忘れん坊の少年
忘れっぽいと困りますよね
ある村にユウという少年がいました。
ユウは赤ん坊の頃に患った病気が原因で、物事をよく忘れる子でした。
テーブルマナーを教えても、その日は出来ても次の日には綺麗さっぱり忘れて全く別の事をしようとしたり。
同じ絵本を読み聞かせたとしても、毎回新しい絵本のような反応をしたりします。
ある時にユウは犬を指さして母に聞きます、あの動物は何ていう名前なの?
あの動物は犬というのよ坊や、と母はユウに言います。
その次の日、ユウはまた同じ犬を指さして母に聞きます、あの動物は何ていう名前なの?
坊や、あの動物の名前は昨日も教えたでしょう。犬というのよ。母はユウに諭します。
ユウは言います、昨日の犬と同じであの動物の名前も犬なんだね、どうやって見分けているんだろう?
ここで母は自分が勘違いしていたことに気付きました。
ユウ、あの動物のことを犬というのよ。けれどあの子の名前は犬ではないの。
分かってしまえば単純な話でした、ユウはあの犬のことを『犬』という名前だと思っていたのです。
そうなの?じゃああの動物の名前はなんていうの? ユウは聞きます
そうね、あの子は犬だけど名前はお母さんには分からないわ。そうだ小屋に名前が書いてあるんじゃないかしら? 母は答えます
それを聞いたユウはすぐさま小屋に書いてある名前を確認しました。
ポチ、それがあの動物の名前なんだね。
そうみたいね。私も少し勘違いして坊やを困らせてしまったわ。ごめんなさい。
そういうとユウは少し困った顔をしながら言いました
そんなことないよ母さん。ぼくも少し勘違いしてたみたいだ。
あの犬も母さんたちと同じで名前だけは同じなんだね
忘れると何が正しいのかもわからなくなっちゃいます