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悪魔の祝福  作者: でこっぱ
9/12

小学生編その2

ゴリ子を見て、おぼろげだった記憶が少しずつ戻ってきた。



僕はどんな小学生だったか。


成績はまぁ普通だったと思う。テストの結果にしろ、褒められた記憶も、叱られた記憶も特にはない。


運動は?

昼休みにクラスのみんながやるサッカーに混じっていたことは覚えている。この頃はそれなりにスポーツも好きだったかな。


クラスのみんなとは普通に仲良くできてたかな。少なくとも、いじめられた記憶もない。喧嘩した記憶もない。


平凡な小学生だったと思える。




しかし、今は大人の僕が小学生の体に入っているのだ。

万事上手くいくはず。




「いよっ!」

とりあえず、隣の席の男子に挨拶してみる。子供の時はあまり意識してなかったが、なかなかのイケメンくんだ。


「あぁ、うん。」


何か反応が良くない。


「今日はおまえ、キャラ違うくねえ?」

後ろの席から、クラスのムードメーカーだった、たかおが声をかけてきた。


ちなみに、たかおは本名ではない。『いつも元気にテンション高男さん』が、こいつのあだ名だ。徐々に略されて『たかお』に落ち着いた。


「そ、そうかな?」


言われてみれば、どんなキャラだったのか。


「教室入っておっきい声で挨拶したり、フレンドリーに声かけたり。いつもはもっとぼそぼそしてるじゃん。アニメの話の時はずっと喋るけど。」


社会人になり怒られ続けて身につけた大きな声の挨拶や、大学で身につけたクラスのイケてそうなやつに親しげに声をかけとけば浮いてないアピールできるといった処世術は、小学生の僕になかったのは当然だ。


しかし、記憶も幾分美化されているらしい。


たかおと話していくうちに、小学生の時の僕のポジションが理解できてきた。



認めたくはない。しかし、大人として冷静に見ると。僕は浮いていたようだ。


休み時間に友達と遊んだ記憶、実際は僕がみんなが集まるところに誘われてなくても混じって行ったらしい。仲間外れにするほどでもないし、みんな適当に対応してくれたようだ。


みんなが盛り上がっている話題の時は、あんまり喋らない。しかし、僕が知ってる話題になったとたん、そんなのも知らないの?といった感じで一方的にまくして喋るものだから、僕と話すのは面白くないらしい。


僕の記憶の中にある、友達が僕の話で笑っている光景。事実は、気のいいクラスの奴らが、小学生なりに僕を傷つけないように、笑顔を顔に貼りつけてくれていただけだった。



恥ずかしい。



僕の人生のなかで、一番輝いていたはずの小学生時代は、僕が空気を読めない人間だったからこそ美化された記憶だった。



ガラスの指環をダイヤの指環だと思いこんでお宝鑑定の番組に持ち込んだ依頼者の気分だ。




しかし、たかおは僕が質問さえすれば、言いにくいことも素直に答えてくれる。

猿顔でテンションの高い、うざそうな性格のやつだが。

将来は僕に比べれば羨ましいくらい成功していたようだ。

一流の企業に勤めた後、早くに綺麗な嫁さんをもらい、子供も2人いた。きっと性根は誠実で誰からも好かれていたのだろう。

僕は、そんなたかおと交流はなく、SNSで一方的に現状を知った岳である。


同窓会の通知が来なかったのも、自分が実家を出て連絡がつかないからだと言い聞かせていたが、僕のことなんてみんな気にとめてなかったというのが正解なのだろう。



胸の奥がきゅっとする。



やり直そう。




機会を得たんだ。




状況は良くはないが、最悪ではない。




今から努力すれば、以前叶わなかった、可愛い彼女も夢ではないかもしれない。



僕がそう決意したところで、たかおが言った。




「それにしても、おまえゴリ子と仲良いよなー。一緒に登校して、ゴリ子の席に座るんだもん。クラスの女子みんなが、おまえとゴリ子が恋人に決まってるって言ってるの聞いたぜ。すげーなー。」



状況は最悪なのかもしれない。


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