第36話 そこにある不思議
ブラシュ村にある宝箱の底から続く縦穴。
ライトの魔法を取り込んだゴーレム2体をお供に、梯子を下へ降りて行く。
長い梯子を下りることは、かなりの体力を消耗するが、
レベルが上がった俺たちは、難なく降りて行っている。
「馬場君、上を向いても、私たちの下着は見えないわよ?」
「……木下先生、冷静に注意すると馬場が可哀そうですよ」
俺が、木下先生に注意すると、木下先生は「そうなの?」と首を傾ける。
現に、注意された馬場は、女性陣の冷たい目にさらされていた。
1つの梯子をみんなで降りているのに、なぜこんなことになるのか…
とにかく、梯子を降りて行くとようやく地面に降り立った。
全員が地面に降りたところで、
周りを確認するとそこは10畳ほどの部屋であることが分かった。
「梯子の先にある部屋か……しかし、なにもないな」
俺たちが、部屋の中を探っていると、梯子の側に扉を見つける。
「木下先生、ここに扉を見つけました」
扉は、ごく普通の扉だがこの部屋で目立たないように黒い扉にしてあった。
「この部屋の中で、目立たないように黒くしてあるようね……」
安西が、扉を調べてわざと黒くしてあることに気づく。
「と、言うことは、この扉の先に何か重要なものがあるのね……」
松尾先生は、扉のノブに手をかけ、ゆっくりと扉を開ける。
扉を開けた先に見えたもの、それは家だった。
見えたのは、家だけじゃない、
俺たちが、周りを見てみると、いろんな家が建ち並んでいる。
大きな屋敷から、平民が慎ましやかに暮らす家まで……
「……ここは、どこかの町か村なのか?」
俺は少し歩いて、周りを確認するといろんな家が建っているのはわかるが、
人が、誰かが住んでいる気配がしなかった。
「誰も、いないみたいだな……」
一軒一軒玄関を開けて、中に誰かいないか確かめたが、誰もいなかった。
「こうも誰もいないと、家の見本市みたいだな」
「そんな感想をもつのは、ヒロキぐらいだろ…」
「ケンジだって、同じ意見だろ?」
「まあな~」
そんなケンジの軽い返しに、俺は溜息をついていた。
「でも、いったい誰がこんな町を建設したのか……」
安西の疑問はもっともだ。
「安西、その答えは、あの人が答えてくれると思うぞ」
俺は、いつの間にか現れた女性を見ながら安西に声をかける。
俺たち全員が、その女性を見ると、女性はおもむろに頭を下げた。
「皆様、ようこそ。
私の後について来てください。 村長の家へご案内します」
村長の家か、ということはここは村なんだな……
いろいろな家が建ち並ぶ通りを、歩いて通り過ぎると、
周りとは違う一軒のログハウスにたどり着いた。
そして、そのまま玄関から中に通され、食堂に連れてこられる。
「皆様、まずはお座りください。 飲み物を入れてきますね」
女性はそういうと、キッチンへ入っていった。
俺たちは、女性の進めてくれた通り、椅子に座って待つことに。
「なあ、ヒロキ。 気が付いているか?」
俺の隣の席に座った馬場が、話しかけてくる。
「ん? 何をだ?」
「おいおい、気づいているんだろ?
あの女性がエルフだってことに……」
「そりゃあ、あの耳を見れば、誰でも気が付くだろう」
「しかし、エルフって貧乳が定番だったけどあの女性は大きかったな……」
…お前、どこに注目してんだよ!
それに、今のセリフは周りに聞こえないようにしろよな……
馬場、周りを見ろ!
女性陣全員が、お前を蔑んだ冷たい目で見ていることに……
「お待たせしました」
そして、トレイにコップに入った飲み物を運んできた。
「あ、お手伝いします」
そういうと、トレイからコップを取りそれぞれに配り始める山本。
「それで、質問がいろいろとあるんだが、いいかな?」
飲み物を配り終えて、山本と一緒に椅子に座ったところに質問してみる。
「はい、そのためにこの家へ呼んだのですから構いません」
女性は、凛としてしっかりと答える構えになっていたので質問してみる。
「まず、ここはどこなのか教えてください」
女性エルフが少し笑う。 ……なんかかわいいな。
「それは、もうお分かりになっているのではないですか?」
質問した俺に対して、言ってくる。
「……どういう意味ですか?」
「言葉を変えましょう、相沢ヒロキさん、あなたなら分かっていますね?」
…このエルフ、俺の名前を言ってきた。
「あれ? 俺たち自己紹介したっけ?」
「違うわよ馬場、彼女は鑑定持ちよ、私たちを鑑定したのよ…」
女性エルフは、にっこりと笑うと、頷いて安西の言葉を肯定する。
それから視線を俺に向ける。
「箱庭、ですよね?」
「そうです、ここは箱庭という空間魔法で作られた場所です」
「箱庭! というか、ヒロキ以外にも空間魔法が使える奴がいるのか?!」
「いいえ、現在、この世界で空間魔法が使えるのはヒロキさんのみです」
「……どういうことです?」
「ここの箱庭は、500年前の勇者召喚で召喚された異世界人の人によって、
造られた箱庭なのです」
なるほど、昔の人の箱庭なら、作った人は亡くなったってことか。
「500年前!」
「はい、この村は500年前に誕生しました。
ある人たちを守るために……」
読んでくれてありがとう、次回もよろしく。




