第5話 瑠愛先生の職場訪問(1)
エオンでの買い物を終え、私達はバスで駅へと向かい、そのまま隣駅へと移動する。買い物の目的であった陽菜乃さんへの差入れとして、化粧水·同人誌·エナジードリンク(ドリンクは荷物になるので駅の近くのコンビニで購入した)もきちんと用意し、私達は陽菜乃さんの家へと歩いて行く。
美月姫姉さん曰く、陽菜乃さんの家までは歩いて10分ほどらしい。私達はそれぞれ両手に荷物を持ち、美月姫姉さんの道案内のもと歩いて行く。
やがてとあるアパートの前に着き、
「花姫様着いたよー。ここの201号室がひなっちの家。」
と美月姫姉さんが教えてくれる。
外装は明るいオレンジで統一されており、比較的新しめな綺麗なアパートだ。駅からも近いし良い物件なんだろう。電車の中で前もって陽菜乃さんの家はどんな所なのか聞いてみたら、「ひなっちの家はまぁ、よくあるオタク部屋って感じかな?仕事自体にはノーパソとプリンターくらいしか使わないって言ってたし、そこまでThe仕事場って感じでもないよ」と言っていたので、それほどプロの職場にお邪魔するというような気構えはしなくてよさそうだ。
私達はそのまま荷物を持って階段を上り、陽菜乃さんの部屋である201号室へと向かう。気構えなくても良いと言われてたが、やはり久しぶりに会う陽菜乃さんとプロの職場見学が出来ることに内心私はワクワクしていた。
部屋の前に着くと美月姫姉さんは荷物を一旦下に置き、部屋のインターホンを押した。暫くするとドアが開き、中からスーツを着た男性が出てきた。
「あー、どーも美月姫さん、こんにちは。」
「こんにちは星乃さん。ひなっちに差入れ持ってきました!」
と2人は談笑しながら簡単に挨拶をする。そして星乃さんと言われた人は私を見て、
「こちらの女性の方は?」
と美月姫姉さんに尋ねた。
「この子は私の妹の花姫。花姫様、こちらはひなっちの編集担当の星乃さん」
と美月姫姉さんは簡単に2人の自己紹介をする。
「あー、貴方がよく話に聞く美月姫さんの妹さんですね。はじめまして、ME文庫の星乃瞬と申します。以後お見知り置きを。」
と名刺を渡しながら星乃さんは笑顔で挨拶をしてくださったので、
「はじめまして、風浦花姫です。今日はお邪魔します。」
と私もぺこりと頭を下げながら、自己紹介をする。
「部屋に上がっても大丈夫ですか?」
美月姫姉さんは星乃さんの横から部屋の中を覗きながら尋ねた。
「えぇ、瑠愛先生からも前もって美月姫さんが来ることは聞いておりますし、原稿の方も一応は一段落つきましたので大丈夫ですよ。あ、荷物はお持ちしますね。」
と私達の荷物を受け取り、部屋に入るよう促してくれた。
「ありがとね〜。じゃお邪魔しま〜す♪」
「ありがとうございます。それではお邪魔します。」
私達はそれぞれお礼を言い、部屋の中に入った。
陽菜乃さんの家は玄関を開けると横手にトイレとバスルーム、簡単なキッチンスペースがあり、その奥に扉がある間取になっていた。美月姫姉さんはそのまま奥へと進み、扉を開けると
「やっほ〜!差入れ持ってきたぜー♪」
と言いながら部屋(おそらく仕事場)へと入っていた。
私も美月姫姉さんの後を追い、「お邪魔しまーす」と言いながら部屋に入ると、その部屋のインパクトに驚き思わず立ち止まってしまう。
「あー、初めて来るならこの部屋は驚いちゃいますよねw」
後ろから星乃さんが来て、私に苦笑いしながら「いつももう少し片付けろと言ってるんですけどね」と言ってきた。
そんな陽菜乃さんの部屋は、とりあえず部屋一面にある物の数にまず圧倒された。部屋の壁一面には沢山の本棚とフィギュアを飾るケースがあり、どれもパンパンになるほど本やフィギュアが入っており、入りきらなくなっている本や漫画が床にタワーのごとく積まれていた。部屋の真ん中には小さなこたつ机と座椅子、テレビがあり、その机の上にノーパソ(仕事用のかな)が置いてある。また飾れるスペースには余す所なく、アニメのタペストリーや額縁に入れてあるポスターが飾ってあり、その部屋から別の部屋に続く引き戸がある感じになっている。「瑠愛先生なら奥の自室で尽き果てていますので、そちらへどうぞ。」
と美月姫姉さんに教え、美月姫姉さんは「おっけー」と言ってその陽菜乃さんの自室へと入っていった。
私も美月姫姉さんの後を追おうとすると、星乃さんから、
「あー、花姫さん。瑠愛先生の自室はこの部屋よりも色々と凄いので前もって覚悟しておいてください。」
と忠告してきた。いや、私的にはこの部屋でも十分驚いているのにそれ以上に凄いのか。
私は恐る恐る陽菜乃さんの自室へ入るとすぐに、星乃さんの言ってた意味を理解した。
陽菜乃さんの自室には敷布団が敷かれており、部屋の横には扉が開いたままのクローゼットがある。ここまでは一般的な寝室みたいな部屋なのだが、問題は部屋の装飾とその散らかり様である。
この部屋も先程の仕事場同様、壁にはタペストリーなどが飾られているのだが、そのタペストリーのほぼ全部がエッチなイラストのものであり、クローゼットの中も一部の私服らしい服を除けば、コスプレ衣装みたいな服が掛かっている。床一面には脱ぎっぱなしになった服や下着が散乱し、お弁当などのゴミが散らかっていた。
私は色々な感情が混ざり合い、フルフルと震えていると、布団に横になっていた陽菜乃さんが、
「あっ!花姫ちゃんだ〜!久しぶり〜。」
と疲れきった顔をあげ私に手を振っていた。
私はそんな陽菜乃さんに、
「お久しぶりです陽菜乃さん。会うのが久しぶりで色々と言いたい事があるのですが…………、」
と陽菜乃さんとその部屋の惨状をぐるりと見て、
「まずはこの部屋を片付けさせてください!!」
と大声で言うのであった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。この話から第5話スタートとなります。
次回以降も第5話になりますので、よろしくお願い致します。
またブックマーク登録や評価、感想を頂けると嬉しいですので、そちらもよろしければお願い致します!