第39話 グラーバル奴隷商
ブラシュ村か帰還して2週間が経過した。
この2週間の間、俺たちが行ったことと言えば、
まず、町の屋敷に帰ってきてから、冒険者ギルドへ依頼達成の報告を行う。
ギルドの受付で、依頼達成の報告をすると、
達成できるとは想定してなかったようで、大変驚かれた。
また、宝箱の開け方や中身の金貨のことを話すと、さらに驚かれた。
残念ながら、宝箱は開けて中身を取り出してしばらくすると消滅したと報告すると、
大変残念がられた。
どうやら、変わった開け方ということで資料を作りたかったようだ。
また、中身の金貨は、すでに元の持ち主が宝箱の所有権を放棄して、
冒険者ギルドのものになっているので、俺たちで山分けしてくれていいそうだ。
これは、俺たち全員が喜んだ。
何せ、1人金貨2137枚ずつだ、喜ばないわけがない。
そこに依頼の報酬として、1人金貨3枚が支払われる。
これで合計、金貨2140枚。
当分、遊んで暮らしていけるな!
さらに、箱庭での家整理で自分たち専用の家を決めていった。
それぞれ、大きな家や機能性重視の家、
2階建てや中には、地下がある家もあった。
みんなそれぞれの家を決めると、今度は区画整理だ。
メインの道路を決めてから、家を配置していく。
10人全員の家と村長のイザベラさんの家を配置し、
次に畑などの位置を決めていく。
しかし、畑は融合の時に、ある程度位置が決まっているので、
俺がすることといったら、畑の近くに農家さんの家を配置するぐらいだ。
必要な家の配置などを決めて、最後に、当初の目的であるクラスメイト達の家や、
迷い人などの家を配置して、村が完成した。
しかし、村というより町といった方がいい規模だな。
また、家に入れる家具やベッドなど、細かいものは入れていない。
それはこれから住むとなってから、増やしていくつもりだ。
以上のことを、この2週間かけて行っていたのだ。
そして、今日は、奴隷を購入する日だ。
しかも、冒険者ギルド推薦の奴隷商が何軒かあったので、
手分けして、みんなで使えそうな奴隷を購入していこうということになった。
今回、俺とともにこの『グラーバル奴隷商』に来たのは、
木下先生と馬場の2名だ。
おそらく、馬場が趣味に走らないように木下先生を監視に付けたのか、
木下先生と馬場の監視に俺を付けたのか、分からないが目的の奴隷を探すか。
「それで、相沢君はどんな奴隷を探しているの?」
「まずは、畑を任せられる奴隷ですね。 箱庭の畑で農業をしてもらいたいんで、
家族で奴隷でも購入する予定です」
「なるほど、私もそれで購入してみようかな……」
「で、馬場はどんな奴隷を購入するんだ?」
「勿論、メイドさん一択だ!」
「メイドさんねぇ~、確かに必要かもしれませんね」
「相沢君? あなたが趣味に走ってどうするんですか!」
「うんうん、ヒロキも男の子だな!」
なんか、木下先生の視線が痛いな…
馬場よ、俺はちゃんとした理由があるのだ。
決して、趣味に走っているわけではない!
「木下先生、メイドさんというのは行き過ぎですが、
掃除ができる人はほしいですね、空き家の手入れのために…」
「……そういえば、今は誰も住んでいない家があるんだったわね」
「そうです、その家の1週間に1回ぐらいでの掃除が必要かと思いまして」
「そうね~、それなら掃除が得意な人を購入してもいいわね」
「何だよ、ヒロキの趣味じゃないのか…」
「あのな馬場、メイドさんは奴隷商にはいないぞ?
メイドは職業だ、欲しいなら、雇うしかないんだぞ?」
「……それだと、毎月の給料がいるということか?」
「その通り!」
あらら、馬場が地面に両手をついて落ち込んでしまった。
しかし、こうもあからさまに趣味に走るとは……
まあ、奴隷をメイドに育て上げれば、奴隷メイドができるけど、
今の馬場に、そこまで手間暇をかけることはしないだろうな。
3人で、購入奴隷の話をしていると、目的の奴隷商にたどりつた。
……奴隷商も明るいうちから営業しているんだな。
しかも、店先はきれいに掃除がしてある。
「中に入りましょう~」
木下先生が、率先して内へ入っていく。
俺と馬場は、やはり少し気後れしていたのか、
木下先生が入ってから足を踏み入れた。
「へぇ~、中も清潔感があるわね~」
木下先生の言うとおり、清潔感があり受付にいる従業員も普通だ。
服装にも気を使っている感じで、女性でありながら誇りを感じるな。
店内を見渡していると、1階の奥にある扉が開き、1人の男性が近づいてきた。
「いらっしゃいませ、グラーバル奴隷商へようこそ。
私が、この奴隷商のオーナーであるサリマド・グラーバルです」
「初めまして、私はキノシタと申します。
こっちは、ヒロキとハジメです」
「キノシタ様とヒロキ様、ハジメ様ですね、よろしくお願いします。
それで、今日はどのような奴隷をお探しに?」
「はい、まずは不躾な質問で恐縮なのですが、こちらの奴隷商には、
農家の奴隷はいますか? それも家族でいるとありがたいのですが…」
「ふむ、家族ぐるみの、農家の奴隷ですか……」
オーナーさんが、腕を組んで考え込むと、すぐに受付の女性が近づいてきた。
「オーナー、農家の家族での奴隷は、現在4組がおります」
「ほう、4組もいたか、
ヒロキ様、うちには4組の奴隷たちがいるみたいですが、面談なさいますか?」
「はい、ぜひお願いします」
「キノシタ様とハジメ様は、どうなされますか?」
「私たちも付き添います。
その奴隷たちの料金次第で、他の奴隷の購入も考えているので…」
「畏まりました。 その奴隷たちを面談室に連れてきなさい」
「はい、オーナー」
そう言って受付の女性は奥へ消えていく。
「では、こちらへ。
面談室まで、ご案内いたしましょう」
オーナーさんを先頭に、俺たちは入り口から見て左側のドアの奥へ案内された。
読んでくれてありがとう、次回もよろしく。




