第40話 家族奴隷、購入
グラーバル奴隷商の面談室で、俺たちは購入予定の農家の奴隷たちと面談する。
面談室は、広く12畳ほどあったが、
置いてある家具は、テーブルと、3人掛けソファが2つのみとシンプルだ。
まさに、購入予定の奴隷と面談するだけの部屋だな。
俺たちがソファに腰掛けると、
オーナーさんが4組の家族奴隷を連れて入ってきた。
「お客様、お待たせいたしました。
こちらの左から、ベルコ一家です。 妻と娘が2人の4人家族でございます。
父親が、元冒険者ですので力だけはありますよ。
次に、タルス一家です。 妻と子供たちが6人と多ございますが、
幼いのは一番下の娘で、後の5人は働き手でございます。
次に、ミーナ一家です。 この家族は母と娘3人の女性のみの家族ですが、
全員、農業に従事していた経験がございます。
最後に、ロバート一家です。 妻と5人の息子の家族ですが、
子供たちはまだ幼く、労働力にはなりません。
以上でございますが、いかがでしょうか?」
奴隷たちは、全員が目に力がないな。
特に、女性たちはあきらめているようなところがある。
「相沢君、どう? みんな、農業できそう?」
「そうですね、グラーバルさん、全員合わせての金額っておいくらですか?」
「全員でございますか?」
オーナーさんが、少し驚いているな。
「そうですね、家族奴隷は、人数に関係なく一家族いくらと計算されます。
この場合ですと、ベルコ一家が金貨60枚。
内訳は、父親と母親で、それぞれ金貨20枚。
子供は例外なく1人、金貨10枚となります。
これで計算していきますと、
タルス一家が、金貨100枚。
ミーナ一家が、金貨50枚。
ロバート一家が、金貨90枚となり、合計、金貨300枚となります」
金貨300枚か、高いか安いかは別として、箱庭で暮らしてもらうのなら、
雑費を考えても妥当な値段なのかな?
「相沢君、どう?」
「木下先生、全員購入しましょう。
あそこはまだまだ余裕がありますから、大丈夫でしょう」
木下先生は、1回頷くと、
「では、4家族すべて購入します。
あと、手続きは他にも購入したい奴隷がいるので、
それを見てからでよろしいですか?」
「畏まりました、では、この4家族は部屋へ戻しておきますね。
お帰りの際に、これから選ばれる奴隷とともに手続きを行います」
「それで、お願いします」
木下先生の返事とともに、4家族の奴隷たちは面談室を出ていく。
大人たちは、全員不安そうにしていたが、子供たちは不思議そうにしていた。
「そういえば、家族奴隷って農業以外にもいるんですか?」
「ええ、ございます。
私どもの奴隷商でも、30組近くの家族奴隷がおりますから」
「30組とはまた、大変ですね~」
木下先生が、奴隷商側の心配をしているな。
まあ、確かに奴隷といえど商品なわけだし、管理とか衛生面とか、
食事とか大変なものなんだろうな……
「ですが、家族奴隷は新たに村を造るときなどに、
一気に買い手が付きますので、
この町のような辺境が、一番扱っている奴隷商の数が多いですね」
開墾か、一からつくるとなると、大変な苦労をするから奴隷を購入か。
「家族奴隷の中で、一番多い職業って何ですかね?」
「それはやはり、村人でございますね。
この辺境では、開墾が定期的に繰り返されておりますが、
成功例は、ごくわずか。
失敗すれば、村人全員が奴隷落ちになることも、珍しくありません。
半年前も、1つの村が魔物に襲われ壊滅し、残った村人全員が奴隷になりました。
この町にも孤児院はございますが、それはこの町で孤児になったものが優先です。
ですから、壊滅した村の子供たちは孤児院に入れず、奴隷になったそうです」
「は~、世知辛いですね~」
「でも、それは仕方ありません。
村が背負った借金などを返すためですから。
開墾のために借金をして、壊滅して借金が残り、
それを返すために、残った村人全員が奴隷落ち。
この辺境では、よくある話でございます」
なんて声をかけていいのか、分からないな俺は。
でも、日本でも借金で首が回らない人は良くいるけど、
奴隷にならないだけましか?
「では、次はどんな奴隷をご所望ですか?」
「女性単独の奴隷を見せてもらえますか?」
おお、今まで静かだった馬場が、声を出したか。
「女性奴隷でございますね、
では、ご案内いたしましょう。
数が多いので、どの奴隷が良いか選んで面談すればよろしいかと」
「では、それで」
そういうと、俺たちは立ち上がり、オーナーさんの案内のもと、
部屋を出て、女性奴隷がいる部屋へ連れていかれる。
女性奴隷しかいない部屋は、入って左側が大きな窓となっていて、
隣の部屋を見ることができる。
しかも、この窓、マジックミラーみたいになっていて、女性奴隷たちからは、
壁にしか見えないそうだ。
異世界の技術、すごいな!
「こちらから、窓越しに女性奴隷を見ることができます。
気になった奴隷がいましたら、お声をおかけください。
後ほど、面談室へお連れしますので」
「ありがとうございます」
俺たちは、窓から一人一人、女性奴隷を見ていく。
窓から見える女性たちは、くつろいでいるように見える。
「ん~、みんな緊張しているみたいですね」
「お分かりになりますか?
お客様が来ていることを、奴隷たちに知らせているので緊張しているのでしょう」
「なるほど…」
窓から覗いていくと、いろいろな女性たちがいる。
種族が違うのは勿論のこと、年齢も違いがある。
まあどんな女性奴隷を選ぶのか、馬場に任せて、
俺は、目的にあった女性奴隷を選んでみますか……
読んでくれてありがとう、次回もよろしく。




