1章 01 初めての出会いと死
「暑い…」
夏休み終盤、宿題が終わり何もすることがなく暇な毎日。
俺は今誰もいないおばあちゃん家にいる。決して誰もこない。なぜならもうおばあちゃんは死んでしまったし親はおばあちゃんが嫌いだからここには近づかない。そのおかげで俺はまったりと残りの夏休みを過ごせるのだ。お金は親から貰っているから問題ないし、周りの人も採れた野菜をたまに持ってきてくれるから餓死もしない。しかし、
「クーラーほしーい。」
冷房も暖房もない。そして暇な原因、それはネット環境がないことだ。若者にはほぼ必須なものだ。だからこそ宿題がすぐ終わるのだが、逆に早すぎる。帰ろうにも帰りの飛行機はまだ先だ。
「綺麗な女の人とかこないかなー。」
そんなありえないことを呟いていたら、近くに引越し業者が来た。ここに引越す人などほとんどいないから気になって見に行くと、綺麗な女の人だった。いや、女の子と言ったほうが合ってる。
俺とおんなじくらいの背丈で綺麗な黒髪のショートで青のワンピースを着ていた。
「俺のどストライクじゃないか!」
思わず声にでた。
終わった。
彼女はびっくりしていた。
「いや、あの今のは、いや、別にあなたのことじゃなくて、その。」
「お近くの人ですか?」
「は、はい。」
「ここに引越して来ました。安城白菊です。これからよろしくお願いします。」
相手は至って冷静に接してきた。自然と俺も冷静になれた。
「宇都宮 礼斗です、よろしく。」
その日は挨拶だけして家に帰った。
あまり一緒にいたくなかった。そんな感じの目だった。小心者の俺には怖くてたまらなかった。
その日からは彼女の家の近くに散歩しに行った。怖かったけれどそれ以上に可愛かったから見たかった。たまに目が合うと彼女は笑いかけてくれたから、ますます会いたくなった。
そんな事を続けてたら8月30日、明日には帰らなくてはならなくなった。今日は花火大会があるからそれを味わって寝ることにした。家からは見えないから軽い丘に向かった。すると、その丘には彼女もいた。
(やべぇ、まさか会うとは思ってなかった、一応挨拶しとくか。)
「こんばんわ。」
「こんばんわ。あなたもここに来たのね、」
「まぁ、ここは見やすいですしね。」
そんな他愛もない話を続けていた。俺が明日帰ることなどを。花火が終わって帰ろうとしたその時、
「ねぇ。」
「なんですか?」
「本当に帰っちゃうの?」
「まぁ、夏休みも終わっちゃいますしね。」
「そっか。」
「楽しかったです、また冬休みきますから。」
「そう。」
「今までありがとうね。」
その一言を聞いた時俺は倒れた。何が起こったかわからない。腹から血がでていた。俺は叫ぼうにも声がでなかった。遠のく意識の中、見えたのは、
あの日の用に冷たい目の彼女だった。