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悪魔の祝福  作者: でこっぱ
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異世界転生で大逆転

「異世界に転生したいです。チート能力、ハーレム付きのやつ。」

「無理ですね。」


悪魔のおっさんは、ニコニコしたまま僕の要望を切り捨てた。



「転生というのは悪魔の領分じゃありません。生まれ変わりたいのなら神や天使みたいな存在に会った時にでも頼んでみてください。そもそも、死なれたらせっかく契約したのに人生を幸せにするもくそも無くなるじゃないですか。」


駄目なのか。でも…


「異世界は否定しないの?」


「魔界もありますし、異世界もありますよ。それもかなりの数で。」


「じゃあ転移で、異世界転移。チート能力、ハーレム付きのやつ。」

「駄目ですねえ。」


これも駄目なのかよ。


「まず、異世界転移は可能です。ですが、私は魔界とこの世界以外では転移しか力が使えません。あなたを異世界に連れて行ってもサポートできません。」


「いいよ、チート能力くれたらサポートくらいなくても。」


「そのチート能力を与える行為も、悪魔にはできません。代案で考えられるのは、今のあなたがチートに見えるほどレベルの低い異世界に行くことです。そこでは、あなたは最強になれるので、もちろん女性にもモテるでしょう。しかし、断言できます。おすすめしません。」



この悪魔のおっさんは実は何もできないんじゃなかろうか。

契約目当ての大悪魔大悪魔詐欺とかかな?と無茶な要望を出しておきながら僕は勝手なことを思った。


「本当はできないんじゃ…」


悪魔のおっさんはムッとした顔で


「そうおっしゃるなら試してみますか?お試し1ヶ月間で、異世界旅行。もちろん、あなたが無双できるレベルの異世界へ。あ、おまけで向こうで神のように崇められる道具もお渡しします。」


そう言って、悪魔のおっさんは僕にライターのようなものを渡した。


「出血大サービス、向こうでハーレムを作るなら『まけやんぱ』と女性に話していればモテモテ間違いなしですよ。1ヶ月後に迎えに行きますので、その時にこの世界に戻るかどうかを決めてください。」



悪魔のおっさんから光が放たれた。眩しさに閉じた目をゆっくりと開けると、そこには中世風の町並み、大剣を背負った騎士や弓を持った冒険者、犬や猫の亜人に、見たこともない生き物が引く馬車。これぞ僕の望む異世界といった光景が広がっていた。


…ここから僕の本当の物語が始まるんだ!

僕は颯爽と歩き出した。









1ヶ月後







僕は泣きながら、やっと来てくれた悪魔のおっさんにすがりついていた。


「こんな世界いやだ!早く帰して!」


悪魔のおっさんが言った通り、僕はこの世界ではまさにチート級だった。


力とかが強かったわけではない。運動もなにもしてないので、騎士や冒険者には筋力では勝てない。これは物理的なことなので仕方ない。


魔力が凄まじいわけではない。元々、魔法なんてない世界から来たのだ。使えるわけがない。





では何がチート級だったのか。それは、頭脳である。


僕がチートに思えるほど、周りの知能レベルの低い異世界に来てしまったのだ。


僕がごろつきに絡まれたとき、やけくそで空を指さし「あっ!」と叫ぶと見事に引っ掛かった。

1回ならまだいい。同じ相手に5回、6回とやっても毎回ひっかかるのだ。

その行為に周りの人間は感嘆し、僕を人類史上最高の知将と持て囃した。


このギャグ漫画のような手法は、空虚指差術と名付けられ、後世に語り継がれる戦術となったらしい。



他にも、悪魔のおっさんから渡されたライターを使ってみると、あっと言う間に人々がひれ伏した。人々曰く、火を操る神の化身と。

ライターの着火の方法を懇切丁寧に教えても、難しすぎて扱えないらしい。100円で買えるライターは神にしか扱えない神器とされた。



最初はちやほやされて気持ちがよかったが、次第にストレスが貯まっていく。


IQが離れていると、会話がなりたたないと聞いたことがある。

会社の同期の出世頭と話した時や、難関大学に行ったあいつと会話したとき、相手はずっと首を傾げて難しそうな顔をして僕の話を聞いていた。


僕は彼らの気持ちがようやく理解できた。


希望に満ちた異世界は、いまや動物園に思える。




せめてハーレムを


悪魔のおっさんから聞いた魔法の言葉『まけやんぱ』を目についた一番綺麗な女性に囁く。


女性は驚いた顔をして、その後、手を叩いて笑いだした。


…受けている。それにしても笑い方下品だなあ。


僕は最高の笑いのセンスも持ち合わせた知将として、女性をメロメロにしたらしい。


町で『まけやんぱ』の意味を確認すると、馬車を引く生き物のフンのことだと教えられた。


どの女性も『まけやんぱ』の一言で手を叩いて大爆笑し、僕にメロメロだ。


どんなに綺麗でも、フンで何度も何度もサルのオモチャのように笑うお姉さんや少女達には萎えてしまう。





服や剣を作ったりできるくせに、どうしてこんなにも知能が低いんだろう。もしかして、みんなわかった上で僕のことを馬鹿にしてるんじゃないだろうか。


何をしても天才扱いされる状況に、僕は疑心暗鬼になり、ついには胃に穴が空いたらしい。


血を吐いて倒れこむ時に、顔を庇うように手を地面に着いた。

その瞬間、周りから歓声があがり、最高の護身方法だと囃す声が聞こえたところで、僕の中で何かがキレた。




発狂した僕は、町の郊外でほぼ裸の状態で悪魔のおっさんに見つけられた。

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