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1-6 役決めは終わりました

 警備長は俺に決まったが、出納長はお婆がすることとなった。


 

 リースは悔しがっている感じはしないが、お婆と何やら話し込んでいる。

 

 さて、新しい村長さんのご機嫌を伺ってみますかね。




「村長、ウィルム新村長。ちょっとご相談があるんですが」


 役決めの間殆ど声を発することもなく、お飾り状態だった新村長に声を掛ける。返事は無いが、こちらを向いてくれたので構わず続ける。


「警備長に着任して早々でお恥ずかしいのですが、何から手を付けたら良いのか分かりませんものでして。前任の警備長は襲撃の際に亡くなってしまわれたようですので、ここはいっそその道のプロを外部から招いて、ご指導頂くというのはどうかと思案した次第でして」


 何も言わないが、若干頷いてくれている気がする。


「近くの街なりに出向いてですね、警備長の経験者を探したりですね、例の冒険者っていうんですが、その方々にも声を掛けてみたいのですが、承認していただけませんかね」


「何をコソコソ話してるのよ」


 あれ、さっきまでお婆と話してた筈の人が後ろに立ってる。


「いやこれは、自分の任務を全うすべくですね」


「あなた虚をつかれると、しどろもどろになるわね。駄目よ、お金が必要な案件は、村長への直談判じゃ承認出来ないわよ」


「ではどのようにネゴればよろしいので?」


「ねご?お金が必要なら出納長に話しなさい。まあ形式的に役会の場で決を採るけど、出納長が認めなければお金は出ないわよ」


「役会とやらの開催は、どのように申請すれば」


「今は緊急時だし、私からお婆に話しておくから今回はいいわよ。あ、街へは私も一緒に行くからね」


 会話は成り立っている気もするが、こちらの意思表示の確認が、薄いと思うんですよ。どうしたものか。



 街へは付いて来ると自ら言っていたが、徒歩での街道移動はきついようだ。


 2日目には、休憩を挟む間隔が早くなった。

 片道3日と聞いていたが、やたらとでかいその荷物は徒歩での旅には邪魔であろう。代わりに持つといっても譲らない頑固さはすごいが、街までもつか心配である。


 街道を進むのだから、ゴブリンなどモンスターとの遭遇も想定していたが、全く気配が無い。最近商人を狙った盗賊が頻発したとのことで、街道沿いは街からの警備巡回が増えたそうだ。


 夜は交代で見張りをしつつ睡眠をとっていたが、お疲れ気味のリースを少し長めに寝かしてあげたらひどく怒られた。


「一緒に旅をする以上私達は背中を任せあっているのよ、余計な気遣いは信頼されてないようで不愉快だわ」


 との事である。意気込みは買いたいが、お互いまだ子供なんだよなあ。


 とはいえ、成人の年齢は昔はずっと低かったはずだったか。


 選挙権の年齢が引き下げられたニュースを思い出したが、18歳で政治家の善し悪しなんて判断できるのかね。まあラップを歌いながらデモ行進してた成人もいたし、関係無いかもな。



 3日目の朝を出発して暫くすると、遠くに城壁のようなものが見えてきた。あれが目的地でいいのだろうか。


「ケント見えてきたわよ、あれが街よ。よかった…」


 街が見えて気分が良くなったのか、足取りは軽やかになった。



 城壁のように見えたものは外壁だったようだ。近づくにつれその巨大さが分かる。これならゴブリンなどいくら来ても大丈夫そうだ。

 立派な門には武器を手にした門番も立ってはいるが、皆素通りして行く。

 入るときにお金を取り立てないのだろうか、商人の馬車も通過していく、関税のようなものは概念が無いのだろうか。

 などと思っいたらフードを被った数人が止められ、荷物を広げ中身を見られている。あやしい奴などはランダムで検査しているのか。



 門より中へは入れたが、街を回る元気は正直無い。


「さあ宿を押さえてギルドへ行くわよ」


 リースは元気いっぱいなようで頷くしかない。街へは来たことはあるが随分と久しぶりとの事だった。何も知らないので申し訳ないが、スキップ気味のリースに付いて行くしかない。


 宿屋に着いたようだが。


「話してくるから待っていなさい」


 などと言われてしまうが、大人しく従う。入口から中を見るに1階は食堂を兼ねている宿屋の様だ。お茶してる連中やら、昼間からステーキ食べている客やらで店内は一杯である。


「荷物は預けれなかったけど、部屋は押さえたわよ。さあギルドへ行きましょう」


「荷物、置けないんだ」


「お客が多いから今は勘弁してくれと言われちゃったのよ。夕方には部屋も準備しておきます、と言ってくれたし大丈夫よ」


「いや俺はいいんだけど」


 心配なのはリースの方なんだが、どうにも出来ないか。ギルドに向かう途中、露天の並ぶ通りを歩いていく。


「ちょっとあれ美味しそうじゃないの」


 どうやら目に止まった店があるようだ。付いて行くと香ばしい肉の匂いがすごい、肉の串焼きを売っているようだが、何の肉かは分からない。


「おじさん、1本ちょうだいね。ケントは買わないの?こんなに美味そうなのに」


 腹は減っているが、お金など1円も持っていないのだ買えるわけがない。

 この世界の貨幣通貨はどうなっているのだろうか。

 

 リースは中心に穴の空いた銅貨のを数枚渡し、串焼きを受け取っている。


「ケントも食べてみればいいのに、美味しいわよ」


 口いっぱいに頬張りつつ、半分ほど食べた串焼きをこちらに渡そうとしてくる。

 食べたいんだけれども、本当に食べちゃっていいんだろうか?手を引っ込める様子がないので、勘弁してありがたく串焼きをいただく。


「おお、これは美味しいなあ。柔らかくて肉汁もすごい」


「そうでしょー」


 リースの笑顔も戻っているし、良かった良かった。

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