第48話 箱庭に家族奴隷
箱庭にある村の外周、目の前には広大な畑が広がり、
一定の間隔をあけて、家が建てられている。
そして、それを呆然と見ている家族奴隷たち。
ここにいる家族奴隷は、俺が契約した家族奴隷8組の他に、
安西、山本、石原の組が契約した家族奴隷、7組。
松尾先生、藤倉の組の6組、
青島、ケンジの組の8組の合計29組の家族奴隷が集まっている。
何かあったらと、今後のことを考えて50戸ほど用意しておいたが、
それが正解とは、世の中奴隷が多いなと俺たちは心配している。
俺は10分ほど、呆然とこの景色を眺めている家族奴隷たちに声をかける。
「皆さん! これから皆さんには、家族ごとに住む家を与えます。
そこで暮らしながら、この畑で作物を作ってください」
俺の言葉に、さらに驚く家族奴隷たち。
そんな中で、俺に質問をしてくる人がいた。
「なあ、あんたらは、俺たちに何をする気だ?」
俺たちは、質問の意味が分からなかった。
「と、いうと?」
「あんたらは、ここまでお膳立てをして、何を作れってことだよ。
俺たちは奴隷だ、命令されれば育てて作るけどよ、
犯罪の片棒を担ぎたいわけじゃあねえ」
「なるほど、違法なものとかを作りたくないと?」
「当然だろう? 奴隷に落ちたとはいえ人様に迷惑かけたくなんてねえよ」
うん、いい人たちだな!
「安心してください、俺たちが作ってほしいものは、
普通の作物です、市場なんかで売っている、みんなが食してきたものですよ」
「そうか、それを聞いて安心したよ……」
本当に、ホッとしているな。
「あの、1家族1軒の家をもらえるんですか?」
「はい、1家族1軒です。
それに、畑が付いてきますので、たくさん作ってください」
おお、みんな喜んでいるな~
うん、不安な家族もあちこちにいるな……
「あと、農業に向かない家族の人には、別の仕事をしてもらうかもしれません。
どんなことができるのかは、後で話し合いましょう」
俺は松尾先生を見ると、松尾先生は頷いて前へ出る。
「では、それぞれの家族が住む家まで案内しますから、
それぞれの契約者について行ってください」
俺も8組の家族奴隷を連れて、各家に案内していく。
家を見て、泣くもの、驚くもの、喜ぶもの、心配になるものなど、様々だ。
そして、最後の家族になる。
「最後に、ルーグ一家の家ですが、今はありません」
「え?」と姉妹そろって不安になる。
「お二人は、30日ほど俺の家で暮らしてもらいます。
よろしいですか?」
その言葉に、青くなる姉妹。
「あ、あの、もしかして……夜「違います!」の……」
「2人は、父親を亡くしたばかりです。
今2人きりにしてしまうと、悲しみばかりで前を向けなくなりますから」
ああ、俯いちゃったな…
「それに、俺の家には今、俺だけが住んでいるわけではないので……」
「えっと、私たちとご主人様だけじゃなく……?」
顔を上げて疑問に思っているな。
しかし、感情が顔に出る姉妹だな~
「まあ、預かっているといった方がいいですね……」
そう俺は、苦笑いをしていた。
姉妹を連れて、俺は自分の住む家へと帰る。
そして、家を見て驚く姉妹。
「……あの、この家なんですか?」
その家は、普通だった。
しかも、2階がなく1階だけの平屋。 だが、土地だけはあるらしく、
平屋といえど、かなり広く造られていた。
広いということは、部屋数が多いということ。
玄関から中に入ると、リビングやキッチンをはじめ、いろんな部屋が広かった。
「君たち姉妹は同じ部屋にしておくから、え~と、君たちの部屋は……」
俺は、家の地図を見ながら彼女たちの部屋を決める。
「ここだ、ベッドとか家具は搬入済みだから確認しておいてくれ。
何か質問は?」
「あの、同居人は……」
「ああ、そうだな、紹介しておこう。
お~い、集まれ~!」
そう俺が声をかけると、奥の方からドアの開く音が聞こえて、
3人の少女たちが勢いよく飛び出してきた。
「「「おかえりなさ~い」」」
その少女たちは、それぞれ年齢にばらつきはあるものの、
みんな可愛らしい少女たちだ。
「……この子たちが、同居人?」
なんか姉妹の目が、汚物を見るような感じで俺を見ている。
どうやら、姉妹は勘違いをしているようだな。
「最初に言ったと思うが、預かっているだけだぞ?」
「……この子たちは?」
「この子たちは、子供奴隷だ。
今、孤児院を建設中でな、それができて、
子供たちの世話ができる人を探して来たら、孤児院に移すつもりだ。
それまで、俺たちの仲間で分担して預かることになったんだよ」
「そうなんですね……」
すごく安心しているな。
姉の方も、ホッとしているし。
「この村はな、まだいろんな物や人が足りてない。
村にあるはずの雑貨屋はないし、食堂もない。
周りは広大な森や山があるが、獲物になる動物とかもいないんだ」
「……ここって、どういう所なんですか?」
「ここは、魔法で造られた世界。
だから、人が住むにはいいが、生きていくには難しい場所だな」
そう、一時的に住むにはいいが、生きていくには不向きな場所だ。
クラスメイトである勇者たちの避難場所として作ったが、
こんなにも、生きにくい場所とは思わなかった。
だから、これから生きていける場所へ作っていく必要がある。
幸い、500年前に造られた箱庭と融合した時、いくつかの動物や植物が発見できた。
これをもっともっと増やしていかないといけない。
魔王に挑む、クラスメイトの、勇者たちの休息場所として。
そして、迷い人たちの避難場所として……
読んでくれてありがとう、次回もよろしく。




