夜のろくでなし
「夜11時半のの賑わいは紛い物。
あれって、みんな焦っているの。
お祭りが終わってしまうから、その前に
誰かと抱き合って眠るための
恋人もどきを大慌てで探している、
その喧噪なんだよ。」
あの夜、ぼくはきみの言葉の意味に気付きもせずに
汚れた冷たい空気を吸うのに夢中で
じゃあね、ばいばい、なんて言ってしまったんだ。
街に流れる音楽なんて、
いつだって次の瞬間に止まることを知らなかった。
好きな人の手は、つないでおかないと
すぐにするりと消えてしまうってことも。
何も知らずにぼくは
夢ばかり追いかけて
深夜の街角でひとりぼっちだ。
へたくそなギターを鳴らして
ひとりぼっちの唄をうたいつづける
どこにでもいる、ろくでなしのひとりだ。
歌声でさみしさを紛らせながら
もうにどと出会えないきみのことを
なんどでも思い出すだけ。
なんども、なんどでも思い出すだけだ。