第23話 異空間創造!
ゴルダーの森を、町のある北へ向けて歩いていた俺たち。
オークキングを討伐した影響か、森の中を進んでいるにもかかわらず
オークを見かけることもなく、他の魔物も見かけなかった。
確か、ゴブリンも異常繁殖していたはずなんだが……
そんな疑問を考えていると、後ろから木下先生が声をかけてきた。
「そういえば相沢君、あの時言っていた助かる方法って何だったの?」
オークキングを倒す前にそんなことを言っていたな…
まあ、隠すことでもないし、いいかな。
俺は立ち止まり、前方に左手をかざすと呪文を唱える。
【異空間】
すると、俺の前に高さ3メートル、横3メートルの白い壁が出現した。
「な、何、それは!」
「木下先生、これが緊急用の避難場所です」
俺以外の全員が、俺の前に現れた白い壁を見つめている。
「…もしかしてヒロキ、これ、どこかと繋がっているのか?」
「一応避難場所になる所に、繋がっているぞ?」
「……相沢、あなたから入ってくれない?」
ケンジは疑っているようだし、安西は信じてないようだ。
ならば、俺が先に入ってみるか…
「なら、先に入るぞ~」
俺はみんなにそういうと、白い壁の中へ入っていく。
白い壁を抜けると、そこは草原でした。
広い草原に、1キロぐらい先に森が広がっているのが見渡せる。
また、俺の後ろにある白い壁の先には大きな湖が広がっていた。
「…相変わらず、よくわからない空間だよな」
そんな感想をもらしていると、最初に白い壁から現れたのは安西だった。
「な! な! 何よこれ!!」
うむ、よくわかるぞ安西、最初の俺の驚き方と同じだ。
安西が入ってきてから、木下先生、松尾先生が続き、
藤倉、フィリアときて、ようやく男性陣が入ってくる。
みんな、この景色を呆然と眺めているようだ。
俺も、周りをぐるりと見渡してこれぞファンタジーの世界だよなと納得する。
「相沢君、いろいろ質問が多すぎて整理がつかないんだけど、
まず、ここはどこなの?」
木下先生が最初に思考が戻ったようだ。
「木下先生、ここは『異空間』、空間魔法で作った世界です」
「…作った?」
「う~ん、簡単に説明するなら
『アイテムボックス』の中に入ったとでも考えてください。
これが、一番近い説明ですから」
「じゃ、じゃあ、ここは異世界、なのか?」
「いや、異世界というより異空間だな。
空間魔法には『異空間創造』っていう力があってな、それで作ったんだ」
ケンジも混乱しているな~
「ここの空間の大きさは、どれくらいなの?」
「ここは東京都の半分ぐらいだよ」
「周りを見ると、山や森、川や湖があるけど生物はいるの?」
「生き物はいません、外から連れてくることはできます」
「ここには空があるけど、夜にもなるのか?」
「ああ、夜もあるぞ。朝焼けや夕焼けまであるからな」
「ということは、雨も降るの?」
「勿論、どういうことか分からないけど雨も降る」
「すげぇな! すげぇよ、ヒロキ! お前は箱庭を手に入れたんだな!」
「まあ、ここが箱庭みたいなのは否定しないが…」
「もしかして、世界の果てがあるの?」
「ありますよ、ここからまっすぐに行くとはるか先に壁があります。
ここは本当の意味で、箱庭なのかもしれませんね」
みんなからの質問にどんどん答えていくうちに、
俺もこの魔法の不思議さに気づき始めた。
「なあ、ここに住むことってできるのか?」
馬場が、ここに住んでみたいと言い出した。
「ここにか? もちろん住むことはできるぞ」
「え?! この空間は一時的なものではないの?」
「違いますよ松尾先生、この空間は俺の持っている空間収納と同じで
一度生み出したら、生み出した本人が死んでもなくなりませんよ」
「そうなのね…」
「その代わり、一生に一度しか使えない魔法と
お城の図書館にあった本に書かれてありましたね」
「そういえば、ここへの入り口は動かせるの?」
「ええ、ここを発見というか作り出したのは、屋敷の俺の部屋でしたし
いろんなところで入り口を開きましたから、大丈夫ですね」
木下先生はホッとしている。
多分、この空間の入り口をゴルダーの森の中に作ってしまったことに
罪悪感があったんだろうな~
「さて、そろそろみんなも落ち着いてきたことだし、
そろそろこの空間から出て、森の中を移動しませんか?」
「…そうね、私たち、ゴルダーの森の中を移動中だったわね…」
どうやら木下先生だけじゃなくて、みんな忘れていたようだな…
「なあヒロキ、この出入口って中から閉めることってできるのか?」
「できるよ、外にある白い壁が消えるだけだし」
「それじゃあ、この空間から森以外の外に出ることは…」
「それは無理、この空間に入ってきた場所に出入り口ができるだけだ」
「そうか、残念だ……」
馬場が、かなり落ち込んだな。
「そう落ち込むなって、空間魔法には転移ができる魔法もあるみたいだしさ」
「ホントか! 今できるか?」
「レベルが足りなくて、無理だな…」
「そ、そうか…」
「ちょっと相沢! 馬場! もうみんな外に出て待っているわよ!
あなたたちは、ここに残るつもりなの?!」
安西が怒っているぞ。
ていうか、周りを見渡したら俺と安西と馬場しかいなかった。
みんな、行動が早いな…
読んでくれてありがとう、次回もよろしく。




