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相沢ヒロキ、異世界へ行く!  作者: 光晴さん


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第37話 最大の問題




「その、ある人とは……」


目の前のエルフの女性以外、誰もいない町。

その町の村長の家で、俺たちはこの町誕生の目的を聞いていた。


しかし、村長がいるのに町って……

ここは町長じゃないのかってツッコミが入りそうだな。


「それは、異世界人たちです」


「……それは召喚された異世界人の人たちですか?」

エルフの女性は、悲しい表情で首を振る。

「違います、私が言ってる異世界人は、この世界へ迷われてきた方々です」


「…すみません、召喚以外でこの世界へ来れるんですか?」

「松尾様、通常は来ることはありません。

しかし、勇者召喚が行われた年には、必ず何人かの迷い人が現れます。

私たちは、その人たちを保護していたのです」


「それで、この町ができたと…」

「この町も最初は、村程度の規模でした。

ところが、異世界人の保護を初めて世界中を旅すると、

たくさんの迷い人に遭遇しました。


中には、亡くなられていた方もいましたが、

大半が奴隷になっていて、過酷な生活を送られていたそうです」


俺たちは、同じ異世界人の人たちの境遇に、声も出なかった。


「そこで、そのような異世界人を、迷い人を保護しようと、

空間魔法で箱庭を造り、ここに村を造って保護していったのです。


始めは手探りでしたが、異世界人の数も増え村が町への規模になるころ、

この箱庭を出て、外の世界で暮らしていく人たちも現れました。


そこで、外へ旅立つ人たちに同じ境遇の異世界人たちをこの場所へ、

この村へ保護して連れてきてほしいとお願いをして送り出しました。


この世界へ迷い込んだ異世界人を保護したり、

送り出したりを繰り返しているうちに、

この規模の町が出来上がりましたが、

今現在は、誰もいない状態となっています」


「そうでしたか。

私たちのように召喚された人たちだけが、

この世界に来ているわけではないのですね」


松尾先生は、この村というか町の誕生理由に、共感しているようだ。


「ところで、皆様は、何故迷い人が現れるかご存知ですか?」


「そういえば、さっき勇者召喚が行われた年にはって言ってましたね」

今まで黙って聞いていた青島が、思い出した。


「はい、勇者召喚は別の世界の人をこの世界へ連れてくる魔法です。

よく言われる別名が『誘拐魔法』ですね。

その召喚魔法が使われると、一時的に世界と世界の間に穴ができます。


詳しくは、勇者のいる世界の一部を勇者とともに、

こちらの世界へ連れてきます。


そして、勇者だけを残し、勇者がいた世界の一部が揺り戻しとして元の世界へ戻る。

その時の揺り戻しの反動に、関係のない異世界人が巻き込まれ、

この世界のどこかに放り出されるそうです。


放り出された異世界人は、召喚陣による召喚ではないため、

言語翻訳もスキルもなく、言葉も通じない、

力もない状態で生きていかなくてはなりません」


……それって、どうしようない状態だな…

「それは、死ねと言っているようなもんだな…」


俺たちに説明してくれているエルフの女性も、頷いて肯定する。


「この村を造った空間魔法の使い手も、偶然出会った迷い人から聞いたそうです。

こちらの世界に来てからのことを……


それを聞いてから、世界中にいるであろう迷い人を保護するため、

旅をしては、迷い人を見つけて、この村に保護し助けていきました。


それと同時に、世界中でおきている勇者召喚の実情も、

勇者や召喚された異世界人に報告し、

迷い人保護と、勇者召喚の禁止へもっていこうとしました」


「……勇者召喚の禁止は無理だったと」


「はい、魔王がいる限り、

我が国が危険に脅かされる限り、

我が国の発展のために、と、勇者召喚を止めることはできませんでした」


…まあ、俺たちが召喚されている時点で、今もって禁止に至っていない。

となれば、迷い人保護をどうするかだけど…



「……どうやら、迷い人の保護もうまくいってないんですね」


「やはり、相沢様には分かるようですね。

この町に人がいないのは、迷い人が無くなった訳ではなく、

迷い人のことが、忘れられていったからなのです。


勇者召喚の弊害、迷い人の保護、それは、各国にとって莫大な負担となり、

さらに、この箱庭を造った方がお亡くなりになったこともあって、

世界から、迷い人保護の意識は無くなりました。


それも、急激に。


それでも、この町を出た人々は迷い人、異世界人の保護を続けようとしましたが、

勇者召喚の旅に見つかる迷い人の多さに、対応できなくなり、

今の状態になりました」



「お城の図書室の本の中にも、迷い人のことは記されてなかったから、

今はもう本当に忘れ去られたってことだろうね……」


青島は、お城の図書室の本を全部読んだって言っていたから、

本当にそうなのだろう。

しかし、迷い人か……


「今こうしている時も、迷い人は苦しんでいるのかな…」

藤倉が、俯いて呟いたが、泣いているようだな…


「しかし、迷い人は後で考えるとして、

このこと、冒険者ギルドに報告できますか?」


「そうね~、このことを公表したら、

今ある国は、勇者たちや異世界人の報復を受けかねないわね……」

木下先生も、どうしたらいいか分からないようだ。


「俺としては、とりあえず宝箱の中身の金貨だけの報告でいいと思います。

迷い人に関しては、勇者や異世界人にだけわかるように知らせて、

保護をお願いする方法もあるでしょう」


「う~ん、迷い人のことは、今の私たちではどうしようもないものね…」



迷い人の保護か、どうしたらいいんだろうか…








読んでくれてありがとう、次回もよろしく。


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