第27話 箱庭の開拓開始
次の日、皆、思い思いの箱庭へのドアを用意するみたいで、
それぞれに町を散策しながら、探していた。
で、俺はというと、箱庭である作業をしていた。
それは、村を作るにあたっての整地作業だ。
俺が作った箱庭は、東京都の半分の大きさがあるみたいなんだが、
人が村を造れそうな場所は、最初に入ってきた草原地帯しかない。
後は、林、森と続き丘や山が続いている。
遠くに見える山なんかは、標高何千メートルだ?
と疑問に思うほどの高さのある山なのだろう。
山頂には、雪が見えるからな…
しかし、この箱庭が自然豊かなのは、見ていて分かる。
…本当に、地球の日本に帰ってもこの箱庭に来れるといいな~
おっと、景色に見とれている場合ではない。
皆で、暮らしていける村を建設できる場所を確保しなければ…
俺は、地面に手を当てゴーレムの核を作り出す。
【宝石生成】
そして、俺の手には、手のひらサイズの宝石が生まれた。
「…宝石が作れるってことは、この地面は本物の土ってことだよな。
空間魔法の異空間創造…
ある意味、神の御業だな…」
俺は、手のひらにある宝石に魔法陣を刻みながら、
改めて空間魔法のチートぶりに感心していた。
さらに何個か宝石を生成し、魔法陣と命令を刻むと地面に置きゴーレム化させる。
地面の周りの土を巻き込み、核を中心にゴーレムになっていく。
いつも見る光景だけど、まさに生命誕生を見ているようだな。
そして、そのゴーレムたちを使い草原の一部を村にするため整地させる。
「ゴーレムも想像で、いろんな形になるんだな…」
俺の目の前で整地しているゴーレムは、ブルドーザーに近い形をしている。
力強く、草原に生えている草花をゴリゴリひっくり返して整地していく。
そして簡易ながらも、あっという間に整地が終了する。
「1時間で整地が終わってしまった…
もう、皆、どんなドアを自分専用にするか選び終わったかな…」
ゴーレムを宝石に戻して、空間収納にしまうと
箱庭から外に出るため、出入り口を造り俺は外に出ていく。
箱庭から外に出ると、そこは屋敷の俺の部屋。
窓からは、夕日の明かりが部屋の中を照らしていた。
「いつの間にか、夕方か。 夕食の準備をしないとな…」
今日は何にしようか、と思案しながらキッチンへ向かう。
「あれ、今日は松尾先生じゃなくて木下先生ですか?」
エプロンをつけた木下先生が、野菜を洗っている。
俺もキッチンに入り、エプロンをつけて手を洗う。
「それで、何を作る気なんですか?」
「唯一、私が作れる料理、ポトフです」
木下先生、ポトフが作れるなら他の料理も作れるようになりましょうよ…
俺はポトフの材料をそろえながら、そう思ってしまった。
「相沢君、ソーセージってこの世界には存在しているの?」
「勿論、存在してますよ。
勇者召喚で連れてこられた異世界人が、作り方を研究したみたいで
店で買えるソーセージは、俺たちの世界のものと変わらないですよ。
寧ろ、この世界の物の方が美味しいかもしれませんね」
木下先生は、笑顔になって
「それは、楽しみね」と、喜んでいる。
料理を始めると、すぐにある事実に気づく木下先生。
「そう言えば、コンソメはどうしましょうか…」
やっぱり気づいてなかったのか…
「先生、この世界にコンソメの素はありませんから、
昨日、松尾先生が作っていたスープの出汁を使いましょう。
味はコンソメに近いですから、少し整えるだけで美味しいポトフができますよ」
「よかった~、今日香ちゃん様様ね」
「今日香ちゃん、ですか?」
「そうよ、松尾先生の下の名前が今日香だからそう呼んでいるのよ」
へぇ~、木下先生と松尾先生って仲良かったんだな…
「先生たちは、友達同士みたいですね」
「プライベートまで、先生じゃないからね~
……このお鍋に入っているのが、出汁みたいね」
スープを鍋から、ポトフを作る鍋へ移し
切った野菜を入れて煮込み始める。
「このコンロ、魔道具みたいね。
火の調節ができるようになっているなんて、便利ね~」
そのコンロの魔道具も、異世界人の作った物だ。
どうやら、過去に召喚されていた異世界人たちはいろんなものを
この世界で再現している。
…みんな、苦労したんだろうな~
「先生、さっき冷蔵倉庫からソーセージを出しておきましたから、
それを使って下さいね」
「ありがとう相沢君。 ……これがこの世界のソーセージね」
まじまじと見つめる木下先生。
あのソーセージの材料は、フォレストボアっていう森にいる猪の魔物。
その肉を使って作られている。
味は、豚肉に近く、とっても美味しい!
また、ここの冷蔵倉庫にある肉類は、こだわって集めたようで
最高のものがそろっていた。
「ソーセージを入れて、さらに煮込んで出来あがり~」
「先生、鍋に入れたソーセージの何本かを半分に切ると、
肉汁がスープに溶けて、さらにおいしくなりますよ」
「ホント? …でも全部を半分にしないのはなぜ?」
「全部半分にしちゃうと、ソーセージ自体の美味しさを味わえないでしょ?」
「なるほどね~」
木下先生は3本ほど半分に切って鍋に入れ、
他のソーセージはそのまま入れて蓋をしていた。
「これで、5分ほど煮込んで出来上がり~
相沢君、後は何を作るの?」
「後は、パンやドリンクを用意して……
って、それより木下先生は、自分専用のドア、用意しました?」
いきなり話題を変えて、気になっていることを聞いてみた。
「勿論、注文しておいたわよ。
流石に家具屋さんにもドアだけってなかったから、頼んだの」
「注文したってことは、出来上がりはいつ頃ですか?」
「明日にはできるそうよ、
ドア全体で金貨10枚ですって! 高いわね~」
確かに高いかな…
でも、オーク討伐の報酬があるからいいかなと思うんだけど、
先生の感覚は違うみたいだな…
皆はどんなドアを、自分専用に選ぶのかな?
読んでくれてありがとう、次回もよろしく。




