第47話 馬場の案内
馬場 一は憂鬱だった。
これから目の前にいる3人の女性たちを、
箱庭の家に連れていかなくてはいけないからだ。
本当なら、女性の奴隷が3人。
馬場の自由にできるはずである。
あ~んなことや、こ~んなことを考えていたのに、現実は厳しすぎた。
最初の顔合わせが酷かった。
何せ、女性たち3人は一言もしゃべってくれなかったのだ。
そのため、本当は『鑑定』で名前が分かっているのに呼ぶこともできない。
いや、呼んでもいいんだよ、奴隷商から聞いているからね。
でも、本人たちから聞きたいんだよ、
彼女たちの声とともに……
相変わらず、元貴族の女性は、こちらを睨むように見て仁王立ち。
元貴族の女性の妹は、メイドの影に隠れて馬場を警戒していた。
メイドさんは、2人を守るように立っているし……
本当に、ため息しか出ない状況だ。
でも、彼女たちを案内しなくては!
「コホン、ええ、これから君たちには、
俺たちが造った村へ行ってもらいます。
それは、その村で生活してもらうためですが、何か質問はあります?」
少しの間、女性3人が顔を見合わせるだけで、何もしゃべらない。
馬場の心がへこみ始めたその時、メイドさんが質問をしてきた。
「あの、その生活とは、性奴隷ということですか?」
そのメイドさんの言葉に、仁王立ちの元貴族の女性もその妹も顔を強張らせる。
そして、馬場は、キョトンとした顔になっていた。
「……えっと、性奴隷って何のこと?」
「……あの、あなたは私たちを弄ぶために買ったのではないのですか?」
「はぁ?! 誰がそんなことを……
まあでも、イチャイチャはしたいと思ったけど、弄ぶって……」
「ち、違うのですか?」
「えっと、ではまず、君たちの立場をはっきりとさせておきます!」
3人の女性たちに、緊張が走る。
「まず、君たちは性奴隷ではありません!
また、俺と特別な関係になる必要もありません!
………まあ、将来的にはなってほしいですけど…」
馬場の言葉を聞き、女性たちの緊張が解ける。
そして、安心したのか、女性たちから質問が出てくるようになった。
「あの、ご主人様、私たちは、
ご主人様たちの造られた村に行って生活するだけですか?」
「ああ、そうだよ」
「その村で、どう過ごしてもいいんですか?」
「勿論、住んでくれればね」
「でも、私たち、何もできないけど……」
「向こうに行けば、何かしら覚えればいいよ」
3人は、いろんな質問や悩みを喋ってくれた。
どうやら、性奴隷にされるってことを奴隷商で聞かされて構えていたようだ。
……奴隷商は、こういう元貴族の女性は性奴隷って相場が決まっているのかもな。
あと、彼女たちがそれぞれ自己紹介をしてくれた。
まず、元貴族の女性が、ジェシカというそうだ。
家名がないのは、奴隷に売られた時、
その貴族家が無くなり家名を名乗れなくなったからだろうだ。
で、妹の方が、シャロット。
そして、メイドさんが、サラという名前だそうだ。
3人の名前が分かり、馬場はその子たちを連れてドアをくぐって箱庭へ入った。
女性達が見つめる箱庭の世界。
そこは、驚きの世界だっただろう。
元貴族の自分たちが、知るはずのない世界に不安はあれど不思議と興奮していた。
これから始まる、新しい生活。
馬場の話では、私たちが食べたこともない料理もその村で出るという。
自分たちに何ができるか分からないが、頑張って生活していこう。
「俺たちが暮らす家は、こっちだよ」
馬場が、ジェシカたちを案内したのは、村の広場からすぐ近くにあった屋敷だ。
領都の屋敷と比べると、
かなり小さいが4人で暮らすならこのくらいがちょうどいい。
「あの、ご主人様も、一緒に暮らすのですか?」
「一応、君たちの主人だからな。
でも、ちゃんとそれぞれの部屋を用意してあるから、大丈夫だよ」
「「「……」」」
信じられませんって顔をして、馬場を見ている3人。
「本当に大丈夫だって、ジェシカたちの部屋は2階に、俺の部屋は1階だから」
「……まあ、それなら…」
そうやり取りをしながら、馬場は玄関のドアを開けて中へ案内する。
「……わぁ~…」
玄関に入ったシャロットは、その玄関に驚いた。
「白い玄関なんて初めてね…」
ジェシカも初めて見る白い玄関に、驚きの声を上げている。
「ご主人様、このお屋敷は白を基調として作っているのですか?」
「そうだよ、だから、床はともかく、壁や天井は白色になっているよ。
君たちの部屋もね」
そう聞くと、ジェシカたちは、家に入り2階へ行き自分の部屋を見てくる。
「……うん、ベッドとか運び入れておいてよかった…」
馬場は、ジェシカたちを購入後、すぐに家具をそろえて搬入しておいたのだ。
馬場にしては、細かな心配りであった。
馬場が選んだこの家の間取りは、2階に10畳の部屋が4部屋とあとトイレ。
1階に、馬場の部屋、トイレにお風呂、キッチンやリビングを造った。
要望が多すぎたため、小さな屋敷となってしまったが、
馬場に後悔はなかった。
これからジェシカたちと村とを、どう関わらせていくのかは分からないが、
この村のためになるような、村の人たちのためになるような
関わらせ方を考えていかないといけないだろう。
読んでくれてありがとう、次回もよろしく。




