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会社でかくれんぼ  作者: 青山えむ
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最終話

 あの毒入り化粧水を美樹にプレゼントしたのは私だ。毎年恒例の誕生日プレゼント。解毒剤入りの美容液もセットでプレゼントしていた。

 これは賭けというより、うさ晴らしだった。

 美樹は美容にうるさい。化粧水のあとは乳液や美容液を絶対につける。常に解毒剤を一緒につける美樹が死ぬはずがなかった。

 けれどももし、万が一……。万が一、が起こるかもしれない。それは私には希望のようだった。

 しかし実際に万が一、が起こって私は焦るばかりだった。どうしていきなり?


 そういえば「かくれんぼ」のあと美樹は仕事を休んでいた。体調不良だと言っていた。そんな時はオールインワンで済ますだろう。

 もし化粧水をつけたとしても必ず美容液をセットでつけるはずだ。美樹ならそうする。

 それに具合が悪くて万が一、化粧水だけをつけていたとしても、効果が早すぎる。全身にでもつけていたのならまだしも、この数日で死ぬほど毒が回るなんて。


 そして、もう一つの可能性が浮かんだ。「かくれんぼ」のルール。

 鬼と、見つかった人の入れ替わり。まさか……。

 入れ替わった人が美容に関心のない人なら、化粧水と乳液だけで済ませるかもしれない。

 それに自分のお金に関係なく珍しい化粧水を使えるチャンスだと思い、全身に塗る選択も出てきたのかもしれない。

 美樹の訃報が入ったのは「かくれんぼ」から一週間くらい経った時。死んだのはその少し前だとして……入れ替わったまま死んだ可能性が高い。

 ルールは、入れ替わった人が次の鬼。つまり次の鬼は……。


   〇〇〇


 島田七瀬と入れ替わった美樹は七瀬のアパートにいた。外見は七瀬だが中身は美樹のままだった。


「どうなるの? 今日から新たにかくれんぼをするんでしょ? 私は死ぬの?」


「いえ、浅井美樹は死んだので元に戻れません。このまま島田七瀬の外見で生きていきますよ」


 どこからか声がする。一週間で元に戻るはずが、自分の体が死んでしまった。想定外のトラブルで「かくれんぼ」は保留になっていたが本日再開することになった。

 こんなださい女と入れ替わってしまった。しかも自分の体は死んでしまった。このださい女の体で一生過ごさなくてはならない。いらいらする。


 数日前に自分が死んだと聞いた。化粧水に毒が入っていたという噂を聞いた。なぜ、今まで使っていてなにもなかったのに。

 私と入れ替わったあのださい女が化粧水を使って、なぜあの女だけが死んだのか。分からない。

 けれどもどの化粧水を使っていたかは予測がつく。今使っている化粧水は桃から貰ったものだ。

 他の特別の日用の化粧水は奥にしまってある。一番使いやすい位置に置いてある桃から貰った化粧水に毒が入っていた可能性が高い。けれど、どうして桃が?

 まさか川口さんのことが好きだったとか? ありえないことではない。あのとろろ昆布女のことだもの。自分でなにも出来ないからって私に毒入り化粧水を渡したの?

 おかげでこんなださい女の姿で生きていくことになったわ。

 この外見だと気を遣わなくてもよさそうね。もうどうでもよくなってきたわ。

 今日から始まる「かくれんぼ」で桃、あなたを絶対に捕まえてみせる。そのあとのことは分からない、どうでもよくなってしまったから。


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