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3-12 手当てが必要ですか

 宿の裏口から入ろうとしたら仁王が立ち塞がっていた。


「やっと帰ってきた!ちょっとそ――」


「怪我してるんだ、水を汲んで来て!」


 リースは走って宿に入っていく、とにかく部屋へ運ぼう。



 そっとベットに寝かせて様子を見てみる。両手に付いていた枷みたいなのは金具をいじったらすんなり外れてくれた。

 運んでいる間に何度も体に当たってきてどうやって外そうかと思案していたのだが、結局は強引に外すしかないと思い込んでいたのだ。


 ゆっくりだけどちゃんと息はしている、脈拍はよく分からないけど多分俺の方が早いくらい。見えるところに大きな傷は無さそうだ。やや長い耳がふと目に付く、帝都でもこんなに長いのは見かけたことがない。

 う~ん、やっぱりほんのり光っている気がするんだけどな~。


 肩から少し血が垂れているが、他に大きな傷は見当たらない。これなら大丈夫なのだろうか。

 少し大きな足音と共にリースが部屋に入ってくる。


「ケガはひどいのかしら?」


 水桶とタオルのようなものを準備してくれたのか


「ひどい傷は無さそうだけど、目を覚まさないんだ。あ、一応服を脱がして確認しておこうか」


 ボロ布を被っているだけなので、捲り上げるだけで十分だった。

 ちょっと何かがおかしい気がする。月明りに照らされた眩い白肌、膨らみかけた双丘があり、体のラインがとっても柔らかい気がする。


「ごめんなさいぃ、女の子だとは気がつかなくって!」


 目を瞑り足をもつらせつつ後ずさりし転びそうになる。


「何言ってるのよ、手当てするんでしょ。背中の方も確認するわよ」


 そうだ今は緊急事態なんだ、動揺している場合じゃない落ち着くんだ。


 リースと目くばせしつつゆっくり身体を傾けていく、真っ白な背中に傷とかは見当たらないようだが。

 暗いから見間違えたのかと目を細めてみると、背中にうっすらと紋様のようなものが見えてきた。


 なぜか気になり背中へと自然と手が伸びた。手が触れた瞬間、あたりが光でつつまれた。


 眩しさに反応し閉じていた目を開ける。視界はまだぼやけているというか、太陽を見続けてしまって焼き付けを起こした感じだとでも言えばいいのか。

 

「もうなんなのよこれは!」


 リースもどうやら同じ状況のようだ、声が聞けて少し冷静になれた気がする。


「大きな怪我はしていないようだし、緊急用のポーションは使わなくて良さそうだね」


「そうみたいね。一応肩には薬草を塗っておきましょう」


 緊急用のポーションは例の雑貨屋さんが何故か無料でくれたのだが、値段は見当もつかないしリースがどこにしまい込んだのか知らない。


リースは薬草を取り出しテキパキと手当てしている、手伝えることは無さそうだ。緊張の糸が切れたのか床にへたりこんでしまう。



「できるのはこれくらいかしらね」


 リースは後片付けをしつつ声をかけてきた。どうやら安心して眠りかけていたようだ。


「リースありがとう、全部やってもらって…助かったよ」


 やった事といえば女の子の裸を見てうろたえたくらいだ。それもひどくみっともなく。


「何言ってるのよ。この子はケントが助けたんでしょう、私は助けられた子に薬草を塗っただけじゃない。自信持ちなさいよ」


 そう言うとリースは頭を優しく撫でつつそっと両手で抱擁してきた。


「あ…、あぅ」


 なさけない嗚咽が漏れ出したが気にはならなかった。

名前も性別さえも分かっていなかった子を考えなしにただ運んできただけだ、危険な場所ではあったが事情何て何も知りはしない。

リースには何一つ説明していない。というかいつもの様に問い詰められてもいないじゃないか。


 いつのまにか抱擁は解かれリースは寝支度を始めていた。


「リース話したいことがあるんだ」


 目をつむりこの子に会った時のことを思い浮かべる。なぜか手を固く握りしめていた。

 そうだこの件はまだ始まったばかりだ。


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