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相沢ヒロキ、異世界へ行く!  作者: 光晴さん
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第3話 脳筋はいい人!




夜が明けて、今日も街道を馬車が進んでいく。

ただ、今日の馬車の中は2名の女性のおかげで空気が悪い。


「おいヒロキ、木下先生と安西の奴どうしたんだ?

あそこまで落ち込まれると、どうしていいか分からないんだが…」


俺のクラスメイトで友達の堂本 健二が、いたたまれなくなって声をかけてきた。

俺も馬車の端で落ち込んでいる2人を見て、苦笑いを浮かべるしかない。


「たぶん2人は、人生の理不尽さに気が付いたんだよ…」

昨日の寝る前のやり取りは黙っておこう。

「確かに、何か悟ったようにも見えるな…」



「皆様、明日の夕刻までには目的地の『ゴージナ辺境伯領』に

到着する予定です」


「あの、ここに来るまでいくつかの町と村を見かけたんですけど

何故、寄らなかったんですか?」

副担任だった松尾先生が、落ち込んで使い物にならない木下先生に代わって質問する。


「まず、王都近くの町や村は寄る必要がなかったためです。

次に、昨日の野営地の手前にあった村によらなかったのは

皆様を守るためです」


御者さんのその言葉を聞いて、みんなが引いている。

「そ、それはどういう…」

馬車の中で本を読んで時間をつぶしていたクラスメイト、青島 進一郎が

恐る恐る聞いてみた。


「…皆様は、お城で魔王封印を拒否された時、気づかれましたか?」

皆の中で俺を含めて何人かがハッとする。



「お城にいる者たちの大半が、

魔王封印を拒否されたあなた達への態度を変えました。

そのため、この3か月間ほど窮屈な生活ではありませんでしたか?」


確かに、あからさまに俺たちに罵声をあびせるものや

ちょっかいを出すものはいなかったが、勇者たちとの格差は感じていた。

態度が変わらず、さらに気遣ってくれるようになったのは騎士団長周辺だけだった。



「王都からすぐの町や村は、王領なので心配はないのですが

昨日の野営地手前の村からこちらは、

皆様を疎ましく思っている貴族様の領地なのです」


「…もしかして、俺たちを?」

声がうわずっているケンジ。


「お考えになられていることはないと思いますが、

まさかがあるため、ゴージナ辺境領まで町や村に寄らないで向かっているのです」


驚いたな、魔王封印に協力しないだけでそこまでするのか?

「私たちを始末して、何のメリットがあるんです?」

「おそらく、魔物の所為にして勇者様方をたきつけるためでしょう」


…い、生き残るのも命がけかよ…




ますます馬車の中が暗くなったとしても、馬車は目的地へ進んでいく。

「あの御者さん、ゴージナ辺境伯様は俺たちのことをどう思っているんですか?」


他のみんなも、御者さんの返事を待っている。


「ご安心ください、私たちの主であるベルモンド・ゴージナ様は

お城の騎士団長様とは、騎士学校以来の悪友でございます。

騎士団長様が最も信頼しておられますから、今回の事も頼まれたのだと思われます」


「では、信用していいんですね?」

「はい、それに皆様が私どもを信用できないとなれば

この国を出ることも1つの手ではありますよ」


「わかりました…」

一応、信用はしておこう。

でも、警戒は怠らないほうがいいか…



それから3時間ほど馬車で進んでいくと、俺は何かを感じた。

それは、誰かにこちらを見られている感覚。

そして、こちらを見ている誰かが場所を移動している感覚…


「! これが『気配察知』と『空間魔法の空間認識』か!!

御者さん、馬車を走らせて! 敵だ!!」


急加速する馬車について行けず、馬車の中で転げる皆。

「な、なに?!」

「いっ、いったい何が!」


俺はみんなに状況を説明する。

「先生、みんな、敵の襲撃だ!」

「しゅ、襲撃?! 何が襲ってきたの?!」


俺たちは、幌の隙間から外の様子を確認すると

馬に乗った盗賊が、全速力でこちらに迫ってきていた。

「と、盗賊か?」



馬車の全速力と、馬を操る盗賊の速度、どちらが早いかといえば盗賊だ。

しかも、馬車を引っ張っている馬は負担が大きいためこのままでは逃げ切れない。


「せ、先生、私たちどうすれば…」

震える声で木下先生や松尾先生に聞く、女子生徒の山本 恵里佳。

自分のアイテムボックスから杖を出して、迎撃しようとする青島。


「や、山本さん、生きたければ、今自分にできることをするしかないよ!」

そう言って、幌をめくり杖を盗賊に向けて魔法を放つ!


「みんなも、できることをして生き残るのよ!」

そう木下先生に言われて、おぼつかない手で盗賊を何とかしようとする。


俺はといえば、


【宝石生成】


で、宝石を2つ作り出し錬金術を行使するため、指先にで魔力をこめて

命令を刻んでいく。 

激しく振動する馬車の中で、こんな繊細な作業を強いられるとは……

異世界、なめてたな!



魔力枯渇で3人ほど倒れた時、俺の作業が終わった。

「よし! みんな、攻撃をやめてくれ!」

疲労を見せる皆が、俺を見る。


俺は、すぐに馬車から森に向かって持っていた宝石2つを投げると

疲れた顔をした安西に怒られる。

「相沢! 盗賊がすぐそこまで来てるのよ! 攻撃止めてどうするのよ!」


俺は、宝石を投げた森を見つめながら

「もうすぐ援軍が……来た!!」

俺の声にみんなが反応し、森の方角へ顔を向ける。



ドガァァァン!

と大きな破壊音とともに、森の中から飛び出してきたものは

「「「騎馬武者っ!!」」」


黒い大きな馬にまたがり、これまた大きな槍を振り回しながら駆けてくる

赤い鎧を纏った騎馬武者が、近くを走っていた盗賊を

振り回した槍で、馬の首ごと上下真っ二つにする。


その盗賊の死とともに、形勢は逆転、盗賊たちは狩る側から狩られる側へ変わった。

その光景を、あ然としながら眺めている俺以外の全員。


「御者さん、今のうちに逃げましょう!」

「は、はい!」


馬車を引く馬に、御者さんが懐からポーションのようなものを出しかけると

出発する。

走っていく馬車の後ろでは、

盗賊と騎馬武者の一方的な戦いが繰り広げられていた。







この後は不定期更新となります。

なるべく早く更新しますので、お待ちください。


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