第32話 盗賊の末路
「ずいぶんな若造が、俺たちのアジトに乗り込んできたな…」
古い砦をアジトにした盗賊たちの頭が、手下1人とともに
威勢のいいセリフを言っている。
暴徒鎮圧用ゴーレム2体が、戦闘態勢のまま待機し、
俺はゴーレムの後ろで、対峙していた。
他の冒険者たちは、囚われてる人がいないか捜索するとのことで、
この盗賊の頭がいる部屋に入る前に、分かれた。
「他の手下は全員倒しましたので、降伏してください」
俺のセリフを聞いて、盗賊のお頭と手下は笑い出した。
「クックック…、久しぶりにそのセリフを聞いたぜ。
小僧、お前、異世界人だろう?」
「ええ、そうですけど…」
「だろうな、盗賊を捕まえようとしたり、降伏させようとするのは、
この世界の奴なら、まず、考えねえからな」
「そうっすね、盗賊を殺してステータスカードを持って行きゃ、
盗賊討伐の賞金は出るっすから…」
「クックック、盗賊生かすことが後々どうなるか、知らねえのか?」
そう言いながら、盗賊たち2人は、武器の剣を構えている。
投降する気は、全くないのね…
「鎮圧開始!」
その命令で、ゴーレムが動き出し盗賊2人へ飛び掛かる。
盗賊たちも、ゴーレムの攻撃は予想していたようで、防ごうと戦闘態勢をとった。
「舐めるな! ゴーレムごときで俺様をどうにかできると思うんじゃねぇ!」
ゴーレムの攻撃を素早くかわしながら、ゴーレムに攻撃を加える。
しかし、ゴーレムの盾に阻まれ攻撃を当てることができない。
「チッ、厄介な盾だな…」
「ギャ!」
もう一方の盗賊は、お頭ほど強くなかったようで、
ゴーレムの攻撃を受けて、感電し気絶してしまった。
「クソ、1対2かよ…」
じりじりと追いつめられるお頭。
そして、とっさにお頭は攻撃の対象を俺に変えて攻撃をしてきた。
「ゴーレム使いは、弱いってな!」
しかし、すぐにゴーレムが間に入り、俺を盾で守ると、
攻撃してきたお頭の後ろから、もう1体のゴーレムによって攻撃される。
「ギャン!」
大きな感電音とともに、お頭の叫びが室内に響き、気を失い倒れる。
「…鎮圧完了、生死は外の手下と合わせて冒険者の人にゆだねるか」
部屋の中にあったロープを使って、お頭と手下の2人を拘束すると、
ゴーレムの担がせてアジトの外に向かう。
アジトの外では、ロープで拘束された盗賊の手下が1か所に集められて、
待機している。
そこへ、アジトから出てきた俺とゴーレム2体は、
担いできたお頭と手下を、同じように1か所に集めた場所に置いておいた。
「これで、後は冒険者の人たちを待ってどうするかだな」
盗賊たちのアジトの外で待っていると、1時間ほどして冒険者たちが戻ってきた。
それも、3人の女性を連れて。
「えっと、その人たちは?」
「ああ、彼女たちは捕まっていた女性たちだ。
どうやら貴族の女性たちでな、身代金目的で、手を出していなかったようだ」
「へぇ~、手を出さなかったんですか」
「盗賊の中にはたまに、身代金目的で貴族の女性をさらう連中がいるが、
それがこいつらだったようだな…」
ゴーレム4体に囲まれ、1か所に集められている盗賊を、
3人の女性が睨みつけている。
側に冒険者がついて、護衛しているようだ。
「それで、捕らえた盗賊はどうします?」
俺が冒険者のリーダーに尋ねると、冒険者のリーダーではなく、
捕まっていた貴族の女性の1人から怒られた。
「何を言っておる! こんな連中、こうするのが一番じゃ!」
【グリム・リーパー】
貴族の女性が、少し長い呪文の後、魔法名を言うと、
盗賊たちの首が、いっぺんに刎ねられる!
「うわっ!」
「なっ!」
「「ひっ!」」
盗賊たち全員の首が刎ねられたため、辺りには盗賊の首と血が飛び散っている。
やってしまった貴族の女性も、ばつが悪そうに渋い顔だ。
…この貴族の女性、後先を全く考えずにやらかしたようだ。
とりあえず、俺は、土魔法で盗賊たちの亡骸の下の地面をへこませ、
1mぐらい陥没させる。
すると、盗賊の死体がある場所がすべて1m下へ移動し、
盗賊の死体から流れる血も、その穴の中に広がるだけで溢れてくることはなかった。
後は、ゴーレムを使い盗賊の跳ね飛ばされた首を穴の中へ放り込んでいく。
そんな、作業をしていると冒険者のリーダーが俺にお礼を言ってくれた。
「すまんな、後始末をさせて…」
「いえ、やってしまったものはしょうがないですし、
それよりも、ステータスカードの回収はお願いします」
「ああ、それは今仲間がやってくれている」
「それで、あの3人の女性はどうするんですか?」
「お嬢様の馬車に乗せて、次の町を目指す予定だ。
君たちもどうかな? 次の町まででいいんだが…」
冒険者のリーダーは、申し訳なさそうに聞いてくるが、
「俺たちは、ブラシュ村へ向かっているんですよ。
ですから、一緒に行くことはできません…」
「そうか、ならば仕方ないか…」
冒険者のリーダーは、諦めてくれたようだ。
盗賊のステータスカードを集め終わり、盗賊の死体を穴に入れ終わると、
冒険者たちが、火の魔法で死体を焼却する。
どうやら、このままだといずれアンデッドになってしまうそうだ。
…この盗賊たちがアンデッドになったら真っ先に狙われそうで嫌だな~
すべてを燃やし尽くして、土魔法で埋めると、全員で帰還する。
盗賊のアジトへ来た時と同じように、10分ほどでみんなと合流すると、
事の顛末を聞かせた。
みんな一様に渋い顔をして、やらかした貴族の女性を見ている。
貴族の女性も、自分がしでかしたことが分かっているのか、
プイッと顔をそらし知らんぷりだ。
まあ、若干1名、その女性のしぐさに萌えていたようだが…
これからのことで、冒険者たちと話し合った結果、
ブラシュ村で馬を調達するまでは、俺がゴーレム馬を貸し、
馬車2台で進むことになった。
貴族の女性たち3人も、お嬢様2人とお付きの女性も了承したので、
俺はゴーレム5体を戻し、ゴーレム馬を作りだしお嬢様の馬車につなげた。
「それじゃあ、出発しますか」
こうして、馬車2台でブラシュ村を目指して行く。
読んでくれてありがとう、次回もよろしく。




