第41話 奴隷たちを選ぶ
奴隷商で、女性の奴隷を選ぶために連れてこられた部屋。
そこは、部屋というよりショーウィンドゥの並んだ廊下だった。
中に女性たちが1人ずつ待機しており、それを窓の外から見て決める方式だ。
しかし、俺たちも奴隷がどうとか日本にいたら、
人権がどうのこうのと、うるさかっただろうね。
現に、こうして女性の奴隷を見ていると可哀そうに思えてくるんだけど、
奴隷になる原因を知ると、巻き込まれたのねとか、自業自得でしょとか、
こちらも納得できる理由があるようだ。
「この女性は、貴族ですか?」
「はい、元、貴族です。 奴隷になった時に爵位は無くなりますので。
この女の父親が、不正を働いてそのことで罪に問われたのです。
本当なら、一家で斬首が相当なのですが、不正に使われたお金を取り戻すため、
父親が持っていた財産などを売り払い、
一家の男は鉱山奴隷へ、一家の女は犯罪奴隷にしたそうです。
それで、この女と妹の2人がこの商会に流れてきました」
元貴族の女性は、歳は16ぐらいで服装は俺たちと変わらない平民のもの。
髪はドリルになっておらず、短いショートになっていた。
オーナーさんに聞くと、お金の回収のために長い髪を切って売ったそうだ。
貴族で不正をすると、そこまで厳しいのかとオーナーさんに質問すると、
彼女は帝国から流れてきたそうで、帝国でのお金に関する不正は厳しいそうだ。
次の女性は普通の女性だ、さらに次はエルフの女性だった。
そうやってどんどん見ていくと、ある女性が目を引く。
「あの、この部屋だけ3人なんですか?」
「あー、はい、この女たちは言葉が通じないんですよ。
それに1人ずつに引き離そうとすると泣きだしてしまうので、
1つの部屋にしています。
服や持ち物も、見たことないものでして、私どもも売れるか困っているのです」
「そうなんですね……」
見たことない服か、この世界の人は見たことないだろう。
あれは、コンビニの店員の制服だ。
3人一緒ということは、昼間働いている人たちということになる。
……あれが、迷い人か…
それからも、次々と部屋を見ていくと、再び気になる女性がいた。
「木下先生! 見てください!」
馬場と話をしていた、木下先生を促すと、二人とも窓に食いついて見る。
「遠藤さん?!」
「おいおい、勇者の従者がなんで奴隷落ちしてんだ?」
「オーナーさん、あの女性はどうして奴隷に?」
「あの女は、勇者様の従者として旅に参加していたのですが、
ある事件に巻き込まれて毒を盛られたんです。
事件は勇者様の力で解決し、
毒も同行していた治癒師たちによって回復したのですが、後遺症が残りましてね。
足が動かなくなったそうで、仲間の所に送られたそうですが、
そこを奴隷狩りにあい、奴隷に落とされたそうです。
そして、この奴隷商に流れてきました」
「奴隷狩りというのは?」
「奴隷狩りは、主に獣人たちが暮らす集落辺りでおこなわれているそうです。
主に神聖国が主体となってしているそうで、
あの国の教義には、獣人は神に選ばれた人族の奴隷だそうで、
奴隷狩りをして何が悪いと、周りの国からの非難を何とも思っていないようですね」
……宗教が絡むと、ホント、ろくでもないな。
人族主上主義ってやつだろう、他の種族と比べて人族のどこがすごいのだろうね~
しかし、遠藤は助けないといけないな。
ここに流れてくるとは、何かの導きか、それともいたずらか。
「相沢君、渡辺さんは購入候補に入れておいてね」
「ええ、勿論です。 クラスメイトをお金で買うのは少し心が痛いですが、
こうなっては仕方ないですね」
再び、次々と窓を覗いてなかにいる女性を確かめていく。
いろんな女性を見ることができるが、また、気になる女性がいた。
いや、女性というより女の子だな。
「木下先生、あの女の子、気になりませんか?」
「ん~、どこかで見たことあるような……」
「あの女の子は、一番最初の元貴族の女の妹ですよ。
本当なら、子供の奴隷部屋へ連れていくんですが、
姉と同じ扱いをしてほしいと、子供の奴隷部屋へ送られることを拒否しましてね、
仕方なくここへ置いているのです」
う~ん、微笑ましいととるのか、意地っ張りととるのか難しいな。
次の部屋には、メイドさんがいた。
「……ヒロキ、メイドさんだ!」
「ああ、俺も見ているから分かっている」
馬場も俺も、メイド姿の女性に驚いている。
こんな奴隷商に、メイド姿の女性がいるとは信じられなかったが……
「あの、彼女は何故メイド姿で?」
「ああ、この女は隣の女の子の元、お付きのメイドだったんです。
どうしても隣のお嬢様が心配だとかで、隣同士にしたんですよ。
……まったく、最近の奴隷はわがままでねぇ~」
オーナーさんの愚痴が始まったぞ。
……繰りを聞くかぎり、かなり苦労しているようだ。
奴隷に対する法が少し変わったせいだとか…
次継ぐと部屋を見て回って、最後の部屋にありえない女性がいた。
「……オーナー、彼女は何故この奴隷商に?」
「あの女は、他の奴隷商から流れてきたんですよ。
どうやら、いろいろな所で買い手が付かなかったようで、
この辺境の奴隷商に流れてきたんですが、やはり、魔族の奴隷は売れませんね。
男の魔族奴隷は、身体能力がありますから売れるんですが、
女の魔族奴隷は、魔法主体なので隷属魔道具で魔力を封じると、
何もできなくなるそうです。
それで、使い道がないとかで……
性奴隷としての需要も無いようで、購入者はいませんね。
どうですか、お客様、村を造るのに使ってみては」
俺はじっと彼女を見つめていると、ふと目が合ったような気がした。
「どうする、ヒロキ。
あの体つきなら、俺はありだと思うんだけど……」
馬場よ、お前の選ぶ基準は体かよ……
読んでくれてありがとう、次回もよろしく。




