休日デート〜花姫&美月姫編〜(2)
「そういえば何を買いに行くの?」
最寄りのバス停でバスを待ちながら私は美月姫姉さんに訊ねる。
「今ひなっちが忙しいみたいだからねぇ、差し入れかなんか買おうと思って。んでそのままひなっちの家にも行こうって思ってるんだけど大丈夫?」
陽菜乃さんか、久しく会っていないなぁ。陽菜乃さんは良くも悪くも美月姫姉さんの悪友みたいな人で、昔はよく一緒に遊んでもらったものだ。
「うん、私は全然いいよぉ。」
陽菜乃さんに会うのも楽しみだ。今日は1日楽しい日になりそうだな。
「そういえば雪姫姉さん、結局連れてこなかったけど大丈夫かな?後でグチグチと言われそうな気がするけど。」
「さすがにあんな二日酔いを連れていく訳にはいかないでしょ…………。」
ちょうど家を出る時フラフラの雪姫姉さんに出くわし、
「私も一緒に行く!!」
と言い出したのだが、昨日の酔いが冷めてないらしく蒼白な顔で今にも吐きそうな様子だったので無理やり寝させたのだ。
一応雪姫姉さんのお昼に消化に優しい梅風味のお粥を用意してきてので、それを食べて楽になってもらえればいいのだけれど。
「まぁ、帰りに何かお土産でも買ってあげればいいでしょ。それに気持ち悪くなるまで飲んだ雪姫姉が悪いんだから自業自得だよw」
美月姫姉さんがそう言ったタイミングでちょうどバスが着き、私達はバスに乗り込んだ。
近くのエオンモールまではバスで大体20分の所にある。私達が住んでいる地域では1番大きいショッピングモールなので、バスもそれなりに運行しており、休日は多くの人が集まる場所にもなっている。多種多様なお店やレストラン、映画館や大型ゲームセンターなども入っている為、私達姉妹もよく遊びに行く場所だ。
ちょうど後ろの方に椅子が空いていたので、私と美月姫姉さんは座ることができた。
「陽菜乃さんに何を買うかは決めてるの?」
「この前チャットでやり取りした時に化粧品を差し入れするって話したから化粧水を買おうかなぁって、何でも締切の都合で徹夜が続いているから肌が荒れてるみたいよ。後はエナジードリンクとかひなっちの好きな漫画かラノベ、好きなアニメのグッズとかだねぇ。」
美月姫姉さんは指を折りながら改めて今日買う物を確認する。
どれもエオンモールなら買い揃えられる物なのでその点は心配いらないみたいだ。
「陽菜乃さんって今はライトノベル?っていうジャンルの本を書いているんだよね?やっぱり作家さんって大変なんだね。」
私は雪姫姉さんや美月姫姉さんと違い、そういう系のいわゆるオタクカルチャー?というものにあまり詳しくない。それでも作家として実際に本を出版しているというのが凄いというのは分かるのだ。陽菜乃さんは美月姫姉さんと同い年の筈なので、私と3つ離れていてプロとして作家をしている陽菜乃さんは尊敬するし凄いと思う。
「まぁひなっちの場合は遊びすぎて締切追われてるだけだからねぇ。今も出版社の人達に監禁されてるだろうし、遊びに行くよりは刑務所に差し入れを持っていく、くらいの感覚の方がいいかもよ。」
「全く姉さんったら…………、いくらそっち系に疎い私でもそんな冗談は信じないよw」
流石にそんな締切間に合わないからって、監視して本を書かせるなんて事は社会的に非常識だと私でも分かる。
「……………………………………………………(ニコ)。」
私の言葉に美月姫姉さんは、一言も発さず、まるで何も知らない子供を可愛く見るような優しい目で私を見つめる。
えー………………、流石に嘘ですよね。
そんなやりとりをしている内にバスはエオンモールに到着した。
私達は運賃を払いバスをおりると、そのままエオンモールの出入口へと向かった。
自動ドアから入ると、モール内の人やアナウンスの声で賑わっている。また、6月後半の少しジメッとした外の暑さで火照っていた体を店内の涼しい空調が一気に冷ましてくれた。
「じゃあひとまず向かいますか。」
そう言い美月姫姉さんは、真っ直ぐエスカレーターの方へ歩き出す。
「あっ、ちょっと待って……。」
イキナリ歩き出した美月姫姉さんに出遅れ、私は急いで美月姫姉さんのあとを追う。しかし休日も相まって人が多く、この僅かな間に美月姫姉さんと少し離れてしまった。
「もうすぐ映画始まる時間じゃない?」
「あっ、ホントだ。急いで向かおう。」
不幸な事に私と美月姫姉さんの間を多くの学生グループやカップルが通りかかってしまう。
そういえば今日は話題になっていた映画の公開日でもあったっけ。ここから割と映画館は近いので、その映画を観に来た人達と鉢合わせでしまったのだろう。
「美月姫姉さんとはぐれちゃった…………。」
ちょうど人集りが過ぎた頃には美月姫姉さんの姿は見えなくなっていた。せっかくのお出掛けなのにこれは幸先が悪すぎる。
(仕方ない……、LINEで居場所を聞こう。)
そう思いLINEをする為、近くのベンチにでも向かおうとすると、
「ごめんね〜、ちょっと先走りすぎちゃったね〜w」
と笑いながら私の横から美月姫姉さんが現れた。きっと私が人混みに紛れてしまったことに気付き、迂回して戻ってきてくれたのだろう。
「あ、ううん。私は大丈夫。」
「じゃあ今度こそ行こうか!」
そう言って美月姫姉さんは私の手を握り歩き出す。
「ちょっ、姉さん!手!手繋がなくてもいいから!!」
私はイキナリ手を繋がれて驚いてしまい、焦ってしまった。
「え〜、でもこうしないとまた花姫様とはぐれちゃいそうだし…………。それに朝言ったでしょ?今日はデートしようって。」
「それは言葉の綾って言ってたじゃないですか。」
私は笑いながらそのまま手を繋いで並んで歩くことにした。恥ずかしいけれど大好きな美月姫姉さんと久しぶりのショッピングだし、姉妹同士なら手を繋いでもおかしくないからね。ね!
「〜〜♪」
「どしたの?鼻歌なんて歌って?」
「別になんでもないよ〜。」
私は上機嫌に美月姫姉さんに笑って答えるのであった。
「うわぁ何あの可愛い2人組!」
「ホントだ、それに手を繋いで服装もペアルックだよw」
「百合カップルなのかなw?」
遠目では少し注目を浴びていた2人だが、上機嫌の花姫と周囲の視線をあまり気にしない美月姫はそれに気付くことはなかった。
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次回は第4話の続きとなりますので次もよろしくお願い致します。
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