表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

最強の男の娘。~勘違いされて女子だけの有望パーティーにスカウトされました~

作者: あざね





「え、どうしてボクがクビなんですか!?」

「いや、そのだな。申し訳ない……」

「理由を聞かせてください!」


 ある日のことだった。

 ボク――ニア・リードはパーティーリーダーからクビを言い渡された。

 しかし、おかしい。なぜならボクには、一つも落ち度はないのだから。リーダーに詰め寄ると、彼はなぜか頬を赤らめて視線を逸らした。


「お願いです、理由を――」


 このままではダメだ、納得がいかない。

 そう思ってボクが声を上げようとした時だった。



「可愛すぎるんだよ! お前を見てると、胸がドキドキするんだ!!」

「へ……?」



 強面のリーダーが、女の子のように顔を顔を隠して叫んだのは。


「あの、それってどういう――」

「どうもこうもねぇよ!! みんな、お前を見てるとこう――気持ちが変な方向に燃え上がっちまうんだよ! 自覚してくれよ、自分が可愛いってことに!!」

「えー……?」


 他のメンバーを見てみると、みんなモジモジとしていた。

 どういうわけか前かがみになっている。


「でも、それはいくらなんでも……」

「うるせぇ! このままじゃ、俺たちは一線を越えかねないんだ!! 理性を保てているうちに出て行ってくれ、お前のためでもあるんだ!!」

「え、あ、はい……」



 そうして、ボクはクビになった。





「一人になっちゃったけど、どうしよう……」


 翌日になって。

 ボクはパーティーメンバー募集をかけて、ギルドの前で立ち尽くしていた。

 理由が理由だけに、どう説明したらいいのか分からない。そんなわけだから、クビになったという文言だけが先行して、ボクは無能の烙印を押されていた。


「人、こないなぁ……」


 空を眺める。

 鳥が数羽、追いかけっこをしていた。


「ちょっと、アンタ?」

「へ、ボク……?」

「そうよ、アンタよ。ふーん、募集か……」


 そんな長閑な光景を眺めていた時である。

 声をかけてきたのは、一人の女の子だった。肩ほどで切り揃えられた金の髪に、蒼い瞳。背丈はボクと大差なく、装備から見るにクラスは剣士だろうか。

 腰にあるのはその身の丈半はあろうかという剣だったが、器用にボクのことを色んな角度から確認している。そして、少し考えてから頷くのだ。


「よし、まずは合格! ――アンタ、名前は?」

「え、ボクはニア……だけど」

「アタシはリーシャ! ニア、アンタにはこれから――」



 少女――リーシャは、背丈のわりに豊かな胸を張ってこう言った。



「アタシのパーティーに入れるか、テストを受けてもらうわ!」




◆◇◆




 ――ダンジョン中階層。

 薄暗いそこには、ある程度の魔力が充満していた。

 ボクとリーシャは黙々と奥へと進み、手ごろな魔物を探す。


「アタシのパーティーではいま、前衛をできる人材を探していてね? なんでもできる、っていうニアの言葉を信じるわ」

「う、うん! 合格できるように頑張るよ!」


 ボクはリーシャのパーティーに入るため、テストを受けることにした。

 お荷物扱いをされていたこちらとしては願ってもない展開。是が非でもここは合格を勝ち取って、冒険者としての生活を続けなければ。




 そう思って彼女についてきたのだが、何やら周囲がおかしい。




「あれ、なんだか魔力が濃く――」

「しっ! 静かに! ……これは、少しマズいかもね」


 そのことに、リーシャも気づいたようだった。

 こちらに制止をかけて、周囲に注意を払う。


「本当はもっと弱い魔物で試そうと思っていたけど、そうはいかなくなったらしいわ。ニア? アンタは無理をしなくてもいいから、ダメなら逃げてね」

「え、それって――」

「きたわ!」



 そして、彼女がそう言った瞬間だった。



『シャアァァァァァァァァァァァァァ!!』



 薄闇の中から、大きな魔物が姿を現したのは。

 身の丈はボクらよりも遥かに大きく、十メイル弱といったところ。長い首に、背中には翼が生えている――間違いない、アレは【ドラゴン】だった。

 本来ならより下層にいる魔物のはずだが、異様に濃い魔力。それによって、この階層まで登ってきたのかもしれない。


「ちっ! しかも、一匹じゃないわね……!?」

「……たぶん、五体はいるよ」


 ボクは冷静に周囲の魔力反応を探った。

 すると、同等の反応がさらに四つ。こちらを取り囲むようにして、現れた。


「ニア、悪いわね。もしかしたら――」

「リーシャは下がってて。ここはボクがどうにかする」

「――え、ちょっと!?」


 ボクは腰から短剣を引き抜いて、駆け出した。

 背中に少女の困惑した声を受けながら。



◆◇◆



 ――その少年は、まさしく光だった。

 そう見紛う速さで、ドラゴンを屠っていく。短剣に魔力を流し込み、その強度を遥かに上昇させる。そのことによって、並大抵の剣では切り裂けないドラゴンの鱗を、ケーキを切るより簡単に……。


「嘘みたい。なんなの? ――いったい、ニアは何者?」


 リーシャはその戦いを、ただただ唖然と見守っていた。

 自分一人では到底かなわない、そんな強さの魔物を、ニアは単独で次々と倒していく。最終的に、ドラゴンの叫びによって集まった他の魔物も加え――合計で、十四体。明らかに高ランクの魔物もいたのに、ニアはいともたやすく……。


「ねぇ、リーシャ?」


 そんな規格外の戦いを演じてみせた人物は、笑顔で彼女を見た。

 そして、こう言うのだ。



「ボク、合格かな……?」――と。




◆◇◆




「合格出来て良かったよ。これで一安心だ」

「合格も合格、大合格よ? まさかこんな可愛い顔をした子が、こんなに強いとは思わなかったわ……」

「あはは、よく言われるよ」


 ボクはリーシャの後について歩く。

 テストに合格したので、仲間に会わせてくれるらしい。そんなわけだから、ひとまず彼女が泊っている宿へと向かっていた。


「それにしても、こんなに強い【女の子】がいるなんて。聞いたことがなかったわ」

「…………ん?」


 あれ、でも今――なにか、おかしな言葉が聞こえたぞ?

 ボクが首を傾げていると、どうやら宿についたらしい。リーシャはこちらの様子には気づかずに、どんどん中へと入っていった。

 慌てて追いかけると、エントランスには二人の冒険者の姿。

 両者ともに、女性だった。


「ニア、紹介するわ。魔法使いのナオに、治癒師のマーズよ」

「え、あの……」



 嫌な予感がした。

 そして、それの正体をリーシャに確認しようとした時だった。



「ようこそ【ファントム・レディース】へ!」



 彼女が、こう名乗りを上げたのは。




「このパーティーは、女性による女性のため、そして女性だけで構成される。男子禁制の清廉なチームよ!!」――と。



 ボクは、しばし硬直して。



「ええええええええええええええええええええええええっ!?」





 そう、叫ぶのだった。



 



面白かった

続きが気になる

更新がんばれ!(短編ですがw


もしそう思っていただけましたらブックマーク、下記のフォームより評価など。

創作の励みになります。


応援よろしくお願いします。


<(_ _)>

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 連載版、無いです? 期待しても無駄です?
[気になる点] 連載版、どうなりました?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ