第57話 魔王封印?
箱庭の俺の家のリビングで、魔族のルビニアとミネリアに、
魔族の実情を聞いていく。
「……すごいな、7人も魔王がいるなんて知らなかった」
馬場は、魔王の多さに驚いている。
よく考えたら、勇者たちもクラスメイトも、魔族のことを知らずに、
今まで戦ってきたんだよな。
魔王の数もそうだが、どの魔王と敵対しているかも知らなかった。
「馬場、俺たちは何も知らないんだよ。
魔王と敵対しているのに、王国のお城には魔族に関する資料はなかっただろう?」
「確かに、お偉いさんたちからは、魔王を封印してくれとしか聞いてないな……」
馬場が、お城でのことを思い出して頷いている。
『あの、ご主人様、よろしいですか?』
ルビニアが、発言してもいいかと、かわいく手を上げる。
「ああ、何かあるの?」
『はい、ご主人様たちは、魔王様の封印をお願いされたのですか?
魔王様の討伐ではなくて?』
「確か、王様たちからは、討伐ではなく封印をお願いされたはず……
それが、どうかしたの?」
ルビニアとミネリアは、お互いを見ながら困った顔をしている。
「ルビニア、何かあるなら、教えてくれるか?」
『え~と、大変いいにくいんですが、
……魔王様を封印することはできません』
俺と馬場は、少し驚きながらも、質問する。
「それはなぜか、教えてくれるか?」
『はい、魔王様は、魔族の頂点におられます。
それは、魔力において並び立つものが7人しかいないということ。
魔族という種族は、全体的に他の種族よりも魔力が多い、
魔力が多いということは、封印術が効きにくいということ。
封印術は、魔力が術者より多いと効きません。
ですから、魔王様の魔力を上回るには、
他の6人の魔王様の、誰か1人の力を借りるしかないわけで……』
「魔王を封印しようとしている勇者に、協力する魔王はいないわけだな。
まあ、それが道理だよな……」
「勇者の魔力を、魔王より上にする……
どれだけレベルを上げればいいのか分からんな……」
『いえ、魔王様の魔力は、無尽蔵なんです。
何せ、周りの空間にある魔力を体内に自然に取り込むらしいので……』
それを聞いた俺と馬場は、頭を抱えてしまう。
「「ダメじゃん!」」
「魔王封印は、あきらめた方がいいかもな……」
馬場は、すでに諦めた。
「ならば、今後はどうするか、だよな」
俺と馬場は、黙って考え込んでしまう。
魔王封印はできそうもない、かといって魔王討伐どうなのか。
俺は、魔王討伐も諦めた方がいいと思っている。
なぜなら、魔王は7人。
魔王たちの間に、どんな関係があるかは分からないが、1人の魔王を討伐すれば、
次は俺かと、魔王が敵対していくのではと考えている。
ならば、どうするのか。
……ダンジョン、そう、ダンジョンの最下層にいるかもしれない神に会うこと。
神に会って、元の世界に……
「なあ、魔王はいったん置いて、ダンジョン攻略をしないか?」
「ヒロキ、なんだよ急に……」
馬場が、俺の提案に驚いている。
「いや、魔王の対処なんだが、どうも情報不足だよな?」
「ん~、そうだな。 俺たちは何も知らなかったし……」
「だから、情報を収集するためにも、
ダンジョンに挑戦して、最下層にいるっていう神様に会いに行かないか?」
馬場や、ルビニアとミネリアも、疑わしそうな顔をしている。
「……ダンジョンの最下層に神様って、どこの情報だよ」
「お城にあった古文書に記されていたんだよ。
ダンジョンの最下層で、女神と出会ったってな」
「その古文書は、信用できるのか?」
「わからん。
だが、その古文書を記したのが過去に召喚された勇者だって言ったらどうだ?」
馬場が、真剣な表情で俺を見る。
「かつての召喚された勇者が残したものなら、行ってみる価値はあるな……」
「だから、魔族のことも含めて、みんなで集まって相談といこう」
「だな!」
そのまま、馬場は立ち上がると、すぐに家を出ていった。
行動力あるな、馬場って……
『さて、もういいかしら? ご主人様』
「……ミネリアが言うセリフじゃないな。
俺は、ミネリアのご主人様ではないし」
俺の目の前に、仁王立ちのミネリアが立っている。
『単刀直入に言うわ、姉様を解放しなさい。
……その代わり、私があんたの奴隷になってあげるから……』
『ミネリア?』
『さあ、どうなの?!』
ルビニアは、妹の行動に戸惑っているみたいだし、
ミネリアは、必死に訴えてるみたいだ。
「あのな、ミネリア。
ルビニアを今、解放することはできないんだ」
『どうしてよ!』
「それは、ルビニアが魔族だからだよ」
ミネリアは、俺の言葉にぐっと睨んでくる。
「これは、奴隷商の人が言っていたんだが、魔族の奴隷の解放は、
討伐対象の解放と同じだって言われたんだ」
『討伐対象?』
「ああ、今、人族は魔族と敵対している。
勿論、敵対してない魔族もいるんだが、そんな魔族を守るため、
人族の生息地にいる魔族は、奴隷化するんだ。
そして、主人を信用できる人にして、生活しているそうだ。
勿論、契約内容も主人が死んだら奴隷も死ぬなんてことはしない。
かなり緩い契約内容にして奴隷契約する。
今、ルビニアを解放すると、奴隷という契約で守られていたのに、
討伐という危険にさらすようなものなんだよ」
『………わかったわよ、でも、私はどうなの?』
「それで、ミネリアには、俺と、奴隷契約をしてほしい」
『いいわよ』
………なんか、簡単に了承したな。
本当はよく考えてほしかったんだけど……
読んでくれてありがとう、次回もよろしく。




