小学生編その3
三者面談
先生の正面に僕と母親が座っている。
進路相談ではない。小学5年生の中途半端な時期にそんなことをするほど教育熱心な学校に僕が行ってるわけがない。
何のための面談か。
僕のカンニング疑惑についてだ。
時間逆行して初めてのテストで、高得点をだしたのだ。
中身は大人なので当たり前である。
大人のくせに本気を出して取り組んで、全教科満点を取れなかったことには突っ込まないでいただきたい。
小学生なので、高得点を取るのは容易いことだ。でも、残念なことに、小学生の時の僕の頭の出来は幾分よろしくなかった。
さらに、時間逆行してからの授業態度も問題だった。
わかってることを延々と聞くのはつらい。授業中に寝落ちすることはしょっちゅうあった。
そんな僕が急にテストで良い点をとったのだ。
先生の気持ちもわかる。
「申し訳ございませんでした!」
母親が必死に謝っている。僕の実力だとは微塵も思ってないようだ。
「あの、僕カンニングなんかしてません…」
大人の僕が答えたとはいえ、実力は実力だ。不当な疑惑は断固として消し去りたい。弁護士を用意してほしい。
「あんたがこんな点数とれるわけないじゃない!お母さん情けないわ。」
自分の息子に何て言い種だ!
僕だって良い点くらい…
記憶をたどったが、良い点をとった思い出はない。
お母さん、おっしゃる通りです。時間逆行したから高得点を取れただけで、小学生の僕では無理でした。
そう思うと、妙な罪悪感も出てきた。母親の気迫に押し負けそうになると、先生が割って入る。
「まあまあ、お母さん、実際にカンニングをした証拠が出た訳でもないですし。最初から疑ってかかるのは可哀想です。」
この三者面談は、うちの母親が先生に希望したものだ。
先生も早く終わらせたいんだろう。
「次回のテストでは、一応注意して見てみます。証拠が見つかれば、その時はまた話し合いましょう。逆に、もしこの子の実力だった場合は、きちんと謝ってあげてください。」
先生良いことを言った。今度、尊敬する人物を書く機会があれば、先生の名前を書こうと決心する。
「そうですね…わかりました。」
母親が先生にお礼を言い、立ち上がろうとしたところ、ドアがノックされる。
「…どうぞ。」
先生が返事をする。
「失礼します。」
同じクラスの少女が汗で長い黒髪を顔に貼りつけたまま入ってきた。
息を切らしている。走ってきたのだろうか。
「あの、先生、私、知ってます!この人はカンニングなんかしてません!」
どこかで僕のカンニング疑惑を聞いたのだろう。放っておいても良いのに、疑惑を解くために駆けつけてくれたようだ。
「テスト中も彼は真面目に受けてましたよ!」
彼女は必死に弁明してくれる。優等生の彼女の言葉に、先生や母親も納得してくれたようだ。
「…ごめんね?」
母親は僕に謝ってくれた。そのあと、先生にきちんとお詫びして帰るからと、僕は先に帰された。
「ありがとう。」
駆けつけてくれた彼女にお礼を伝える。
「どういたしまして。」
彼女は長い黒髪をかきあげ、にっこりと笑う。
本当に良い子だ。
成績優秀、みんなに信頼されている僕の幼なじみ。
神様、何故この子はゴリ子なんでしょうか。
ヒロイン要素を詰め込んだくせに、ポイント調整するかのようにビジュアルを差し引いた神様に文句を言ってやりたい。




