう言ってまずは床に散らかっているものから片付けを始める。まずは床に脱ぎっぱなしの服と下着を洗濯機で洗濯し、散らかっているゴミはゴミ袋に入れ、その他床に置いてある漫画などは全て仕事部屋の方に移動させる。そして部屋の中央に敷いてある布団も、一旦たたんで部屋の隅に持っていった。
あらかた部屋の床が見えたところで掃除機をかけ、埃や小さなゴミを取り除いていく。その後はフローリングワイパーを使って床は綺麗に拭いていき、それが終わったところで洗濯も終わり、私は洗濯物を取り込みに行く。
洗濯機の方に行こうと仕事部屋に入ると、美月姫姉さんとシャワーあがりの陽菜乃さんが2人で美月姫姉さんのスマホを見ながらお喋りをしていた。何を話しているのか気にはなるが今は片付けが優先なので、そのまま洗濯機の方へ向かった。
洗濯物は陽菜乃さんの自室から入れるベランダで干し、ひとまずはコレで掃除は終わりだ。私はジャージを脱いでワンピースの私服に戻り、脱いだジャージを洗濯カゴに入れた。本当は散らかっている服と一緒に洗濯出来れば良かったのだが、量がかなり多かったので先に散らかっている服を洗濯することにした。
「陽菜乃さん部屋の掃除終わりましたよ。」
私は報告しながら2人のいる仕事部屋へと入る。美月姫姉さんと陽菜乃さんは買ってきた同人誌を読んでおり、陽菜乃さんは私の方を向き
「花姫ちゃんありがとう!いやー、私どうも片付けが苦手でね〜w特に締切ヤバい時はいつもあんな感じになっちゃうんだよw」
と申し訳なさそうに笑いながら私にお礼を言ってくれた。
ちょうどそのタイミングで星乃さんさんが帰ってきて、
「ただいま戻りました。…………おぉ、とても綺麗に片付いていますね。花姫さん、ありがとうございます。」
と星乃さんも頭を下げて私にお礼を言ってくる。
「そんな気にしないでください!私も好きでやっていることなので!」
私は星乃さんに頭をあげるよう言いながらそう返した。
「普段は私が週一とかで部屋の掃除をするのですが……、いや、大変お見苦しい物をお見せしました。今日もお二人がいらっしゃるという事で事前に掃除をしておくつもりだったんですが、ちょうどこちらも今忙しくて…………、重ね重ねありがとうございます。」
と星乃さんも申し訳なさそうに私に繰り返しお礼を言うのである。
「今の話を聞いて気になったんですけど、担当編集の方って普段から作家さんの身の回りの世話もするものなのですか?」
私は気になったことを聞いてみた。その話が本当なら星乃さんは、散らかっている陽菜乃さんの下着とかも普段から片付けているのだろうか。
「いや、普通の担当編集はこんな世話役なんてやりませんよwというより瑠愛先生が普段からだらしないだけなので、他の作家さんは大抵まともな環境で仕事してます。」
とジト目で陽菜乃さんを見ながらそう星乃さんさんは言った。
そのジト目から顔を逸らしながら
「花姫ちゃん、星乃さんは担当編集なんだけど、実は私の従兄弟でもあるの。その関係もあって昔から仲がいいし、私も甘えさせて貰ってるんだよw」
と陽菜乃さんは説明してくれた。
「まぁ、それでもいつも身の回りの事はしっかりしろと言ってるんですけどね。…………それより皆さん、外出ついでにケーキを買ってきたので皆さんで召し上がりませんか?」
溜息をつきながら陽菜乃さんにツッコミ、星乃さんは手に持ったケーキを私達に見せながらそう提案した。
ここまで読んでいただきありがとうございます!次回も第5話の続きとなりますのでよろしくお願い致しますm(_ _)m
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