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1章 09 安眠
あの後は特に何も無く、ごく普通の1日だった。逃げ出すにしてもタイミングが大事だ。早めに行っておこうと思ったのだが、そんな泊まる程のお金なんてない、あの街は泊まるとこが少ないから高いんだよ、せいぜい泊まれても1日だけだろう。この2つから俺は日程を決めた。
まぁ、なんてことでしょう。最終日の前日があるではないか。
俺は覚えている。1回目は丘の上、2回目は俺の家。
この2箇所は町の北の方にあり、トンネルは南にしかない。
たとえ北で気付こうがその時にはもうトンネルを抜けて街に入り逃走成功で終われるんだ。
これで終わってほしい。確信は無いけど、願望はある。この願望が神にでも届いてくれることを祈り、俺は早く寝ることにした。大事な日に今日みたいに体調を崩しては一向にここから抜け出せない。前の日からの準備を大切に、こんなこと小学校低学年ぐらいが言われることだ。
人ってのは、大切なことでも忘れちゃうもんだな。
その日は安らかに眠ることができた。