小学生編その5
しまった。やってしまった。
背筋を嫌な汗が流れる。
小学生には、やってはいけないことがいくつかある。
1つ、先生を間違えてお母さんと呼ぶことなかれ。
これは、単純に恥ずかしいし、弄られる。
1つ、学校で大きい方をすることなかれ。
生理現象なので仕方ないが、小学生にそんなことは関係ない。一度見つかれば、あだ名はウ○コまんとかになる。
1つ、女子に嫌われることなかれ。
小学生と言えど、既に女子には堅牢な砦にも似たコミュニティが存在する。そこに敵として認識されると、徹底的に潰されてしまう。
とまぁ、これは僕の時間逆行前の教訓だ。
2度目の小学生でも既に、寝ぼけてからのお母さんは達成済みだが、皆が飽きてしまったので問題ない。
今回は、この比ではない問題を起こしてしまった。
この休日、母親に頼まれて、レンタルしていたDVDを返却に来た。
この任務は問題なく遂行した。
精神は大人なので、お使いなんて余裕でこなせる。
しかし、その後がまずかった。
返却が終わりぶらついていると、時間逆行前の癖で、のれんのような場所をくぐり、大人のムフフなコーナーに入った。
しばらく吟味していると、知らないおじさんに子供はまだ入っちゃだめだよと言われ、ようやく、自分が小学生であることを思い出した。
慌てて大人のコーナーから飛び出すと
目が合った。
クラスで一番可愛いロングヘアのあの子と、ミディアムショートに眼鏡をかけた委員長、僕の走りを見て泣いたあの子の3人だ。
休みの日に3人で遊んでたのだろうか。
「いや、間違って入っちゃった。入ったらだめなの知らなくて、でも直ぐ出たからセーフ。」
僕は慌てて意味のわからない言い訳をする。
「でも……」
委員長が口を開く。
「入ってから出てくるまで、結構時間経ってたよね?」
ロングヘアとひそひそと話している。
…………しまった。入るところも見られてたみたいだ。
女子の人気を手に入れたい僕にとっては、取り返しのつかない過ちだ。スケベ系なんか特にだめだ。
翌日
女子ネットワークとは怖いものだ。
清々しいくらい、みんな僕の失態を知っている。
女子の鉄の掟により、僕は粛清された。
挨拶したら逃げられた。
目も合わせてくれない。
ひそひそと何かを話しあってる。
「おまえ、また何やったんだよー。」
昼休みになり、たかおが笑って聞いてくる。
「いや、べ、べつに。」
男子にまで知られる訳にはいかない。中学生ならいざ知らず、小学生にはエロネタはまだ早い。
慌ててごまかそうとして、机の上にあった消しゴムに手があたる。
消しゴムはコロコロと、輪になって話していた女子の集団の足元へ転がる。
女子達はゴキブリでも見たかのように悲鳴をあげて散っていった。
「スゲー!モーセだ!モーセの海を割るやつだ!」
たかおが嬉しそうに叫んだ。
何でお前はエジプト脱出の話を知ってるんだよ!と心の中で叫ぶ。
そこからたかおは僕のことをモーセと呼びだした。
翌日
結局、レンタルの件も男子にも知れ渡っていた。
レンタルエロス・モーセにクラスチェンジした。
僕の得た称号
・地獄のハイスピードゾンビ
・レンタルエロス・モーセ




