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1-7:ギルドへ相談するようです

 ギルド。

 冒険者ギルドとやらに着いたのだが、入口の外まで人が並んでおり中には入れそうにない。


 並んでいる連中は皆屈強な兵士に見えてしまう、皆が冒険者なのだろうか。甲冑のような防具を着ている人物もおり近寄りがたい。


 ゆっくり近づいて並ぼうとしたのだが、リースは列を追い越し入り口から中をのそいている。


 どうやら人を探していたのか、見つけた人物へ声を掛けつつ中に入っていってしまった。

 これ付いていって大丈夫だろうか。並んでいても仕方ないと、中の様子を覗こうと入口に近づいたところで肩をグッと掴まれた。



 ゆっくりと振り返ると、甲冑を着込んだ人物がこちらを見ていた。


「おい、君のような子供がギルドに出入りしている事はとやかく言わないでおくが、大勢が並んでいるのは目に入っているだろう、どういうつもりだ全く」


 あ、なんか厄介な感じのする人だ。


「ごめんなさい。実は中に~」


「言い訳を聞いているんじゃ無いぞ。列に並べと注意しているんだ」


 相手の事情も聞かない頑固頭かな。


「分かりました、二度としません。直ぐに後ろに並びま~」


「何やってるのケント。早く入って来てよ」


 再度の謝罪を述べようとしたところで、リースが出てきて声を掛けてきた。さてどうしよう。


「彼女は連れでして、中で話しを始めているようなので失礼しますね」


「おい!お前もさっき列を無視した奴だな。追い越した上に仲間を招き入れるとか許せるものか」


「なんだいおっちゃん、話しかける相手を間違えているんじゃないか、引っ込んでくれないかな」


 リース、その発言はまずい気がするんだな。


 案の定おっちゃんはぷるぷると怒りに震えており、甲冑がカチャカチャと音を立てている。


「きさんわーがてーねーにおしえてやっちょるちゅーになんじゃそぎゃん〇▼□※▲……!」


 おっちゃん落ち着いてくれ。方言があちこち混ざっている上に、甲冑越しに叫んでいるから全然聞き取れないぞ。



「ふーふーふー」


 ひとしきり叫んで疲れたのか、おっちゃんは肩で息している。甲冑だと呼吸も苦しそうだよな。


「話しは終わりね」


 リースに手を掴まれ中に入っていく。後ろでおっちゃんの甲冑の音がガチャガチャと聞こえたが、周りの者が止めてくれたのか追っては来なかった。



 ギルドの中は意外と狭く、丸テーブルとイスが隅に寄せられ、行列が部屋を往復する感じで並んでいた。行列の横をさらにすり抜けて奥の扉へと進んでいった。

 入ったところは小部屋になっており、テーブルと椅子を置いただけで窮屈な感じだ。


 ところで中でお待ちの、こちらの美人さんはどなただろうと固まっていると。





「こちらの彼が新しい村長候補さんなの?」


 随分としっとりとした声を聞き、さらに緊張してしまった。


「そうよ、取り敢えずウィルムにやらせているけど、どうせ直ぐに根を上げるだろうし」


「あら、さっきまでのベタ褒めは言ってあげないのかしら。他の男の話しをして男心をくすぐっているつもり?」


「事実を伝えただけよ。ほらケント固まってないで、名前くらい名乗りなさいよ」


「あ、ケントと申します。故あってテミズ村の警備長の身となりました。本日は冒険者ギルドの方にご相談したいことがございまして参った次第であります」


「ふふっ、そんなに緊張しなくていいわ、私はローズ。実は私もテミズ村の出身でね、縁があって今はギルドで働いているのよ。村からの依頼や相談は、私がまず聞くようにしてるって訳なの」


「あ、そうなんだちょっと緊張して損した気分だよ」


「そうそうそれでいいわよ。それで、新しい警備長さんはどんなお話しがあるのかしらね」


「先日村がゴブリンの襲撃を受けたんだ。退散はしてくれたけど、また襲撃されたら被害を食い止めることが出来無い気がしてね、対応策に詳しい人を紹介して欲しいなと思って」


「そのセリフを警備長さんが言っていいのかしらね」


「ちょっと理由はさっき説明したでしょ。数体程度ならケントが難なく倒せるけども、襲撃ときのゴブリンの数はそんな事言ってられないくらい……」


「話しはよく分かったし、紹介する人に当てはあるわ」


「おお、本当かい」


「でもね、暫くこの街から離れているのよ、いつ帰ってくるか分からないわ。すぐ村に駆けつけるって訳にはいかないわね」


「待つしか無いって事か。他の人はいないのかい?」


「そいつは狩人と呼ばれていてね、何でも出来るのは一人しか知らないわ。他は、スキルも劣るし一人で全てを出来無いから複数人雇う事になるわ。その分費用も増えるし、正直あまりお勧めしない選択肢だわ」


「そうか、じゃあそのお薦めの彼に、連絡が付いたら依頼の事を伝えて欲しいな」


「あら、男だなんて行ってないわよ私は」


「何となくそんな気がして、言っただけだよ。その人の事を話してる時の、ローズさんの表情がちょっとね」


「まだ子供に見えるのに、勘のいい子ね。女は機微には気が付いて欲しいけれども、顔色を伺われるのは嫌いなのよ。覚えておきなさい」


 キョトンとしているリースを横目に頷く。



「ついでにもう一つ教えて欲しい事があるんですが、いいですか」


「まあ、何かしらね」


「こちら以外で相談を聞いてくれたり、警備長の経験者を紹介してもらえるような所を知りませんかね」


「なんだ、そっちの話しに戻るのね。そうねえ、帝国に行けば大きなギルドもあるし、騎士団の詰所もあるわ。貴族への伝でもあれば一番なんだけれど。でも、帝国に行くのは山越えが大変なのよ。二人で向かうなんてのは、絶対ダメだからね」


「帝国ね、一度行ってみたかったのよ」


「行くなら、商隊のキャラバンにお金を払って付いて行くのよ。その時も村の大人を一人追加しなさい、二人でなんて危険だわ」


「分かりました、では一旦村に帰ります。彼と連絡が取れたら、知らせを送ってもらえると助かります。帝国行きはちょっと考えてみますね」


 お礼を伝えつつ小部屋を出ると、まだ行列は続いていた。

 甲冑おじさんはようやく部屋の中の折り返しか、3つある受付の方は休憩取れているのだろうか。


「おい」


 あれ、甲冑おじさんがこっち向いている気がする。


「さっきは言い過ぎたみたいだな、悪かった」


 仲間に諭されたのか、しおらしくなっているじゃないか。ぺこりと頭を下げつつも、これ以上絡まれたくないのでそそくさと退散する。

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