第44話 奴隷たちを選ぶ 4
購入する奴隷を決めた俺は、グラバール奴隷商のオーナーさんに、
全員の合計金額を聞いていた。
「購入する家族奴隷は、まず、貴族の依頼を失敗した親子の奴隷ですね」
「え~と、それは、ヒルグ一家ですね。 父親と娘の2人の奴隷の」
「はい、次が、死んだ父親の借金で奴隷落ちした親子です」
「え~と、それは、リーヤ一家ですね。
母親と、息子2人の娘の親子ですよね? 子供が全員10歳前後の、
なら、リーヤ一家で間違いないです。
いや~、冒険者で、父親が亡くなって借金が残り、奴隷落ちする家族って
けっこういるもんで、確認も大変ですよ」
「……つ、次が、宿屋を経営していた家族奴隷をお願いします」
「というと、ガルア一家ですかね。
ただ、この一家もそうですが、借金奴隷の場合は、少し他の家族奴隷と違い、
高くつく場合がありますがよろしいですか?」
「それって、借金の支払いもするってことですか?」
「いえ、借金の一部を支払うってことです。
借金奴隷は、身の回りのもすべてを売ってから奴隷に売られるので、
借金の全額を支払うということはないんですよ。
ですから、今回も借金の一部ということになります」
「それなら、問題ないと思います。
ただ、あまりにも高額な場合は、買い取ることができませんが……」
「それは、こちらも分かっていますから高額な場合はキャンセルができます」
「最後は、あの姉妹の家族奴隷をお願いします」
「最後にご覧になった、ルーグ一家の娘姉妹ですね。
ある意味、家族奴隷から移される前ですから、家族奴隷価格でお売りします。
勿論、借金奴隷ですので、借金の一部は上乗せされますがよろしいですか?」
「はい、それでお願いします」
「わかりました。 それでお客様、男奴隷はいかがいたしますか?」
男性奴隷か、箱庭には、魔物は今のところ居ないから必要ないな。
ゴーレムを出すから、力仕事はゴーレムに任せればいいし。
「いえ、男性奴隷は今のところ必要ありません。
またの機会にしてください」
「畏まりました。
それでは、家族奴隷の購入計算と引き渡しの準備をいたしますので、
面談室にて、しばらくお待ちください。
もし、何かこちらからご相談がありましたらお伺いいたします」
「わかりました」
こうして、俺たちは再び面談室へ戻ることになった。
面談室へ向かう中で、オーナーさんが使用人の女性と何やら話している。
購入奴隷の引き渡し準備の事だろう。
面談室で、オーナーさんを待っている間に
木下先生と馬場に打ち合わせをしておく。
「木下先生、借金の額があまりにも大きい場合は、お金借りていいですか?」
「相沢君、先生から借金って、しまらないよ?」
「一応あの村の報酬で、1人金貨2000枚以上もらえましたけど、
足りるかどうかが分からないですから……」
「でも、いいわ、あの家族奴隷の人たちを見ていたら、
私も心が痛んだから、足りない場合は出してあげるわよ」
「よろしくお願いします」
木下先生は、笑顔で出してくれることを了承してくれた。
馬場は、ダメだ、すでに奴隷たちとの妄想に入ってやがる。
そこへ、計算が終わったのか、オーナーさんが入ってきた。
「お待たせいたしました、家族奴隷の計算が終わりました。
まず、基本購入金は、父親と母親が金貨20枚、子供が金貨10枚。
これは、変わりありません。
ですが、借金の額がこれに追加されます。
まず、ヒルグ一家の借金が、金貨200枚。
次に、リーヤ一家の借金が、金貨120枚。
それから、ガルア一家ですが、この家族は宿屋など売れるものがあり、
借金のほとんどを返済できておりました。
しかし、それでも借金は少し残ってしまい、金貨20枚が借金となります。
最後のルーグ一家、というより姉妹は、父親の借金で金貨160枚で、
基本合計が金貨180枚。
これに借金を加えた、全合計が、金貨680枚となります。
お客様、これでよろしいでしょうか?」
どうやら範囲内に収まったようで、助かったぜ。
「はい、その金額でお願いします」
「ご了承いただきありがとうございます、
では、引き渡し手続きに入りますので、こちらの書類にサインをお願いします」
俺たちは受け取った書類に目を通し、
奴隷の扱いの注意事項や、法律の罰則などを確認し、
奴隷の金額の確認を再度行った後、自分の名前を署名した。
「はい、けっこうです。
このたびは、お買い上げありがとうございました」
オーナーさんは、そう言って頭を下げてくれた。
そして、トレイを持った使用人の女性が部屋に入ってくると、
「では、こちらのトレイにお支払金額を載せてください」
オーナーの言葉に促されて、俺たちは自分の支払うお金をトレイへ載せる。
お金を載せると使用人がお金を素早く数えて、間違いない事を
オーナーに告げると、
「では、こちらが引き渡し書類の控えになりますので、
無くさないようお願いします。
では、引き渡し準備もできていますので、ご案内いたします」
こうして、俺たちはようやく購入奴隷を決めて、引き渡しとなった。
しかし、確かに今回は人数が多いな……
いったん屋敷に戻ってから、箱庭へ連れていくか、
それとも、ここから直接連れていくか……
いや、箱庭への扉を見られるわけにはいかないから、
屋敷まで連れていってから箱庭へ行くことにするか……
俺たち以外のみんなは、どんな奴隷を購入したのか楽しみではあるな。
読んでくれてありがとう、次回もよろしく。




