時間逆行で大逆転
「時間逆行なんてのはいかがですか?」
元の世界に戻って落ち着いた頃、悪魔のおっさんが提案してきた。
「いくつか難点はありますが、これはおすすめです。多くの方が幸せになった実績もあります。」
「難点?」
失敗を重ねた僕は慎重になることにした。人間は成長する生き物なのだ。
「ひとつは、あなた1人を過去に飛ばすので、私がサポートできない点です。過去に戻った時点であなた自身の力でやり直してもらいます。」
過去を改変しても、僕1人の影響力は大きくなく、多くの出来事は現在と変わらないらしい。つまり、未来に起こることがある程度わかるため、無双できるという寸法である。
「もうひとつは、私にも結果がわかりません。私の見通す力は、過去に起こった事象を把握し、精緻な予測をすることでほぼ100%将来の出来事を当てるものです。しかし、あなたが過去を変えた時点で、手持ちの情報が役に立たなくなるので、見通す力でもどうなるか予測できなくなります。」
それでも、今まで過去に戻した人間は全て、心機一転人生をやり直して、幸せになったらしい。将来起こることは大体知っているし、精神的な年齢も高いままだ。周回プレイのイージーモードだ。
「よろしくお願いします!」
あっさりと決断してしまう。まぁ、みんな成功してるなら上手くいくだろう。
悪魔のおっさんはにっこりと微笑むと、そっと僕の手に手を添えた。
嬉しくない、おっさんに手を重ねられるなんて実に不快だ。
眉をひそめて悪魔のおっさんの方を見た瞬間、視界が歪んだ。
揺らいでいた視界が安定してくると、記憶よりも綺麗に思える実家の前に立っていた。
自分の手足を見て見ると、縮んでいる。
僕は小学生に戻っていた。