小学生編その4
小学生に戻れば、何もかも楽勝。
そう思ってた時期が僕にもありました。
テストは微妙にわからない部分やミスがあり、満点はとれない。
ゴリ子や隣のイケメンくんにも負ける始末だ。
それよりも問題は運動だ。
僕は運動音痴だった。時間逆行をして、知識は上乗せされても、運動神経はパワーアップしない。
サッカーをすれば空振りして頭からこける。バスケをすれば、ドリブルしたボールがアゴにあたる。この前は走り方が不気味だと、密かに可愛いと思っていた子に泣かれてしまった。
所詮は小学生。成績が伸びたくらいでは、誰も認めてくれない。
足が速くてなんぼの世界である。
みんなを見返す人生を手にいれるために、速く走れるようになって、クラスの女の子にちやほやされよう。
ちょうど、来月にはマラソン大会がある。
僕はその日から、毎夜、ランニングをするようになった。
時間逆行前にも、休日に体を鍛えようと、ランニングをしたことはある。漠然と走りだし、1キロほど走ったところにあるコンビニに休憩がてら入り、ジュースとお菓子を買って歩いて帰った。
次の日にはやめた。
その時とは違う。小学生の頃に住んでいたところには、近くにコンビニはない。離れた所にコンビニがあるにはあるが、そもそも小学生なのでお金がない。
うちは、必要な時にしかお金を与えないスタイルなのだ。
ランニングを始めた次の日、筋肉痛がきた。
もうやめよう。十分頑張ったと思った。
しかし、この前僕の走り方を見て泣いた可愛い女の子が、こともあろうに、たかおがサッカーをしてるところを見て、たかおくん速くてかっこいいと言ってるのを聞いてしまった。
相手が隣のイケメンくんだったのなら、僕は仕方ないと諦めただろう。
しかし、たかおである。僕の中では、あいつよりはイケテる認定している存在なので、悔しさは何倍にも膨れる。
僕は筋肉痛が治まるまで休んだ後、雨が降ったのでもう1日休み、見たいアニメを見るためにさらにもう1日休んだ後、トレーニングの鬼になった。
なんだかんだで、トレーニングを積んだ僕は速くなった。
相変わらず、サッカー等は下手くそのままだが、長距離を走るのは得意になった。
変なテンションで走り続けた結果。ランナーズハイに成りやすくなったようだ。
マラソン大会当日
目指すは学年1位だ。
5年生男子が位置につき、
満を持してスタートする。
先頭集団はスポーツクラブに所属しているやつらだ。
イケメンくんにたかおもいる。
僕は必死でくらいついた。
折り返しを越えた辺りで、たかおのスピードが落ちてきた。
たかおとはここでオサラバだ。
たかおを下したことで、テンションが上がってきた。
次はイケメンくんだ。
先頭集団はバラけてきている。なんとイケメンくんはトップを走っている。
負ける訳にはいかない。
今までにないペースで走り、脇腹が痛む。
呼吸が乱れる。
イケメンくんの数歩後ろまで追い付いたところで、ゴールである学校の校門が見えた。
イケメンくんに続き、校門に入ると、喚声が起こった。
ラストはトラック一周だ。ちらりと、あの可愛い子が目に入った。
ここで、イケメンくんに勝てれば…
残りの気力を振り絞る。
イケメンくんに並んだところで、ふくらはぎに激痛がはしる。
息が乱れ、足を引きずるようにし、痛みで顔が歪む。
喚声に混じり、女子のキャーキャーと叫ぶ声が聞こえる。
「ゴーーール!」
僕はそのまま倒れこんだ。
「良く頑張ったな!すごいぞ!」
先生が僕とイケメンくんを褒める。
「ぎりぎりで負けちゃったな。」
イケメンくんは、マラソンの直後と思えない爽やかさで僕に握手を求める。
そうだ。僕はイケメンに勝ち、マラソン大会で一位になったのだ。
表彰を受けて、家に帰り、両親に誇らしげに報告する。
マラソン大会での優勝は上々の出来だ。
明日からは、男子からはヒーロー扱い、女子からはモテたりするんだろうか?
翌日、揚々と教室に入ると、女子達が悲鳴を上げた。
イケメンに対する歓喜の悲鳴ではなく、変質者を見たかのような悲鳴である。
僕が訳もわからず、混乱していると、たかおとイケメンくんが、複雑そうな顔をして、僕に一枚の写真を渡す。
昨日のマラソン大会のゴールの写真だ。
爽やかに走るイケメンくんの前を、口をひん曲げて足を引きずり、今にも呪いでも出しそうに片目を歪め、興奮のあまりヨダレを垂らした不気味な男が走っていた。女子がキャーキャー言っていた理由はこれだろう。
その日からしばらく、僕は女子の間で『呪いのハイスピードゾンビ』と呼ばれることになった。




