第66話 王都到着
城塞都市レバリーを後にして、ハーガスト王国の王都を目指すため、
途中の村や町に立ち寄らずに、街道を飛ばしていた。
まさに、ゴーレム馬に引っぱってもらう馬車だからこそできる芸当だ。
これを普通の馬車ですれば、何頭馬をダメにするか……
こうして、通常15日ほどかかる馬車の旅を、たった6日で走破してしまった。
目の前には、ハーガスト王国最大の都市、王都の外壁門が見えてきた。
高さ10メートルぐらいあるかな。
横幅は、ちょっとわからない。
門の所には兵士が5人いて、
王都に入ってくる者たちのチェックをおこなっている。
『ご主人様、王都の中に入るまで少し時間がかかりそうです』
「みたいだね、こんなに列ができているとは……」
ここは王都だから、貴族用とそれ以外用と別れているようだ。
それでも、貴族用でも少しだけ列ができていた。
ん~、これは何か貴族の集まりか、イベントでもあるのかな?
そうそう、レバリーの冒険者ギルドで受け取った辺境伯からの手紙、
その内容なんだが、どうやら、戦場では膠着状態になったそうだ。
勇者召喚までの1年間を、何とか捻出するために、
将軍はじめ、いろんな人が作戦を出し合い、睨みあいへ持っていった。
そして、ボルニア王国はその報告を聞いて、勇者召喚を決行。
つい何日か前に、12人の異世界人を召喚することに成功した。
そして、鑑定の結果、12人のうち10人が勇者の称号を持っていたそうだ。
王国は、さっそく10人の勇者の育成に取り掛かったとのこと。
それと、残りの2人は能力が俺たちよりひどく、
戦力にならないとのことで、辺境伯あずかりとなった。
今は、馬車に乗せられて、俺たちの住んでいる町の屋敷に連れていくそうだ。
面倒を見てやってくれと、手紙にお願いが書かれていた。
俺はその手紙を早速、木下先生に渡し、今後を話し合い、
屋敷に到着した時に、顔合わせと、事情説明をするとのこと。
こんな時は、木下先生と松尾先生が頼りになるな。
「それにしても、勇者が10人か……」
『ご主人様、どうなされましたか?』
「いや、ボルニア王国で新たに勇者が召喚されてね、どうしたものかと……」
『ご主人様が悩まれる必要はありません。
勇者たちの今後は勇者たちに選ばせればよろしいかと。
それよりも、勇者に選ばれなかった異世界人が問題です。
ご主人様は、そちらに目を向けられる方がよろしいですよ』
「ファは、的確な意見を言ってくれるから助かるよ」
『これも、ご主人様に仕えるメイドとしてのたしなみでございます』
たしなみね~
う~ん、スペックを間違えたかな?
メイドゴーレムが、優秀過ぎて困ってしまいます。
列に並び始めてから3時間ほどで、ようやく王都の中へ入ることができた。
なんでこんなに時間がかかるのかな?と思ってら、
案の定、兵士2人が馬車をチェックしていた。
どうやら、ここにも男爵の息のかかった兵士が、と思ったが、
ここは王都、男爵程度でこんなことができるはずがないと、
男爵の後ろにいる貴族がやらしているのだろうなと、思い直した。
「まあ、とにかく、宿を探そうか」
『はい、兵士の話では、この通りをしばらく行くと宿屋街になるそうです。
そこで、宿を探しましょう』
「ああ、では出発だ」
王都の門から、通りをまっすぐ進むと、すぐに宿屋街に出た。
右も左も宿屋が並んでいる。
外観と宿の名前で、適当に選んで
『旅人の憩い亭』というところに泊まることにした。
馬車を宿の裏手にとめ、俺とファが降りてから空間収納でしまい、
宿の正面に移動して中に入る。
受付にいた、女性に泊まる旨を伝えると1泊朝夕の2食付きで銀貨5枚とのこと。
「この宿は食事が評判だからね、少し割高だけど大丈夫かい?」
うむ、食事がうまいならしょうがないね。と、お金を払い10泊することに。
部屋は、2人部屋の209。
2階の一番はしの部屋になるそうだ。
時刻は夕食にはまだ早いお昼を少し過ぎたところ、俺は、宿の部屋から、
箱庭へ移動して、自分の家でお昼を食べることに。
それと、アルフィアたちに王都に着いたことを知らせて、どうするか相談だな。
目的の奴隷商を探して、奴隷契約、そして、王様への報告。
これで子爵領が、王国預かりとなり、そののち王族の直轄地になる。
そうなれば、男爵たちの思惑も防げるだろう。
まあ、うまくいけばの話だけどね……
お昼を食べ終わり、アルフィアたちと話し合うと、
とりあえず、懇意にしている奴隷商があるのか確認することに。
そこで、明日、宿を出て奴隷商巡りをすることになった。
メンバーは、俺と馬場の二人。
目的の奴隷商がどうなっあのか分からないので、アルフィアたちは留守番だ。
で、俺は宿にいないと不思議がられるので、ファと一緒に宿の部屋へ。
夕食までの時間を、本を読んで過ごすことに。
この本は、レバリーで手に入れたものだが、なかなか物語としては面白い。
作者は、シェリー・オオサキ。
一瞬異世界人か?と思ったが、本の表紙の裏の作者紹介を読むと、
作者の先祖に、勇者がいたそうで、オオサキという名前は、その名残だとか。
何だと安堵しつつ、帰還しなかった勇者もいるのかと思ってしまう。
異世界で生きていくことを決めた勇者は、どんな人だったのかな?
そう考えると、俺たちは全員、日本に帰りたいのだろうかと考えてしまった。
読んでくれてありがとう、次回もよろしく。
今、風邪をひいて、更新が遅れています。
なるべく早く治して、更新を元に戻したいです。




