第68話 王様と会う
「誰だ?」
ハーガスト王国の王都にある王城に、王様が仕事をしている執務室がある。
深夜、溜まっていた書類に目を通していると、
人の気配を感じたのか、声をかけられた。
俺は、すぐに姿を隠せるマントを脱ぐと頭を下げて挨拶する。
「突然訪ねて申し訳ありません。
ある女性の頼みで、陛下に内密に会いたかったものでここまで来ました」
王様は、こちらを警戒しながらも椅子に腰かけている。
「ふむ、儂を暗殺に来たわけではないようだな……」
「……」
暗殺って、王様って大変なんだな……
それにしても、王様って太ってるイメージがあったけど、
ハーガスト王国の王様って、体格いいよな。
暗殺とか言っているし、自分を鍛えることをしているんだろうな……
俺がずっと頭を下げていると、王様はため息をつく。
「まあよかろう、それで、儂に何ようだ?」
「はい、まずは会っていただいた方が分かりやすいので、
ここに連れてきてもよろしいですか?」
王様は、まだ警戒しているが、頷いてくれた。
俺はすぐに空間魔法を展開、白い壁を作るとその中からフィリアを連れてくる。
「……お主、ブレナード家のフィリアか?」
「はい、陛下。 お久しぶりでございます」
王様は、フィリアの顔を見ただけで、すぐにわかったようだな。
フィリアも、跪いて答えている。
「………お主の首に巻かれているもので察しがついた。
すまぬな、フィリア。
お主には、辛い思いをさせてしまったようじゃな……」
王様のフィリアを見つめる目が、優しいものになっている。
どうやら、フィリアの父親とだいぶ話し合っていたようだな。
「いえ、大事な子爵領の民を不幸にさせるわけにはいきませんから」
「そのようなことを言うでない、儂は、そなたのことも心配しておるのだ。
これからどうするのだ?
すぐに開放してもらえるのか?」
「陛下、私のことは心配いりません。
私には、信頼できる仲間がおりますので……」
王様は、俺を見ると、頭を少しだけ下げてお願いしてきた。
「フィリアのこと、頼むぞ?」
「お任せください」
そして、再びフィリアに向くと、
「子爵領のことは、儂に任せるがいい。
お主の父親とも話し合っておった、もしもの時はとな」
その後、フィリアと王様は少し話をして、俺たちは執務室を後にした。
フィリアは箱庭へ、俺はマントを被って再び王城の外へ。
ここで俺も空間魔法でいなくなると、
出入り口がこの場所に固定してしまうからな。
王城の警備って、深夜は少し緩いみたいなんだよね。
くノ一ゴーレムや、忍者ゴーレムを使って、
王様のいる執務室まで忍び込むことができたし。
執務室の周りにも、近衛兵らしき人はいなかった。
ただ、王城をくまなく調べた訳じゃないけど、
忍び込んだ感じとしては、王様のいた執務室と、王様の家族のいる場所とは、
廊下1つだけで繋がっているみたいだ。
隠し通路はいくつか見つけたけど、これは関係ないだろう。
王城のことを考えているうちに、王城から脱出できた。
後は、宿まで戻って、王様がどうするかだな。
『子爵領は、私に任せてくれ』
あの王様が、フィリアと約束したんだ、まかせて大丈夫だろう。
俺とフィリアが王様に会ってから3日後、冒険者ギルドにお触れが出た。
この王様からのお触れ、各ギルドの掲示板や、
町に設置してある掲示板に、貼り出されることがある。
大概は、字が読めるものに宛てたものだけど、王都の人向けとなると、
お触れの横に兵士が2名立つことになる。
そして、声を出して読んでくれるのだ。
『ブレナード子爵領は、後継者がいなくなったため、
王族預かりとなり、10日後、直轄領として代官をおくものとする』
俺と馬場は、冒険者ギルドの掲示板でお触れを読むと、
「王様が、動いたようだな」
「ああ、会いに行って正解だったようだ」
今、ギルドの掲示板付近に人はいない。
お昼近くの時間帯だから、少ないのだろう。
「これで、子爵領は直轄地になって男爵連中には、手の届かないものになった」
「後は、フィリアたちを解放して終わりだな……」
「ところで、フィリアたちの今後だけど……」
「ああ、木下先生から聞いてる。
箱庭で暮らしたいって言ってるって」
「で、どうするんだ?」
「勿論、俺は反対する気はないぞ?」
「無論、俺もだ」
「だったら、心配はいらないだろう?
みんなだって、反対はしないよ」
「なら、後は、明日には宿を引き払って出発だな」
「ああ」
俺と馬場は、冒険者ギルドを出ると、すぐに宿へ向かう。
その後ろ姿を、ギルドの中から一人の人物が見ていた……。
次の日、俺と馬場とメイドゴーレムのファを乗せて、馬車は王都を出発した。
「何ごともなく出発できたし、旅の再開ってところだな」
「だけど、明日までに、屋敷に行かないとな」
「ん? 何かあるのか?」
「忘れたのか? 城から『ご主人様、待ち伏せ見たいです』……」
俺と馬場が、馬車から顔を出して、前方を見ると、
隊列を組んで、街道をふさいでいる部隊が見えた。
「……あれって、盗賊か?」
「いや、どこかの貴族だろうな……」
「先頭で馬に乗っているあの派手な奴か?」
部隊の先頭には、馬にまたがっている派手な服を着た男がいる。
後ろの兵士たちは、ざっと20人ほどか。
俺は、すぐにリュックの中から、ゴーレムの核の宝石を用意する。
「そこの馬車、止まれ!」
読んでくれてありがとう、次回もよろしく。
遅くなりましたが、ようやく更新できました。
風邪って、しつこいですね~




