表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
救国の戦乙女は幸せになりたい!  作者: 桜川ヒロ / 秋桜ヒロロ
― 腹黒王子と遠出します! ―
45/49

プロローグ

連載再開しました。ご要望にお応え、二部です。

また1~2か月ほどお付き合いくださいませ。

 その青年は夜空を見上げていた。

 暗い静かな自室に明かりを灯すことなく、頬には月光を滑らせ、瞳は星の光を映していた。

 なにも考えてはいなかった。けれど、王位を継ぐはずだった一番上の兄がいなくなってから、胸の中にはもやのようなわだかまりが常にあった。

 その不快な感触を夜の暗闇に溶かすように、彼はこうやってたまに起きては吸い込まれそうな藍を見つめるのだ。

 太陽の神々しいまでの明るさは一番目の兄のよう。

 宵闇の中に浮かぶ、冴え冴えとした月は二番目の兄のよう。

 それならば、自分はなんなのだろう。

 そう、青年は考える。

 太陽にも月にもなれなかった自分は、ただただ太陽の代用品でしかないのだろうか。それならば、もういっそのこと多くの星に慕われる月になりたかった。

 無能と蔑まれようとも、生まれを笑われようとも、城の中で軽んじられようとも。他の何物でもない自分になりたかった。

 二人の兄は彼にとっての憧れであり、妬みの対象だった。

「ルトラス様」

 その声に振り向く。すると、部屋の中に先ほどまでいなかった影がこちらをじっと見据えていた。手には緑色に輝く石が見える。

 恐怖はなかった。正確には恐れるところまでいかなかった。

 自室に誰かがいることにただただ驚いてしまって、声さえも出なかった。

 男の手にある石がほのかに輝き始める。それと同時に自分の心が深く誰かに浸食されていくような気がした。

「恨むのなら、かの王を……」

 意識と記憶が混濁する寸前、ルトラスは確かにその声を聞いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=31163197&si
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ