第20話 オークキング討伐、前編!
ゴルダーの森の奥深く、俺たちが今隠れている茂みの向こうに
そいつはいた。
「……あれが、オークキングかよ」
全長5メートルはあるだろう巨体を、大木を使った長椅子に預け寛いでいる。
すべてにおいてオークとは桁が違い、側にいるオークジェネラルと比べても
それは格が違うと分かる雰囲気だ。
姿はオークに似ているが、口から見えている牙が大きい。
全身は軽装に鎖帷子だろうものを着ている。
また、見えている腕の筋肉が半端ない。
「なあヒロキ、あれって槍だろう?」
「種類で分けるなら、おそらくパルチザンだろうな……」
「俺、あんな刃の部分がでかいパルチザン、ゲームでしか見たことないぞ?」
「俺もだよ馬場、多分レアものだろうな」
「……俺にも見せてくれ」
「押すなよケンジ、狭いんだから…」
「……あ~、確かにあんな槍、ゲームでしかお目にかかれないわな…」
「で、どうするんだよヒロキ、何時までもここに隠れている場合じゃないだろう?」
「わかってるよ、馬場もケンジも急かすな…」
俺はすぐに【宝石生成】を使い6つのゴーレム核を作る。
そしてその宝石に魔法陣を刻み、命令を刻んでいく。
「…何を作ったんだ?」
「矛盾騎士」
「えっと、どういう意味だ?」
「とにかく、皆に突撃するから準備してと伝えてくれ」
「わ、分かった…」
ケンジが戸惑いながらも、後方に待機している木下先生たちに伝えに行く。
「オークキング以外にもオークがいるけど、そいつらはどうするんだ?」
「キング以外はいつも通りで倒していく」
「了解」
準備を終えると、俺たちは茂みから出て
ゆっくりと歩いてオークキングに近寄っていく。
それとともに、俺たちを見つけたオークたちが前面に出てくる。
「オークだけでも、あの数は迫力があるな…」
「ケンジ、気圧されるなよ。
たかが、オーク30匹とナイト10匹、それにジェネラル3匹だ」
「…ヒロキ、その自信はどこから来るんだよ」
「そのためのさっき作ったゴーレムだよ!」
俺は先ほど作っておいたゴーレムの核を周りにばらまく。
すると、一瞬の光とともに大きな盾を構えた全身鎧の騎士が3体。
さらに、ランスのような突き刺す槍を構えた騎士が3体その場に姿を現した。
「…確かに、矛と盾、矛盾騎士だな…」
「だろ? これにゴーレム武者5体とくノ一ゴーレムを合わせて戦えるだろ?」
「…なんか戦える気がしてきた!」
『ブゴオォォォー!!!』
オークキングの雄叫びとともに、オークキングが立ち上がる。
「で、でけぇ……」
「そして持っている槍がそれに負けてないぞ…」
オークキングが何も持っていない左手を、俺たちの方へ向けてきた。
「…何を、する気だ?」
そこへ、魔力の高まりを感じ取ったフィリアが警鐘を鳴らす。
「オークキングが魔法を使います!」
「何っ!」
みんながフィリアに注目した瞬間、オークキングの左手から魔法が放たれた!
「【ファイアーボール】だ!」
木下先生や松尾先生が、フィリアや安西たちを守ろうとするが間に合わず
俺たちに当るかと思われた時、盾の騎士が前に出て魔法を防いだ!
しかし、余波までは防ぎきれずに、熱風が俺たちに届いた。
「「あちっ!」」
【ウォーター】
青島の生み出した水が、俺たちにかけられ難を逃れることができた。
「ああ、熱かった…」
「オークキングは魔法が使えるのかよ…」
『ブオオォォ!』
このオークキングの雄叫びとともに、
静観していたオークとオークナイトが襲い掛かってくる。
「来るよ! 油断しないで!」
松尾先生の叫びを聞きながら、俺たちは気合を入れなおす。
「「「はい!」」」
地響きとともに、オーク30匹とオークナイト5匹が向かってくる様は大迫力だ。
すぐに盾騎士ゴーレムが前面に出て、盾を構えて守りに入ると
その少し後ろを、槍騎士ゴーレムとゴーレム武者が武器を構えて戦闘態勢に入る。
そこへ目くらましの藤倉の魔法が放たれた。
【サンドストーム】
砂嵐がオークやオークナイトを一瞬ひるませ、その瞬間、俺が魔法を放つ。
【フォレストバインド】
【ストーンチェーン】
この2つの魔法で、完全にオークとオークナイトの自由を奪った。
「今だ!」
そして、皆の魔法がオークたちに放たれ、次々とオークたちを倒していく。
また、槍騎士ゴーレムやゴーレム武者も同じようにオークたちに止めを刺していく。
気が付けば、10分もたたないうちに
攻め込んできたオークやオークナイトは、全滅していた。
その光景を見ていたオークキングが震えている…
そして、咆哮を放った!
『ブガァァ!!!』
オークキングの全体の色が濃い赤色、紅色へと変わっていく…
「まずい、狂乱状態に入ったぞ…」
一歩一歩、ゆっくりとこちらに向かってくるオークキング。
その前をオークナイト5匹とオークジェネラル3匹が、
キングに追い立てられるように走ってくる。
「木下先生たちは、オークナイトとジェネラルをお願いします」
「わかったわ!」
木下先生はそう返事をすると、皆を連れて俺から離れていく。
「盾騎士ゴーレム! オークキングに張り付け!」
その命令に従い、盾騎士ゴーレムはオークキングの進路上に移動する。
「ゴーレム武者は、オークナイトやオークジェネラルを頼む!」
ゴーレム武者たちは、すぐにナイトやジェネラルへ向かっていく。
「槍騎士ゴーレムは、オークキングだ!
スキをついて、その槍をオークキングに突き刺してやれ!」
これで戦えるはずだ…
「くノ一ゴーレムは、最初の命令の通りで」
木下先生たちが放った魔法が、オークナイトやジェネラルに当たると
すぐに標的を変えて襲いかかってくる。
その後をゴーレム武者が追いかけていった。
オークキングは我関せずと、ゆっくりこちらに向かって歩いている。
しかし、盾騎士ゴーレムが進路上に現れると
『ブギィィ!』
と雄叫びを上げて、走り出した。
そして、オークキングは自らの武器、パルチザンを振り上げ
力いっぱい振り下ろす!
振り下ろした場所が大爆発したとともに、すさまじい地響きが俺たちを襲う。
俺たちは、土煙の舞う中
盾騎士ゴーレムの盾の後ろに移動して飛んでくる石や土をよける。
が、そこへ土煙の中からオークキングが飛んで襲いかかってきた。
「くそ、なんて跳躍力!」
オークキングの顔は、奇襲が成功したかのように嗤っていた…
読んでくれてありがとう、次回もよろしく。




