第58話 ここ半年の間に
ミネリア本人の了承を得て、奴隷商へ足を運び奴隷契約を結んだ。
さらに、魔道具の『翻訳の指環』をつけてもらい皆との会話ができるようにした。
これで、木下先生をはじめ、みんなに魔族のことを知らせることができた。
夕食後の話し合いでは、みんな驚いていたな。
何せ、勇者の安藤も飯島も、敵対している魔族のことを知らなかったんだから。
そんな話し合いや雑談を得て、ルビニアやミネリアは皆と友達になったようだ。
ただ、何故か女性陣の俺を見る目が、怖かったのは納得いかなかったが。
そして次の日、安藤と飯島は魔道具の箱庭へ通じるドアを持って、
最前線の町へ帰還していった。
これで、他の勇者たちやクラスメイト達が、箱庭へ来ることもあるだろう。
その時は、みんなでパーティーでも開きたいね。
それに、今後の魔族との戦い方も、変わってくるのかもしれない。
箱庭に住み始めた、家族奴隷の人たちは、元気に農業をしている。
外の世界から、いろんな作物の種を持ってきては植えて育てている。
いろんな野菜が外の世界と同じように育つかは、分からないが、
とりあえず、何年かやってみて考えていこう。
それと、箱庭にいる野生動物は、数が少ないらしいので、
肉類は外の世界で購入している。
箱庭でも、狩猟ができるように、今後も野生動物を捕まえては、
箱庭に放していかなくてはいけないだろう。
あと、箱庭に食堂ができた。
雑貨屋が開業し、鍛冶屋も開業すると食事処がほしいとの要望が出て、
新しく建てたんだ。
食堂を切り盛りするのは、父親がいなかった家族奴隷のミーナー一家だ。
なんでも母親が料理上手とかですぐに決まった。
雑貨屋は、姉妹だけだったルーグ一家が担当するし、
鍛冶屋は、山本が連れてきた家族奴隷のガルトー一家が受け持っている。
このガルトー一家は、全員がドワーフだそうで、
馬場が、ドワーフの女性って、ある意味犯罪になりそうだなともらして、
女性陣から怒られていたな……
あと、木下先生が担当の孤児院もやっと完成した。
10歳までの子供たちが、全員集められ教育を受けることができるし、
親のいない子供たちが、ここで暮らしていく。
子供奴隷として売られていた子たちは、ほとんどがここに集められた。
ただ、奴隷を集めるのってお金がかかるんだよね。
その辺は、みんなで冒険者ギルドで依頼を受けて賄っているけど、
箱庭では取れない食料があるから、そんなに奴隷購入に使えない。
その辺は、これからの課題だな……
そうそう、この箱庭では、井戸を掘っても水が出なかった。
やっぱり、外の世界とは作りがどうも違うようだ。
そこで、魔石を使用して水魔法を使って水を確保した。
わざわざ井戸を掘る必要もないので、水道を整備してみた。
で、下水道も整備したのでトイレは各家庭全て水洗だ。
また、下水道整備と同じ時に、お風呂を各家庭に設置しようと思ったんだが、
お風呂になれてない人がほとんどだったため、公衆浴場を作ってみた。
これにより、箱庭に住む人たちにお風呂文化が根付くといいね~
こうして、箱庭での生活はどんどん快適になっている。
また、お金が貯まると、家族奴隷を購入したりして村の人口を増やしている。
村長でエルフのニルヴィアさんが、村の活気が戻ってきたって喜んでいたな。
安藤と飯島が、クラスメイトの所に帰れば、ここにも遊びに来るだろう。
それまでには、もっと快適な場所にしないとね。
戦闘に参加できなくても、後方で休息をとれる場所は確保している。
皆には、無理なく生きのびてほしいものだ。
久しぶりに、屋敷の食堂に集まった皆に、俺が料理を作った。
時間もお昼だったんで、ガッツリじゃなくて、
手軽に食べれる『肉まん』を用意した。
「美味い!」
「久しぶりの肉まんだ~」
「……すごいわね、ちゃんと具が再現されてる」
「「「………」」」
何人かは、無言で夢中になって食べている。
まあ、分からないでもないけどね。
この肉まんは再現が難しかったし、材料より問題は調味料だったからな。
ほんと、松尾先生の独自スキルには感謝しかないよな!
「これから寒くなるみたいだし、暖かい肉まんは最高ね!」
「……みんな、こんなおいしいものを食べていたね……
前線の勇者たちが知ったら、すぐに箱庭に来るんじゃないかしら……」
「まあ、概ね好評で良かったよ。
ところで、みんな集まったから、例の話をして対処を考えておこうか」
俺が、話を切り出すと、みんなの視線が集まった。
「例の話って、辺境伯の使いの人が知らせてきたあの話?」
木下先生が、のほほんと聞いてくる。
「そうですよ、木下先生。
魔王軍と戦っているクラスメイトの代わりに、
ブルティス王国との戦争に参加しろってやつです。
皆で、どうするのかとか、参加するのかしないのか、話し合っておこうかと」
皆、それぞれ考えているんだが、肉まんは食べるのね……
「相沢君は、どう考えているのか聞かせてくれる?」
「いいですよ、松尾先生。
俺は、参加拒否ですね、それ以外はないと思います」
「それは、どうして?」
「まず、この王国が俺たちを頼るはずがありません。
何せ、俺たちは、戦力にならないと切り捨てられたんですから。
今さら王国のために戦う気なんてさらさらないですね。
それと、前に話したダンジョンのこともありますから……」
皆、俺の意見を聞いて、さらに悩みだしたな……
でも、魔王軍と人類の存亡かけて戦っているのに、人族同士で戦争とは……
何を考えているのかね~
読んでくれてありがとう、次回もよろしく。




