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実験好きの異世界浮遊録  作者: カモシカ
1/1

プロローグ

 現在の俺の肉体と呼ぶべきものは今、とても不思議に満ちている。


 なぜか、 いい質問だ。その理由とは


 まず第一、気温や風などの外気を感じないこと


 その二、身体が欠損していること


 最後に、風に舞った葉が私の体を通り抜けていったことだ。


 実に興味深い...


 興味深いのだが、まず始めにこうなるに至った

経緯から話すことにしよう。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 その日、俺はかねてより調査を予定していた 山の中腹にできたミステリーサークルを見に来ていた


 俺の傍にはどういうことだか、毎回付いてくる

自称助手が1人


「先輩!今回は突如現れたミステリーサークルの調査ですね!

 登山道の休憩所付近にできたと言われてましたが、確かにありますね。」


「あぁ」

 

 確かに、背の低い芝生の生えた広いスペースに芝の剥げたようなラインが模様を描いている


「なかなかに大きそうですねぇ、上から見るとどんな形に見えるんでしょう?」


「円形だそうだ、不自然なまでの真円に、幾何学模様が彫られているらしい」


「そうなんですね!となると今見えてるのが縁の線かぁ、私ちょっと中心見てきますね!」


 言うが早いか、その背中はもう遠ざかっていたが俺は助手に声をかける


「そっちは逆だぞ」


「え!?あ、ほんとだ。 エヘヘ...

今度こそ中心見てきますね!」


 と今度は円の中心方向に向かって歩き出していった。


 なぜこのような見晴らしのいいところで方向感覚が狂うのだろうかと、少し興味が湧いてきたが

本来の目的を忘れてはいけない。


 円の縁を歩きながら、芝の剥げたところを観察する。10cm程の太さの線であり、人の手が加えられたであろうと推測してみるが、どうも様子がおかしい。

 なぜならば、そこには土が掘り返されていないのだ。一面が芝であったのならば、人力では芝を抜かねばならないだろう、そうなれば必然的に土で地表付近が汚れる筈だ。さらには抜かれたであろう芝がどこを見渡しても見つからない。

 まるでそこには最初から芝など存在していなかったかのように地表が露出しているのだ。


「ふむ、実に興味深い」


 顔を上げると中心にたどり着いたのであろう自称助手がその場に留まっていた。彼女との距離感を見るにこのサークルは半径20m程であろう。肉眼ではその全貌を捉えることはできないくらいの大きさだ。


 ぐるっと一周した俺は中心に向かって歩き出した。すると、ひとまわり小さい円があることに気づく、さらに進むと直線が引かれており、それが交わり模様を成しているのが見てとれた。


 中心らしきところにたどり着くと、助手は一点を見つめ首を傾げていた


「何か見つけたか?」


 そう声をかけると


「先輩、これ、なんだと思いますか?」


 と問われたので彼女の指差す先を見る。するとそこには芝に覆われながらも不自然に窪んだ穴があった


「周りの感じから、この窪みが中心と見て間違い無いだろう、だがこの形は疑問だな。まるでなにかをはめるための鍵穴のようだ」


 ただ丸く窪んでいるのではなく、なにかを象ったかのような形をしていることを指摘すると、


「私、この形見たことある気がします!」


 と言い、背負ったリュックの中身を漁り始めた


 数分経つと目当てのものを見つけたのか顔を上げ自慢げに俺に見せてくる


「じゃーん!これですこれ!前回の調査で海に行った時波打ち際で拾ったんです!

 不思議な感じがして後で先輩に聞こうと思って忘れてましたー!」


 なんてことを言いながら取り出したものは確かに窪みの形状と一致しているものだった。

 それを受け取り観察してみると、この世のものではないような不気味な感覚に陥った。


「なんだ、この物質は?表面の光沢から見るに金属のようだがそれにしては軽すぎる。だが、叩く感触からして中が空洞というわけでもない。

実に興味深い...」


「そうなんですよ!

 なんだろうこれってなったので先輩なら見当がつくかと思ってたんですが、わからないんですね〜」


「全知全能というわけでは決してないからな」


「それ、どうです?穴にはまりそうだったりしますか?」


「ふむ、やってみるか」


 手に持ったその物体を窪みの向きに合わせ押し込んでみるとピッタリと収まった。


...


 

 少し様子を見ていたが、何かが変わる様子は無い


「なんだか拍子抜けですね、何か起きるんじゃないかと期待したんですが」


「なにも起きなかったというのもまた、結果の一つだ。他のところも確認しよう」


 俺はそういい、踵を返して戻ろうとすると、突然地面が光り出した。

 なにが起きたのかと振り返ると、窪みにはめた物体に助手が手を触れたところだった。


 その本人も


「えっ、えっ?」


 と言い周りを見渡し動揺しているあたり、今の現状は分かっていないらしい。


 地面の光っている部分はどうやらサークルのライン上であろうことは光が足元を走り、先程確認した模様が浮き出てきていることから推測される


 事態が掴めないまま観察を続けていくと、いつのまにか助手が腕にへばり付いていた。 

 無理もない、彼女の顔には恐怖が張り付いていた。


 やがてサークル内の全てのラインの光が繋がると、一度強く輝き、地面に吸い込まれるように消えていった。


 「な、なにが起きたんですか!?」


 助手は俺の腕を握る手に力を込めながら聞いてくる。


「分からない、だがこのままここにいても危険なだけだろう。

 一度サークルから出よう。」


 そう言い歩き出す。


「そ、そうですね!そうしましょう!」


 と、へっぴり腰になりながらも助手は俺の腕を離さずに懸命に付いてきた。


 先を歩いていた俺がサークルを跨いだ瞬間、大外の円が光出しサークルを囲むように光の壁が出現した。

 それはまるで俺を追い出し、助手だけを中に閉じ込めたかったかのようなタイミングだった。

 しかし、助手が俺の腕を離していない為、完全にはサークルの外には出ていない。

 地面に吸い込まれていった光が今一度輝き、中の模様が円を描きながら空中に浮かんで行った。

 それはまるでSFの世界の魔法陣のように美しく、現状を忘れて魅入ってしまった。

 

 助手の方も


「キレイ...」


 と言葉をこぼすほどには現実味がないらしい


 模様の回転が止まり、まるで準備が整ったかのような沈黙の跡、目を開けていられないほどの閃光が迸りそこで俺の意識は途絶えた。


 最後に感じていたのは腕にしがみ付いていた助手の手の感覚だった...


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