1章 08 逃走
「マジかよ…」
こんな幸運が舞い降りてくるなんて思ってもなかった。
きっとこのチャンスを逃したら俺は逃げられないかもしれない。手の汗を必死に拭き取り金庫の戸に手を掛けた。中には大金と言うほどのお金はなかったが俺にとっては十分だ。そのお金を手に取った時、俺に何かが起きたのか俺はそのお金を戻していた。
盗みなんてしちゃダメだ。
どれだけ追い込まれてようと犯罪はしちゃいけない。そしてこの無防備なのはこの町の信頼があるからだ。その信頼を崩すなんて許されないんだ。
何度も死んでいて頭がおかしくなっていたのか、自分の行動が馬鹿に思えてきた。たとえ家に帰れなくとも、この町から出てしまえばいいんだ。ならばまだ時間はある。この町と他の街を繋ぐトンネルがある。トンネルの向こうに行けば、なにかあるかもしれないし、帰る予定の日までいればいい。あの街の中から俺を探し出すのは難しいはずだ。
冷や汗は止まっていた。体の震えも止まり、体のだるさも消えていた。
今、本当にやるべき事が見つかった。
なら、その為に止まっている訳にはいかない。
絶対にお前になんて屈しない。
必ず、逃げ切ってやる。