表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
相沢ヒロキ、異世界へ行く!  作者: 光晴さん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/73

第60話 進む状況





辺境伯邸の庭先で、貴族騎士が辺境伯に詰め寄っていた。


「ベルモンド・ゴージナ辺境伯殿、これは一体どういうことなのですかな?」


チッ、ブレスナ伯爵直々に来るとは、面倒だな。

王都にいる貴族の中でも、最も人を見下す奴を差し向けるとは……


「ブレスナ伯爵殿、何かありましたかな?」

「何かありましたかではない!

陛下のご命令で無能力者どもを捕縛に来てみれば、

屋敷はもぬけの殻ではないですか、

一体、管理はどうなっているのかとお聞きしたい!」


こいつ、召喚者たちを無能力社とかぬかしおった。

もはや、蔑むことを隠しもしないのか?


「管理も何も、私どもは彼らを預かっただけです。

定住先を与えましたが、その後は彼らの自由にさせています。

勇者たちの協力を得るのですから、彼らをむげにはできますまい」


「ふん、あのような我が国の戦力にならない者たちなど、

奴隷にでもしてしまえばよかったのだ。

そうすれば、管理も容易いものを……」


こいつ、本当にクズだな。


「しかし、召喚者は奴隷にできないのではないのですかな?」

「それがな、奴隷にできないのは、勇者だけというのが分かったのだ。

何か月か前に、戦線を離脱した勇者の従者がいてな、

そいつが奴隷落ちしたという情報があった。


魔道具の隷属の腕輪が使えたそうだ。

私も、その情報を得てすぐに奴隷商を回ったのだが、すでに売れた後だったよ。

フフフ、私に買われておれば、今頃は……」


……気持ち悪い笑みを浮かべやがって、何を考えているのか。

しかし、その従者は、こんな男に買われてなければいいのだがな……


「コホン、とにかく、私どもで探してみましょう。

どこに行ったのかだけでも、分かればいいのでしょう?」


「ダメだ! 探し出して捕まえねばならん。

これは王命である!

捕まえて、すぐに王都に連行………いや、隷属の腕輪をさせるか……」


こいつ、逃がさないように隷属させる気か?

王都にいる貴族たちは、こんなやつばかりなのか?

騎士団長をしているあいつの苦労がよくわかるな……


「クフフフ、そうだな、隷属させて王国の礎になってもらおう。

勇者殿たちも早く魔王を封印できれば、我が国のために働けるのだ。

フフ、我が国の未来は明るいのう……」


この男、今回捕まえに来た召喚者たちを人質にする気か。

……そんなことをすれば、勇者たちがどんな行動をとるか分かっているのか?

前線には、王女様たちも行っているのに……




その後、半月の間召喚者たちを捜索したが、見つからなかった。

情報収集もしたようだが、分かったのは、すでにこの国を出ていたことだけ。


ブレスナ伯爵は、その報告を聞いた時、地団太を踏んで悔しがったとか。

そして、ブレスナ伯爵の部隊は、王都へ帰還していった。

ものすごく悔しそうな顔をして……




また、王都では、召喚者たちが行方不明ということを知り、

ブルティス王国軍の対応がさらに遅れることとなる。


なにせ、人質として勇者の一部を帰国させることができなくなったからだ。

勿論、貴族の中からは嘘をついてごまかしては、という意見もあったが、

勇者たちに嘘がばれると、今度は国のことを信用しなくなるということで却下。


とりあえず、王国軍だけでも、向かわせるべきとの意見により出兵させる。

が、王国軍が戦場に着くころには領都は陥落。

戦線はさらにボルニア王国内部へと拡大していた。


この事態を見て、貴族の一部が裏切り、ブルティス王国に寝返る。

その知らせを受け、戦況はさらに悪化するのであった。




▽    ▽    ▽    ▽




ハーガスト王国の辺境の町にある冒険者ギルド。

そこに、俺たち3人の姿があった。


「ヒロキ・アイザワ様ですね? ギルド経由でお手紙が来ております。

ギルドカードを提示してもらえますか?」

「えっと、はい、これを」


受付嬢が、傍らにある黒いボックスにギルドカードを差し込むと、

ピッという音とともにカードが出てくる。

この箱、面白いな。


「はい、確認できました。

では、こちらがお手紙です、ご利用ありがとうございます」

受付嬢の笑顔で見送られ、ギルドを後にして馬車に戻る。



「何か、いい依頼はあったか?」

「ないな、馬場はどうだ?」

「無い、俺の琴線に触れるような依頼はなかった……」


お前は、どんな基準で依頼を選んでいるんだ?

「馬場は、どんな依頼を探しているんだよ」

「ケンジ、男はロマンあふれる依頼を受けたいじゃないか」

「それは、お前だけだ!」


「とにかく、次の町へ行くぞ~

ファ、馬車を出してくれ」

『はい、ご主人様』


ファ、この御者をしてくれているメイドゴーレムの名前だ。

馬場が名前を付けろとうるさいので、ファーストのファと名付けた。

ちなみに、もう一体はセラという。


馬車が動き出してから、俺は辺境伯からの報告の手紙を読む。

概ね、予想通りの展開のようだ。

貴族なんてものは、手のひらを反すのがうまいみたいだな。



「ヒロキ、辺境伯様は、なんて書いているんだ?」


「この1か月の国の状況とかだな。

俺たちを捕まえに来た貴族部隊が、バカだったこととか、

攻め込んできているブルティス王国軍に対しての、王国の手だてが遅いとか、

貴族の一部が裏切ったとか、いろいろだな」


「裏切りが出たか、この手の出来事にはお決まりの展開だな」

「まあそれで王国側は、かなり混乱しているようだな。

王都じゃあ、冒険者や傭兵が募集され始めたそうだ。

勇者のこともどうするか、会議が紛糾していると書いてあるよ」


手紙を馬場やケンジにも見せてやると、読みながら二人の顔が渋くなる。


「何とかしてやらないのか?」

「俺たちが何かして、目立てば、どうなると思う?」

「……ろくなことになりそうにないな」


「今は、静観するしかないって……」

「う~……」

「何か、もどかしいな……」







読んでくれてありがとう、次回もよろしく。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ