第26話 箱庭の使い道
名前 相沢 弘樹[ヒロキ]
年齢 18歳
レベル 104
冒険者ギルドランク 銅-
オーク討伐で狩ったオークを4日に分けて治めた後、
俺たちの冒険者ギルドランクは4ランクも上がった。
しかも、レベルも全員100を超え、体力、魔力ともに少し余裕ができた。
これは、俺たちと一緒にオーク討伐をしたフィリアにも影響して、
レベルが100を超えました! と、飛び跳ねて喜んでいたのが可愛かったね。
そんなフィリアとも別れた。
まあ、臨時のパーティーだったし、当たり前なんだけどね…
でも、オーク討伐から1か月たった今でも、このギルドカーを見るたびに
ニヤニヤが顔に出てしまう。
さて、今俺たちは次の目標のために行動を起こしていた。
まず、俺たちがしなければならないこと、それは、
自分たち専用の『箱庭』への扉を作ること。
ある物語の青いネコが良く使っていた、何とかドアである。
みんなが、箱庭に移動するたびに俺がいちいち出入り口を作るのも
めんどくさいのと非効率ということで、自分たち専用の扉を作るのだ。
「それで、どんな扉でもできるの?」
夕食後の話し合いの場で、松尾先生から出た質問だ。
「ええ、できます。
お城で付与魔法についても勉強していましたから、自分用の扉があれば、
それに空間魔法を付与して、出入り口の完成です」
「でも、それだと誰でも入れるようにならない?」
木下先生の言うことももっともだ。
「ええ、ですから魔力登録をして使用者専用にするわけですね。
これは、ギルドカードにも使われている技術ですよ」
みんな、自分のギルドカードを取り出し眺めているな…
「ギルドカーには、名前、年齢、持ち主のレベル、
そして、持ち主のギルドランクが表示されますよね?
さらにカードに流した魔力が持ち主と分かれば、
さらに詳細なステータスが表示されます。
この技術が、付与魔法の1つの魔力登録です」
おや、木下先生と松尾先生が難しい顔をしているな…
あ! なるほど……
「それから、カードの表示項目で簡単に見られたくない項目がある場合は、
カードの表示されている項目に指をあてて、
別の項目に変えることもできますよ」
お、2人の先生ともにカードに指をあてて項目変更をしているな。
あ、笑顔になった。
どうやら無事に、項目変更ができたようだ。
「でもヒロキ、項目変更って必要あるのか?」
…空気読まねぇな馬場、女性陣が睨んでいることに気づけ!
「それは、専門職依頼を受ける時なんかは便利だろ?
職業なんかを表示させて『薬師』とか『治療師』とかにしておけば、
カードを見るだけで受けられるからな」
「なるほど、確かに便利だな!」
…なんとか、馬場の命を救えた…
女性に年齢の質問はタブーだな…
「え~、魔力登録技術に関してはわかりましたか?
この技術を扉に付与しておけば、勝手に使われたとしても
持ち主以外は、ただの扉にしかならないというわけです」
「確かに便利だけど、扉を持ち歩くのって大変じゃない?」
「木下先生、そのための『アイテムボックス』でしょ?」
「あ!」
…木下先生は,素で忘れていたみたいだな。
天然か、年れ…コホン!
考えていただけなのに、読まれたように睨まれた!
「箱庭には、俺たちそれぞれの家を建てる予定ですから、
それぞれで扉を持っていた方が、便利ですからね」
…どうやら、みんな納得してくれたようだ。
「さて、ここでみんなには、
何故、俺がこんな提案をしたのか話しておこうと思います」
みんな、俺の真剣な雰囲気を感じ取ったのか真面目に聞く姿勢になったな。
「俺たちは、戦力にならないスキル持ちでした。
それだけで、国のボルニア王国側の態度が変わり差別するようになった。
…差別というより、あれは区別だったのでしょう。
では、なぜ態度を改めたのか。
それは、魔王封印後のことを考えていたからでしょう」
松尾先生が頷いている。
「そうね、それは私たちも考えていたわ」
続いて木下先生も頷いている。
「おそらく王国側は、勇者たちの力を戦争に利用しようとするでしょう。
もしくは、新たなる領土拡大のために未開地へ投入するか」
「でも、王様たちは魔王封印後は、私たちをもとの世界に帰すと…」
藤倉は不安になっているようだな…
「たぶん、その帰すという条件をちらつかせて、
自分たちの要求をのませるつもりでしょうね。
だから、戦力にならない俺たちが邪魔だった」
「でも、それなら、僕たちを人質にとれば…」
「青島、今人質にしてしまったら、勇者たちが反乱を起こすだろう?
だから、俺たちを放逐という形にしたんだよ。
しかも、騎士団長が助けることを見越してな」
青島も、苦い顔をしているな…
「狡猾な人物が、王国側にいるんですかね?」
「おそらくな…」
「でも、俺たち、ここに来る道中襲われたじゃねぇか」
「ああ、それは、この計画を知らなかった貴族の一部が勝手に行動した結果だ。
だから、その後は手出しされてないだろ?」
馬場は、確かに…と言って納得していた。
「王国側が、俺たちを放置している理由は、おそらく、
戦う力のない俺たちをいざという時、人質として使うためでしょう。
それも、魔王封印直後にね…」
「…なるほど、魔王を封印して帰国してみれば、
俺たちを人質にして、次の要求を、というわけか…」
ここまで説明すれば、ケンジでも納得できたみたいだな。
「それで、まだ、相沢の目的を聞いてないけど?」
「安西、もう分るだろう?
勇者たちが王国に裏切られた時、逃げ込めて隠れられる場所……」
「そうか! 箱庭!」
「そう、みんなの、クラスメイト達の緊急避難場所として、
箱庭を利用しようと思ってね。
それで、箱庭の存在とそこに造る村を提案したんだよ」
みんな、驚いているようだな。
「相沢君は、先のことまで考えていたんだね…」
「青島は、俺を何だと思っているんだよ…」
まったく、俺だっていろんなことを考えているんだぞ?
「でも、避難場所にしたとして、その後は?」
松尾先生、もっともな質問です。
「その後は、俺たちが日本へ帰るための
情報収集をするための拠点にしようと思います」
「…この国で情報が集まるかな?」
「それなんだがな山本、実はこの世界にはいろんな国で過去に、
勇者召喚が行われていたんだよ。
まあ、魔王が復活するんだから当たり前だよな。
で、その召喚された勇者たちのほとんどのものが、
帰還出来ているみたいなんだ。
だから、情報収集だけなら他の国でもできそうじゃないか?」
「確かにそうね、何もこの国にこだわる必要はないのかも…」
山本も納得してくれた。
「まあ今はとにかく、勇者たちが魔王を封印するまでに、
箱庭の充実に頑張っていこうということです」
「相沢君の考えがよくわかったわ、
私たちはその提案に賛成したんだから、その考えにも賛同するわよ」
木下先生が、熱く賛同してくれた。
「さあ、みんな、勇者たちが魔王封印を成し遂げるまでに
箱庭を充実させて、避難してきた勇者たちを驚かせてやりましょう!」
「「「はい!」」」
うん、みんなやる気になってくれてよかった…
読んでくれてありがとう、次回もよろしく。




